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【管理栄養士コラム】乳がんは予防できるのか?~若いうちから知っておきたい生活習慣~

2019年04月18日 09時00分

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増加傾向にある乳がん、若いうちから予防について考えましょう(写真:Shutterstock.com)

 乳がんは、近年日本人において増加傾向にあり、注目されています。国立がん研究センターの発表によると、がんになった(罹患)人数が女性1位、乳がんが原因で死亡した人数が5位とされています(表1)。具体的な数字をみてみると、女性は、生涯で11人に1人が乳がんになるといわれていますが、乳がんで死亡する人は66人に1人とされ、高い罹患率に対して、早期に発見することで死亡率が低いことも特徴のひとつです(※1, 2)。

表1. 女性のがん罹患数と死亡者数の順位(※1, 2)

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 また、乳がんは、他のがんと比べると若い世代でかかる人が多いのも特徴です(図1)。女性がかかりやすい大腸がん、胃がん、肺がんなどは、40代から増え始め、55歳からさらに増加していきますが、乳がんは20代後半から増え始めます。その理由として、20代~30代に分泌のピークとなるエストロゲン(女性ホルモンのひとつ)が発症に影響しており、エストロゲンが体内に多いと乳がんの発症を促進することがわかっています(※3, 4)。

 よって、若いうちから乳がんの原因や予防法などについて知ることが重要となります。今回は、乳がんの発症に影響を及ぼす身近な生活習慣についてお伝えしたいと思います。

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図1. 女性の年代別がん罹患数(2016年)(※2)

1.乳がんの発症に関与する遺伝要因と環境要因の割合

 がんの発症には、生まれ持った体質である遺伝要因と、生活習慣などの環境要因が関与しているといわれています。ある研究では、乳がんは遺伝要因27%、環境要因が73%と報告されています(※5)。

 遺伝要因は私達の力で変えることはできませんが、遺伝のリスクが高いからといって必ず発症するというわけではありません。一方で遺伝のリスクが低くても、生活習慣(環境要因)によって発症する可能性が高くなることもあります。

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2.乳がんに影響を及ぼす生活習慣(環境要因)

 環境要因の全てが明らかにはなっていませんが、乳がん診療ガイドライン(2018年版)では、長期間継続することで発症リスクを上げる習慣と下げる習慣について示されています(表2)。発症への影響レベルは、確実に関与している「確実」から「ほぼ確実」、ある程度の関連性がみられる「可能性あり」に分けて記載されています。これらの項目のほとんどは、女性ホルモンである体内のエストロゲン量に関与しているといわれています。今回は、飲酒、運動、食品(乳製品、大豆・イソフラボン)について、ご自身の習慣を振り返りながらみていきましょう。

表2. 乳がんの環境要因(※6)

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3.飲酒習慣

 平成29年国民健康・栄養調査によると、近年、女性の飲酒習慣者(週に3回以上、1日あたり1合以上)の割合は増加傾向にあります(※7)(図2)。

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 図2. 女性の飲酒習慣者の割合 年次推移(※7)

 アルコールの摂取は、乳がんの発症リスクを上げることは、「ほぼ確実」とされていますが、その理由として以下3つが挙げられています。

① 排卵期に飲酒をすると、飲まない人と比べて体内のエストロゲン濃度が増加(※8)
注意)一般的に月経が始まった日から約2週間後に排卵が起きる

② 飲酒後に、体内でアルコール(エタノール)を分解する過程で、発がん性物質であるアセトアルデヒドが生じる(※9)

③ ②同様に、アルコールを分解する過程で生じた物質(活性酸素等)が、DNAを傷つける(がんの原因)(※6)

 お酒を何杯以上飲むとリスクが生じるのかはわかっていませんが、飲めば飲むほどリスクが上昇することは明確とされています。ある研究では、1日エタノール15~50gに相当するお酒を飲んでいる人は、飲んでいない人に比べて乳がん発症のリスクが1.23倍、さらに1日エタノール50g以上のお酒を飲んでいる人は、1.61倍だったと報告されています(※10)(図3)。

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図3. アルコール摂取量と乳がんリスクの関係(※9)

 表3では、お酒の種類ごとに1合(アルコール換算で約20g)の量を表しました。まずは、現在の飲酒量を把握し、1日に飲む量を減らす(ロックを水割りにして薄める)、又は禁酒日をつくる(増やす)など、継続できそうな“飲酒Myルール”を設けてみましょう。

表3. お酒の種類別1合の目安量

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4.運動習慣

 運動は、乳がんの発症リスクを「ほぼ確実」に低下させるといわれています。では、どの程度運動を実施すると予防効果がみられるのでしょうか。国立がん研究センターの研究によると、運動を週2日以内実施している人は、月3日以内の人と比べて、リスクが0.86倍低かったとされています。また、週3日以上の人は0.73倍とより低かったと報告されています(図4)。

