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お腹が痛い・・・その原因は大腸にあるかもしれません!

2018年08月15日 09時00分

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様々な大腸の病気をご存知でしょうか? (写真:Shutterstock.com)

 「お腹が痛い・・・」人生のうちだれでも一度は言ったことのあるセリフではないでしょうか。「お腹が痛い」と言うとき、そのお腹は胃であったり腸であったりするわけですが、今回は大腸の病気についていくつかご紹介したいと思います。

大腸の病気の種類

 そもそも大腸とはどのような臓器かご存知ですか?大腸は胃や小腸で消化吸収された食物の残りである消化物等をため、水分を吸収しながら大便にするところです。多種、多量の細菌が存在しています。大腸の始まりは盲腸で、お腹を大きくぐるっと一周し、直腸から最後、肛門へとつながっていきます(図1)。

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図1. 大腸の構造

では、その大腸にはどんな疾患があるのか主だったものを見ていきましょう。

大腸がん
 近年日本人で罹患率が上昇しており、2016年の統計ではその死亡率はがんの中で2位となっています(※1)。大腸がんは、長さ約2mの大腸(盲腸、結腸、直腸)に発生するがんで、日本人ではS状結腸と直腸ががんのできやすいところです。その進行は比較的緩やかです。大腸がんは、粘膜の表面から発生し、大腸の壁に次第に深く侵入していき、進行するにつれてリンパ節や肝臓や肺など別の臓器に転移します。

潰瘍性大腸炎
 大腸の粘膜に潰瘍やびらん(ただれ)ができる病気です。中高年でも発症する可能性がありますが、20代の若年層が発病しやすいといわれています。

クローン病
 クローン病は、潰瘍性大腸炎とともに、消化管に慢性の炎症や潰瘍ができる「炎症性腸疾患(IBD)」の一つです。口腔から肛門まで消化管のあらゆる部位に起こる可能性があり、中でも小腸や大腸に多く見られる病気です。10~20代の発症率が高いといわれており、30代以降は発症率が低下します。

過敏性腸症候群(IBS)
 腸は、食べ物の消化・吸収だけでなく不要なものを便として対外に排出する役割を持ちます。腸の内容物を排出するためには腸のぜん動運動と腸の変化を感じ取る知覚機能が必要です。運動や知覚は脳と腸の情報交換により制御されており、ストレスによって不安状態になると腸のぜん動運動が激しくなり、痛みを感じやすい知覚過敏状態になります。この状態が強いことが過敏性腸症候群の特徴です。日本人のうち、およそ10%程度の人が罹患しているのではないかと言われています(※2)。

大腸の病気とその症状

大腸がん
 大腸がんの発症部位にも依りますが、血便、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、お腹が張る、腹痛、貧血、体重減少などがよく見られます。大腸がんの発見には、便に血液が混じっているかどうかを検査する便潜血検査の検診における有効性が確立しており、症状が出る前に検診などで早期発見が可能です。早期に発見できれば完全に治る可能性が高くなります。
 過去の記事「増加傾向にある「大腸がん」を対策しよう(管理栄養士による生活改善コラム)」も併せてご確認ください。

潰瘍性大腸炎
 血便や下痢、腹痛などで、1日に10回以上も粘血便や血便が出ることもあります。さらに重症になると、発熱、体重減少などの症状が現れるケースも見られます。

クローン病
 その初期症状は、下痢や腹痛、血便、発熱、体重減少、全身の倦怠感などの症状が現れますが、軽症の場合はなかなか診断がつかないこともあります。特に腹痛は、虫垂炎と似た症状がでることもあります。そして、病が進行すると、腸が狭くなったり炎症等による穴が生じたりといった合併症が起こり、発症後5年で約30%、10年で約70%の割合で手術が必要になるという報告があります。

過敏性腸症候群
 腫瘍や炎症がないにもかかわらず、お腹の痛みや調子が悪く、それに伴い、便秘や下痢などの排便の異常が数か月以上続きます。お腹の痛み、便秘・下痢、不安などの症状のために日常生活に支障をきたすことがあります。

