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【認定遺伝カウンセラーコラム】あの食べ物が血を止める仕組みに関係してる?

公開日:2018年10月31日
更新日:2019年2月12日

血を止める仕組みに関係している食べ物についてご存知ですか?(写真:Shutterstock.com)

止血のしくみについて

 切り傷などで出血した場合、時間の経過とともに出血は自然に止まります。これはヒトに止血という仕組みが備わっているからです。止血に関わるのは血液中の血小板と凝固因子です。血管が損傷を受けて破れると、多数の血小板が傷口に集まって、血小板血栓を形成します。これを一次止血とよびます。この一次止血は脆く止血は不十分なため、引き続いて凝固因子であるフィブリノゲンがフィブリンとなって傷口を覆い固めて、強固なフィブリン血栓を形成します。これがいわゆるかさぶたのことです。これを二次止血とよびます。止血に関わる血小板の働きについては以前のMYCODEトピックス記事「私たちの全身を巡る血液の病気とは?鉄欠乏性貧血から白血病まで」でもご紹介しましたが、今回は凝固因子について詳しくみていきましょう。

凝固因子の種類と働き

 凝固因子は全部で12種類あり、発見された順番でローマ数字の番号がふられています。(VIは欠番)ヒトは出血すると、凝固因子が順番に活性化され、最終的にフィブリン血栓(かさぶた)がつくられます。凝固因子が活性化される経路には血管内で起こる内因系と血管外の組織因子と血液の接触で引き起こされる外因系の2つがあります。それぞれの経路はやがて合流して、最終的にフィブリノゲンがフィブリンとなり止血は完了します(※1)。

 MYCODEでは体質の検査項目に「血の固まりやすさの指標(活性化部分トロンボプラスチン時間)」と「血の固まりやすさの指標(プロトロンビン時間)」がありますが、前者では内因系、後者では外因系の遺伝的傾向を示しています。

ビタミンKを含むあの食品が凝固因子を助ける?!

 凝固因子が止血に重要な役割を果たすことがお分かりいただけたかと思いますが、12種類の凝固因子のうちX番、IX番、VII番、II番はその機能を発揮するためにビタミンKを必要とします。ビタミンKを多く含む食品には、納豆やほうれん草、小松菜、春菊のような緑色野菜があります。

 血管内に生じる血の固まりを血栓といいますが、この血栓を予防する目的でワルファリンというお薬が処方されます。この薬はビタミンKを必要とする凝固因子の作用を抑えて血栓を出来にくくします(※2)。ワルファリン服用時には、ビタミンKを多く含む食品は、薬の作用を低下させるため、納豆の摂取を控えるようにとの注意事項があります。

 ヒトの腸内に生息する腸内細菌もビタミンKを産生することが知られていますが、生まれたばかりの赤ちゃんには腸内細菌がほとんどいません。したがってビタミンKの産生が不十分になり、出血症状を引き起こすことがあります。これを「ビタミンK欠乏性出血症」とよび、消化管出血などによる黒色便や頭蓋内出血を特徴とします。新生児には予防目的でビタミンK製剤が投与されます。
 
 今回のMYCODEトピックス、血が止まる仕組みについては多くの凝固因子が関わっていることをご理解いただけましたでしょうか。納豆に多く含まれるビタミンKは止血に重要な役割を果たしていたのですね。

執筆者
認定遺伝カウンセラー 藤田和博
プロフィール:昭和大学藤が丘病院での先天異常、血液腫瘍の遺伝子・染色体検査の経験を生かし、現在は大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科教授として臨床検査学教育と研究に従事。
参考文献
※1. 奈良信雄, 血液検査学, 医歯薬出版株式会社
※2. 一般社団法人日本血栓止血学会, 用語集「ワルファリン」