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リズム感
- 原語
- musical-beat-synchronization
- 研究
- 米国 ヴァンダービルト大学
この研究のふむふむポイント
そもそも「リズム」って何?
「リズム」という単語が付く言葉は多数ありますが、要約すると、時間的な流れを周期的、分節的に分割するのが「リズム」です。
リズム感は言語獲得にも関係している!?
これまでの研究から、各言語には固有のリズムパターンがあり、そのリズムに基づいて単語や形態素の分節化が行われていることがわかっているそうです。
リズム感に関する遺伝型、あなたはどのタイプ?
米国のヴァンダービルト大学の研究グループによると、rs7586405というSNPに「G」を持つ人は、「A」を持つ人よりもリズム感が優れている傾向にあるそうです。
リズム感についてもっと知る
そもそも「リズム」って何?
「リズムに乗る」、「リズム遊び」、「歩くリズム」、「言葉のリズム」、「生体リズム」といったように、「リズム」という単語が付く言葉は多数あり、それらの言葉は、音楽、運動、言語学、生物学などの幅広い分野で使われています。
では、そもそも「リズム」とは何なのでしょうか?
「リズム」という単語を広辞苑で引くと、以下のように説明されています(※1)。
①周期的な動き。進行の調子。律動。「-に乗る」「生活の-が狂う」
②詩の韻律。
③音楽におけるあらゆる時間的な諸関係。西洋音楽では旋律・和声と並んで基本要素の一つで、一般に音量・音高・音色などと結びついてアクセントが生じ、それが周期的に現れると拍子が成立する。拍子がなくてもリズムは存在する。節奏。
これらを簡単に言い換えると、時間的な流れを周期的、分節的に分割したものが「リズム」なのですね。
リズム感は言語獲得にも関係している!?
私たちは、命の始まったその時から、既に様々なリズムを感じ始めています。
心臓の鼓動、呼吸、人々の話し声、歩く時の足音、童謡、縄飛び、跳び箱、キャッチボール...、こうした日々の営みの中にあるリズムを感じ、音楽的な感性や運動能力などを養っているのです。
このような、リズムを感じ取る能力、つまり「リズム感」は言語学習においても重要な役割を果たしていると考えられています(※2)。
これまでの研究から、各言語には固有のリズムパターンがあり、そのリズムに基づいて単語や節などの単位に分節化することがわかっているそうです(※3)。
新生児を対象とした研究によると、フランス語を母国語とする新生児は、どちらも自分にとって非母国語であるオランダ語と日本語とを判別できたそうです。ただし、判別することができるのは、2つの言語が異なるリズムを持つ場合で、英語とオランダ語のように、同じリズムの言語は判別することができなかったそうです(※4)。
このように、乳児はまず初めに、母国語のリズム構造の一般的な特徴を掴み、成長するにつれて、その特徴に基づいて「単語」や「節」を抽出できるようになるそうです(※3)。
このように、「リズム感」は音楽や運動のみならず、言語獲得にも関わっているのですね。
「リズム感」に関する遺伝型、あなたはどのタイプ?
音楽や運動のみならず、言語獲得にも関係している「リズム感」ですが、「リズム感」には遺伝子が関与していることがわかりました。
米国のヴァンダービルト大学の研究グループによると、rs7586405というSNPに「G」を持つ人は、「A」を持つ人よりもリズム感が優れている傾向にあるとのことです(※5)。
rs7586405にはGG、GA、AAの遺伝型がありますが、日本人平均と比べると
・GGの遺伝型を持つ人は「リズム感が優れているタイプ」
・GAの遺伝型を持つ人は「リズムに合わせるのがやや苦手なタイプ」
・AAの遺伝型を持つ人は「リズムに合わせるのが苦手なタイプ」
という遺伝的傾向を持っていると言えます。
研究の詳しい内容を見る
米国のヴァンダービルト大学を中心とした研究グループは、米国の遺伝子検査民間企業である23andMeの、ヨーロッパを祖先とした606,825人を対象に、リズム感のゲノムワイド関連解析(GWAS)を行いました。まず、「音楽のリズムに合わせて手拍子ができますか」という質問に対して、「はい」が91.57%、「いいえ」が8.43%という結果でした。また、この回答が自己申告のため、客観的に正しいかを検証するために、2種類の厳密な条件下で表現型(この論文の場合はリズム感)の検証実験を行いました。
第1の検証実験は、18〜73歳の音楽経験が0〜45年の724人を対象として、GWASと同じ質問と、リズム識別テストを行いました。リズム識別テストの内容は、単純な(韻律の低い)リズムシーケンスと、複雑な(韻律の高い)リズムシーケンスを比較して、リズムが同じか異なるかを判定するテストです。1回の試行は、3回のリズムシーケンスのうち、最初の2回は同じで、3回目が同じか異なるかを回答するという内容で、32回の試行が実施されました。
第2の検証実験は、18~77歳の音楽経験が1~2年の1,412人を対象として、GWASと同じ質問と、オンラインで約30秒の音楽のリズムに合わせてタッピング(ノートパソコンの表面を人差し指で叩く)することができるかという課題を追加しました。課題は様々なジャンルの難易度の異なる4種類の音楽を使用し、2回繰り返すという条件で行いました。また、音楽経験や能力についてのアンケートも実施しました。このアンケートには音楽に全く関係のない健康状態などの項目も含まれています。
GWAS解析結果から、音楽のリズム感に関連する69個のSNPが見つかり、リズム感は多遺伝子性であることがわかりました。今回解析した第2染色体に存在するrs7586405というSNPは、2023年時点では遺伝子は同定されていません(※6)。
GWASと2種類の厳密な検証実験の結果より、「音楽のリズムに合わせて手拍子ができますか」という質問に対し自己申告された回答が、有効な表現型(リズム感)を表していることが示されました(※5)。
対象SNPの遺伝型に基づき、以下のタイプに区分されます。
- リズム感が優れている
- 30.6%GG
- リズムに合わせるのがやや苦手
- 49.4%GA
- リズムに合わせるのが苦手
- 20.0%AA
参考文献
※1. 新村出(編), 広辞苑(第7版), 岩波書店
※3. 林安紀子, 乳児における言語リズム構造の知覚と獲得, 音声研究
※4. 梶川 祥世, 乳幼児における韻律の知覚と産出の発達(<特集>日本語アクセントの獲得・習得研究), 特集, 音声研究
【対象SNP】rs7586405