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病気・医療

関節リウマチなどによっておこる関節の炎症。開発された新薬の候補とは?

公開日:2015年5月10日
更新日:2018年6月18日

 つらい痛みと腫れが続く関節リウマチ。綿密な戦略のもとに開発された新薬の候補の効果はいかに?


画像はイメージです。記事と直接の関係はありません。(写真:Flickr user/クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 2.0 一般)

 関節リウマチや細菌の感染によって生じる関節炎。関節リウマチでは、免疫の異常により関節に炎症がおこり、つらい痛みと腫れが続きます。日本国内には、約70~100万人の人が関節リウマチに悩まされているといわれています。
 英国の研究グループは、この関節炎に効果的な新薬の候補を見つけたとしてArthritis Research & Therapy誌で報告しました。

優れた治療効果が期待される「生物学的製剤」とは?

 医学の進歩により、関節リウマチの治療に生物学的製剤が使われるようになりました。生物学的製剤は、従来の化学的に合成した薬ではなく、生体が作るタンパク質等のことをいいます。副作用の懸念や生産コストが高いという欠点があるものの、生物学的製剤は優れた治療効果が期待されるのです。
 そこで、研究グループは、薬の副作用のリスクの低減と炎症が起きている関節でのみ薬を働かせることで、安全かつ効果の高い薬をつくれないか検討しました。

研究グループの戦略 -その1-副作用を軽減する

 新薬の候補として着目したのは、ウイルスの「インターロイキン-10 (IL-10)」です。IL-10は、炎症反応を抑制するサイトカイニンと呼ばれるタンパク質です。しかし、標的細胞によっては、免疫反応に刺激的に作用することが知られていました。
 そこで、ヒトのIL-10と同等の免疫を抑制する効果を持ち、これまで欠点とされてきた「免疫の刺激的な作用」を持たないウイルスのIL-10を用いることにしました。

-その2-炎症を起こしている関節で働かせる

 薬は体の中を循環するので、体のあちこちで働いてしまうと副作用のリスクが大きくなります。そこで、研究グループは、炎症を起こしている関節でのみ薬を働かせる方法を考えました。
 関節リウマチになると局所的に蓄積する活性酸素種が軟骨のII型コラーゲンと複合体を作っており、この複合体を標的にすることを考えました。

2つの戦略を融合すると、炎症を起こしている関節のみで効いた

 研究チームは、ウイルスのIL-10と活性酸素種-II型コラーゲン複合体を検出する抗体タンパク質をつないだ融合タンパク質を作り、治療の効果を検証しました。
 まず、この融合タンパク質が仮説通りに活性酸素種-II型コラーゲン複合体と特異的に結合することを確かめました。次に、人工的に関節炎を起こしたマウスの腹腔に30 μgの融合タンパク質を注入し、マウス体内での融合タンパク質の局在を調べました。その結果、この融合タンパク質はマウス体内を循環し、目論み通り炎症が起きている関節に集中していることがわかりました。また、このマウスの関節では、蓄積していた活性酸素種の蓄積量が時間と共に減り、腫れも抑えられていました。

 マウスを用いた実験ながら、研究グループが考えた戦略は見事に決まり、この融合タンパク質は、炎症を起こしている関節で働き、腫れを抑えてくれるという理想的な効果を示しました。人への応用を目指した研究の進展が大いに期待されます。


参考文献

Hughes C et al. Targeting of viral interleukin-10 with an antibody fragment specific to damaged arthritic cartilage improves its therapeutic potency.
Arthritis Res Ther. 2014 Jul 16;16(4):R151. doi: 10.1186/ar4613.

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