指定難病の大腸の病気とは

 平成26年5月23日に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が成立し、平成27年1月1日に施行されました。この法律の中では医療費助成の対象となる疾患は新たに指定難病と呼ばれることとなりました。難病に必要な条件は以下の4つです。

1)発病の機構が明らかでない
2)治療法が確立していない
3)希少な疾患
4)長期の療養を必要とするもの

さらに指定難病となると以下の2条件が加わります。

5)患者数が日本において人口の約0.1%程度に達しないこと
6)客観的な診断基準が成立していること
平成30年4月現在、指定難病は331疾病となっています(※3)。意外と多いこの指定難病の中に、もちろん大腸の病気も含まれています。それが、潰瘍性大腸炎(指定難病97)とクローン病(指定難病96)です。
 潰瘍性大腸炎の場合、重症の方を除き、腸の炎症を抑える薬剤による内科的治療を行い、大腸粘膜の異常な炎症を抑え、症状をコントロールすることで多くの患者さんで症状の改善や消失(寛解)が認められます。しかし再発する場合も多く、寛解を維持するために継続的な治療が必要となります。重症で外科手術になる患者さんなど一部の方を除けば、ほとんどの患者さんの生命予後は健常人と同等です。
 クローン病の場合も、重症の場合外科的手術が必要とはなりますが、栄養療法や薬物療法などの内科的治療が主な治療方法となります。クローン病の場合は、寛解状態に入ることが難しく、症状が落ち着いていても、病気は進行するといわれています。
 いずれの場合も早期の発見により外科的手術を回避することが可能になります。お腹の痛みや排便がおかしいな、と感じたら、軽く見るのではなく、早めの通院で少しでも治療の負担を小さくしたいものですね。

大腸の病気 難病の解明に向けて

 上に述べた潰瘍性大腸炎とクローン病は共に消化管に炎症や潰瘍を起こすため、炎症性腸疾患と呼ばれています。日本においてもライフスタイルの欧米化に伴い、患者数は年々増加しており、新薬の開発が望まれています。
 2018年5月、筑波大学とエーザイ株式会社の共同研究により、炎症性腸疾患の開発中の治療薬の類縁体が白血球全般の接着・浸潤を抑制するという新規の作用メカニズムが解明されました。この解明された抗炎症作用のメカニズムは、炎症性腸疾患の治療薬の価値を更に高め、開発が進むことが期待されています(※4)。
 また2018年6月には、理研を中心としたグループから、炎症性腸疾患の患者を対象に独自に開発した遺伝子の発現量に個人差がある領域のデータとGWASでの統合解析を行ったとの報告がありました。その結果、炎症性腸疾患の発症には非常に複雑な遺伝子発現制御機構が存在することが明らかになりました。この研究成果は今後、炎症性腸疾患の発症機構や新たな診断方法・治療法の開発につながると期待されています(※5)。
 国際炎症性腸疾患ジェネティクス・コンソーシアムと呼ばれる炎症性腸疾患の遺伝的背景を解明するために結成された国際共同研究グループは当初は欧州諸国が中心でしたが、現在は東アジア・インド・イランが加わり、世界中でその研究は進んでいます。今はまだ、完治に導くような薬はありませんが、近い将来画期的な薬が開発され、完治する病気になるかもしれませんね。

 遺伝子検査MYCODEでは指定難病である潰瘍性大腸炎やクローン病だけでなく、大腸がんのなりやすさの遺伝的傾向を調べることができます。

監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

参考文献
※1. 国立がん研究センター, がん情報サービス, がん登録・統計
※2. 日本消化器学会編集, 過敏性腸症候群ガイド(IBS)
※3. 厚生労働省, 「指定難病」
※4. Ohkuro M, Calreticulin and integrin alpha dissociation induces anti-inflammatory programming in animal models of inflammatory bowel disease., Nat Commun.
※5. 理化学研究所, プレスリリース「炎症性腸疾患発症に関わる複雑な遺伝子発現制御機構 -ゲノム解析と遺伝子発現量の変化の統合解析法を開発-」

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