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損害回避
- 原語
- harm-avoidance
- 研究
- 日本 大阪大学大学院医科学研究科
この研究のふむふむポイント
「損害回避」とは
「損害回避」という言葉は、あまり馴染みがない人も多いかもしれません。「損害回避能力が高い人」とは、心配性であり、不安を感じることが多い傾向にある一方で、物事を現実的に認知でき、リスクを回避する慎重さを持っている人をいいます。
TCI(気質性格検査)ってどんなテスト?
今回の研究では、日本語版のTCI(気質性格検査)という性格テストにおいて、損害回避能力の特徴を見つけることができました。この性格テストを考案したクロニンジャー博士によると、個性(パーソナリティ)は遺伝性の強い「気質(tenperament)」と、後天的に形成される「性格(character)」に分類されるそうです。
損害を回避する遺伝型とは?
大阪大学大学院医科学研究科の研究によると、COMT(カテコールーOーメチルトランスフェラーゼ)遺伝子のrs4680に「A」を持つ人の方が、「G」を持つ人よりも損害回避能力が高い傾向にあるということがわかりました。
損害回避についてもっと知る
「損害回避」とは
今回ご紹介するのは、人の性質とCOMT(カテコールーOーメチルトランスフェラーゼ)遺伝子との関係を調べた大阪大学大学院医科学研究科の研究です。
あまりなじみがない「損害回避(harm-avoidance)」という言葉ですが、「リスクを事前に察知し、回避する能力(性質)」のことを意味しています。
では、「損害回避能力が高い人」という言葉を聞いて、どのような人物を思い浮かべますか?
損害回避能力が高い人とは、「自分に何らかの害が及ぶことを恐れ回避する傾向がある人」、「物事に対していつも悲観的にとらえてしまい内気で人見知りしやすい人」、このような人と言えるでしょう(※1)。損害回避能力が高いため、心配性で不安を感じやすい傾向にありますが、一方で、リスクを回避し、慎重に物事を進められるという特徴があります。
反対に、損害回避能力が低い人は、「非常に冷静沈着でパニックを起こさない人」、「どんなことでも安心して任せることができ、非常に楽観的でエネルギッシュである人」をいいます。損害回避能力が低いため、楽観的で物事をポジティブに捉える傾向にありますが、一方で、リスクを過小評価し、危険行動に結びつきやすいという特徴があります。
TCI(気質性格検査)ってどんなテスト?
今回の研究では、人の性質を測定するためのいくつかのテストの中から、日本語版のTCI(気質性格検査)、ウェクスラー成人知能検査(IQ)、ウィスコンシンカード分類検査(WCST)が採用されました。
なかでも、日本語版のTCI(気質性格検査)という性格テストにおいて、損害回避能力の特徴を見つけることができました。
この性格テストを考案したクロニンジャー博士によると、個性(パーソナリティ)は遺伝性の強い「気質(tenperament)」と、後天的に形成される「性格(character)」に分類されるそうです。
損害回避能力は新奇性追求(新しいものへの好奇心)・固執(執着)・報酬依存性と同様に「気質」に分類されています。これらは、中枢神経内のドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌と代謝に依存しているといわれています。
一方、「性格」はTCIの中では自己思考・協調・自己超越の3つのカテゴリーに大別され、それぞれの項目で個人の成長度・発達度を判定しています。人の行動は、発達初期には行動を自動的にコントロールする「気質」によって決定されていますが、成長するに従って、「性格」によって調節される、と考えられています。
損害を回避する遺伝型とは?
今回、大阪大学大学院医科学研究科の研究では、COMT(カテコールーOーメチルトランスフェラーゼ)遺伝子のrs4680に注目し、人の性質との関連を調べたところ、損害回避能力と関連することが明らかになりました。
この研究では、rs4680に「A」を持つ人の方が、「G」を持つ人よりも損害回避能力が高い傾向にあるということがわかりました(※2)。
rs4680にはAA、AG、GGの遺伝型がありますが、日本人平均と比べると
・AAの遺伝型を持つ人は「損害回避能力が高いタイプ」
・AGの遺伝型を持つ人は「損害回避能力がやや高いタイプ」
・GGの遺伝型を持つ人は「損害回避能力が低いタイプ」
という遺伝的傾向を持っていると言えます。
研究の詳しい内容を見る
139人の日本人を対象として、日本語版のTCI(気質性格検査)、ウェクスラー成人知能検査(IQ)、ウィスコンシンカード分類検査(WCST)に参加してもらいました。IQとWCSTでは、rs4680の遺伝型による差はみられませんでしたが、日本語版のTCIでは、明らかな差がみられました。
対象SNPの遺伝型に基づき、以下のタイプに区分されます。
- 損害回避能力が高い
- 8.4%AA
- 損害回避能力がやや高い
- 41.2%AG
- 損害回避能力が低い
- 50.4%GG