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病気・医療

慢性腎臓病と血圧の関係、血圧コントロールの重要性が示されました

公開日:2015年4月24日
更新日:2021年9月3日

 慢性腎臓病の人は一般的に血圧が高くなる傾向にあるため、血圧を下げるコントロールが必要だと考えられていました。しかし、米国の研究グループにより、血圧を強く下げた場合は、死亡率が高まることが明らかにされました。


慢性腎臓病における血圧コントロールの重要性をご存じですか(写真:Shutterstock.com)

 高血圧になると脳卒中、心筋梗塞や狭心症等の心疾患、慢性腎臓病等のリスクが高くなることから、一般的に血圧が高いほど病気に注意が必要と思われています。しかし、病気によっては単純に血圧を下げればいいという話ではないということがわかってきました。

 米国の研究グループは、慢性腎臓病の人の場合は、むやみに血圧を下げすぎることも危険であると報告しました。

慢性腎臓病の人は血圧が高くなりやすい

 血圧は、心臓が収縮して血液を押し出すときに高くなり、逆に、拡張して血液の流れが緩やかなときは低くなります。最も高くなるときの血圧は最高血圧(収縮期血圧)、最も低くなるときの血圧は最低血圧(拡張期血圧)と呼ばれます。

 腎臓の働きが悪くなると、血圧を調節する能力が低下するため、高血圧になる傾向にあります。最近は、最高血圧を140以下に維持することが推奨されていますが、血圧を下げすぎた場合の是非はよくわかっていませんでした。

7.7万人のデータ解析から導き出された答えは

 研究グループは、慢性腎臓病を患っている約7万7千人を対象にして、降圧剤コントロールにより最高血圧が120よりも下回っていたグループと、最高血圧が120~139であったグループにわけて調べました。6年間の治療効果をみたところ、血圧を120よりも下回るほど下げていたグループは、血圧を120~139にコントロールされたグループに比べ、死亡のリスクが1.7倍高いことがわかりました(※)。

 慢性腎臓病では、腎機能の低下によって血圧が高くなりやすく、適切に下げることが必要であると考えられていますが、この研究結果では慢性腎臓病の人は下がりすぎにも注意しなければならないことが示され、より難しいコントロールの必要性が伝えられました。

 慢性腎臓病は生活習慣病やメタボリックシンドロームとの関連が深く、国内では、20歳以上の8人に1人が慢性腎臓病に苦しんでいるといわれています。一度失われた腎臓の機能は、ほとんどの場合回復しないので、発症を未然に防ぐことが重要です。

MYCODEトピックスでは、「3月の第2木曜日は世界腎臓デー、腎臓病予防のための8つのゴールデンルールとは?」の記事で腎臓病にならないための8つのゴールデンルールをご紹介しています。腎臓にやさしい生活を心がけてみてはいかがでしょうか。


監修者

医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。

参考文献

Kovesdy CP, Observational modeling of strict vs conventional blood pressure control in patients with chronic kidney disease., JAMA Intern Med.