 また、乳がんにはホルモン受容体陽性のがんと、そうではないがんとがあります。ホルモン受容体陽性のがんとは、がん細胞の中にホルモンの受容体があり、ホルモンと作用してがん細胞が増殖するがんのことをいいますが、この研究では、ホルモン受容体陽性のがんに、より予防の効果がみられたとされています。

 運動が乳がんの発症リスクを下げる理由として、体脂肪を減らすことで体内のエストロゲン濃度を下げたり、免疫機能を改善する可能性があると考えられています(※11)。乳がん予防を考慮すると、理想は週3回以上の運動習慣ですが、難しいようでしたら、まずは週1回以上を目安に体を動かすようにしましょう。

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図4. 余暇運動と乳がんリスク(※11)

5.乳製品の摂取頻度と種類

 以前は、乳がん予防に乳製品の摂取が推奨されない時代もありましたが、乳がん診療ガイドライン(2018年版)では乳製品をとることで、乳がんのリスクが「下がる可能性あり」とされています。詳しいメカニズムはまだわかっていませんが、乳製品に多く含まれているビタミンDやカルシウムが関与しているのではないかと考えられています(※6)。

 では、どの程度食べることにより、リスクが低下するのでしょうか。海外の論文では、閉経前の女性において、毎日3サービング(SV,*)以上の乳製品をとることで発症リスクが27%低下するとされています(表4)。また、低脂肪な乳製品を摂取している人のみでみてみると、1サービング以上でも発症リスクが32%低かったと報告されています(※12)(図5)。

 脂肪含有量が高い乳製品は、発症リスクを高める可能性があるため、乳がんの予防を目指す上では、低脂肪な乳製品が推奨されています(※6)。毎日の食生活に、低脂肪な乳製品を240mlとることはひとつの目安となりそうです。

*サービングとは、食べ物や飲み物の標準的な単位であり、ここでは米国食品医薬品局が定めたものを示します。

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図5. 低脂肪乳製品摂取と乳がんリスク(※12)

表4. 乳製品の1SVの目安(※13)

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6.大豆製品・イソフラボンの摂取頻度

 大豆製品に多く含まれるイソフラボンは骨粗しょう症の予防にも効果があるとされ、女性には強い味方として知られています。イソフラボンは、女性ホルモンであるエストロゲンに構造が似ており、イソフラボンがエストロゲンの受容体に入り込むことによって、乳がんを予防する効果があるのではないかと考えられています(※14)。日本人を対象とした研究でも、イソフラボンの摂取量が少ない人に比べ、多く食べる人が乳がんになりにくいという報告があります(図6)。表5に大豆・大豆加工食品とイソフラボン含有量を示しました(※15)。毎日の食卓に、ぜひ豆腐、豆乳、納豆、厚揚げ、がんもどき、おから、きなこ等を積極的に取り入れるようにしましょう。

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図6. イソフラボン摂取量別の乳がん発症リスク(※14)

表5. 大豆イソフラボンの含有量(※15)

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 最後になりますが、乳がんは早期発見により死亡率が低下しているがんです。検診では、視触診や超音波検査、X線検査(マンモグラフィ)等が行われています。40歳以上の女性は2年に1回の検診が推奨されていますので、お住まいの都道府県のホームページなどを確認し、受診するようにしましょう。

参考文献
※1. 国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス, 最新がん統計
※2. 厚生労働省, 全国がん罹患数2016年速報
※3. 文部科学省,食生活学習教材(中学生指導者用分割版3,P44)
※4. 国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス, 乳がん基礎知識
※5. Lichtenstein P, Environmental and heritable factors in the causation of cancer--analyses of cohorts of twins from Sweden, Denmark, and Finland., N Engl J Med.
※6. 日本乳癌学会, 乳癌診療ガイドライン疫学・診断編第4版(2018年版), 金原出版株式会社
※7. 政府統計の総合窓口(e-Stat), 厚生労働省平成29年国民健康・栄養調査, 表番号98「飲酒習慣者の割合の年次推移」
※8. Reichman ME, Effects of alcohol consumption on plasma and urinary hormone concentrations in premenopausal women., J Natl Cancer Inst.
※9. 国立研究開発法人国立がん研究センター予防研究グループ, 多目的コホート研究(JPHC Study)「飲酒と乳がん罹患との関係について」
※10. Bagnardi V, Alcohol consumption and site-specific cancer risk: a comprehensive dose–response meta-analysis., Br J Cancer.
※11. 国立研究開発法人国立がん研究センター予防研究グループ, 多目的コホート研究(JPHC Study)「余暇運動と乳がん」
※12. Shin MH, Intake of dairy products, calcium, and vitamin D and risk of breast cancer., J Natl Cancer Inst.
※13. 米国食品医薬品局, Reference Amounts Customarily Consumed: List of Products for Each Product Category
※14. 国立研究開発法人国立がん研究センター予防研究グループ, 多目的コホート研究(JPHC Study)「大豆・イソフラボン摂取と乳がん発生率との関係について」
※15. 内閣府食品安全委員会, 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
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