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これまでの定説を覆す新発見、化石のDNAが明らかにしたヨーロッパ人形成過程

公開日:2014年12月8日
更新日:2018年6月18日

私たちのご先祖様はどんな人たちだったのでしょうか(写真:DrMikeBaxter/クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 2.0 一般)


3万年以上前の化石人骨を分析!旧石器時代の人類のDNAが明らかに

 最近、3万7千年前に生きていたとされる人の骨の化石から採取したDNAを分析することで、現代のヨーロッパ人の祖先についてこれまでの常識を覆す、新たな事実がわかってきました。

 解析されたのは、1954年にロシアのドン川から掘り出された「コステンキ14」と名づけられた旧石器時代の化石人骨です。

 近年、化石からDNAを抽出して解析する技術が発達し、今まで不可能であった古代人の遺伝情報解析を行うことが可能になりました。化石人骨DNAの解析により、これまでの考古学ではわからなかった、新たな知見が明らかになってきています。

旧石器時代のヨーロッパ人と現代のヨーロッパ人はほとんど同じ・・・?

 今回の研究により、旧石器時代のヨーロッパ人・コステンキ14のDNAは現代のヨーロッパ人と非常に似ていたことが示されました。一方で東アジア人とは全く似ておらず、旧石器時代にはすでにヨーロッパ人と東アジア人の人々は離れて暮らしていた可能性が示唆されました。

 実はこれは、これまでの説を覆す、とても驚くべきことなのです。

現代ヨーロッパ人の祖先はいつ、どこからやってきたのか? ・・・新たな疑問

 現代のヨーロッパ人の祖先はどんな人々なのか、どこからやってきたのかはこれまでも様々な議論が続いていました。

 ヨーロッパにはまず約4万年以上前の旧石器時代、狩りや木の実を取ったりして生活する集団がアフリカから来たとされています。そのかなりあと、約7千~8千年前の新石器時代になってから、農業や牧畜で生活する人々が先に住み着いていた人々と混ざっていき、その後も様々な人々の集団の移住が繰り返し行われた結果、現代のヨーロッパ人が形成された、というのがこれまでの仮説でした。

 ところが、約4万年前のヨーロッパ人であるコステンキ14のDNAの中には、これまでにそれぞれ別の時代の人々からもたらされたと考えられていた現代ヨーロッパ人の遺伝子がすべて含まれていたのです。つまり、新石器時代に農業とともにやってきたと考えられていた現代ヨーロッパ人は、実際にはもっと昔にヨーロッパにやってきていた可能性があるのです。
今回の研究により、これまでのヨーロッパ人形成の歴史の仮説に、大きな疑問が投げかけられることになりました。

 化石DNA分析の技術進歩というイノベーションにより、これまで正しいと思われていたことに新たな疑問が投げかけられた事は、非常に興味深い事です。今後の研究により、我々日本人を含め、人類進化の全貌がより鮮明に明らかになる日も近いかもしれません。


参考文献

Seguin-Orlando A et al. Paleogenomics. Genomic structure in Europeans dating back at least 36,200 years.
Science. 2014 Nov 6. pii: aaa0114.