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病気・医療

【管理栄養士コラム】増加傾向にある「大腸がん」対策をしよう!(検査結果を復習)

公開日:2016年9月30日
更新日:2019年8月30日

管理栄養士による生活改善コラム、第三弾。がんのうち罹患数1位、死亡数2位「大腸がん」の対策をしましょう!


大腸がんを予防するにはどうすればいいのでしょうか。(写真:Shutterstock.com)

 生活習慣の変化などにより、近年大腸がんを発症する人が増加しています。2015年がん統計予測の罹患数は第1位、死亡数は2位と発表されています(※1)。

大腸がんの遺伝要因と環境要因とは

 大腸がんの発症には遺伝と環境の要因両方が関与していますが、ヨーロッパ人を対象とした研究では遺伝要因が35%、環境要因が65%と報告されています(※2)。あなたの遺伝的な傾向はいかがでしたでしょうか?



 残念ながら遺伝要因は私達の力で変えることはできませんが、遺伝子検査の結果でリスクが高かったからといって、必ず発症するわけではありません。違う見方をすると、リスクが低くとも、環境要因(生活習慣)によっては発症する可能性が高くなるのです。

 今回はリスクを低減させるために、昨年話題となった赤肉・加工肉についてと身体活動の効果について、自分の習慣に置き換えて考えてみましょう。

赤肉(牛肉・豚肉)や肉の加工食品(ベーコン、ハム、ソーセージ)に注意

~習慣チェック!こんな肉食生活していませんか?~
□毎日2食以上メイン料理が“肉”である
□1回に食べる肉の量は、約100g以上である
□1週間に3回以上焼肉などお腹いっぱい肉を食べる
□毎日のお弁当のおかずがソーセージなど加工肉で、朝食にもお弁当の残りを食べる
□加工肉を週2回以上、1回に1袋を食べきってしまう

肉100g⇒薄切り3~4枚 (外食1人前程度)

 2015年10月に国際がん研究機関(IARC)は以下を発表し、話題となりました(※3)。
①加工肉を毎日継続して50g/日摂取するごとに大腸がんのリスクが18%増加する。
②牛肉、豚肉、羊肉などの赤肉を、毎日継続して100g/日摂取するごとに発症リスクが17%増加する。
*ここでの赤肉とは牛肉・豚肉・羊肉などの乳類の肉(鶏肉は含まない)を示す。

 肉の種類やその量、男女差はまだ明確ではないとされていますが、赤肉・加工肉が大腸がんのリスクを上昇させることは「ほぼ確実」といわれています。がんの発症には長期にわたる食習慣の影響が大きいので、思い当たる場合は以下を参考に改善していきましょう。

~ワンポイントアドバイス!~
・毎食メイン料理が“肉”の場合は、魚や豆腐類に置き換えましょう
・毎日食べる肉の量は、約70~100g/日以下(1週間500g以下)、加工品はベーコンだったら1枚、ハム2枚、ソーセージも2本以下にしましょう。
・肉の“焼けこげ”や、肉の“脂身”などの動物性脂肪が大腸がんのリスクを高めるといわれています。こげた肉を食べないようにする、脂身の少ない部位を中心に選ぶなども大切です。

身体活動量を増やすと大腸がんの予防につながる

~習慣チェック! 大腸がんの予防には、どれだけ動くと良い?~
□毎日、筋肉労働やスポーツをする習慣がある
□歩いたり立ったりしている時間が1日3時間以上である

図1.身体活動量と大腸がん罹患リスクとの関係(※4)

※直腸がんは男女とも有意な差がみられない
※女性は、家事に関する質問が不十分だったことの影響で、うまく評価できなかったのではと推測されている

 身体活動による大腸がん予防効果は、「ほぼ確実」とされています。図1をご覧下さい。男性において、身体活動量が多い集団は、少ない集団に比べると大腸がんの発症リスクが30%低下したとされています(※4)。この時のリスクが低下した集団の活動量は、毎日筋肉労働やスポーツの習慣がある、もしくは歩行や立っている時間が1日3時間以上でした。

 ハードルが高い活動量に感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、なぜ活動量が重要なのかを知ると“やる気”につながるかもしれません!

~活動量を増やす&継続するにはモチベーションが重要~
 がん予防を目指した活動量UPは、減量目的で運動を実施する時などと比べると、その効果がなかなか体感(可視化)しにくいので、1歩が踏み出せない方、継続できない方が見受けられます。「活動量を増やすことによる体内メカニズムの変化」を知ることがモチベーションにつながりますので、以下確認しておきましょう。

○活動量を増やすことで推察される体内メカニズム効果(※4)
・がんになりにくくするカラダの力(免疫力)をUP!
・脂身が多い肉類を摂ると分泌量が増す発がん促進作用(二次胆汁酸)を抑制
・腸管の蠕動(ぜんどう)運動が促進され、腸内に便(発がん物質)が留まる時間を短縮
・高インスリン血症改善(高インスリン血症の人は大腸がんになりやすい)
・肥満予防

~ワンポイントアドバイス!~
 今すぐに理想的な活動量に達せなくとも、今よりも増やした分、免疫機能や発がん抑制作用などが体内で強化されているかもしれません。また、活動量を継続するコツとして自分の習慣を可視化することも重要ですので、まずは歩数アプリなどを活用し、1日10分増やしてみる、階段を急ぎ足で上り、呼吸を上げてみる、休日の過ごし方を工夫してみるなど、「今よりもステップアップ」を今日から取り組んでいきましょう。

早期発見のため、健康診断を受けましょう

 大腸がんは早期に発見できれば、がんを完全に取り除ける可能性が高いといわれています(※5)。そのためには、40歳以上の方は1年に1度は検診(便潜血検査)を受けるようにしましょう。


参考文献
※1. 国立がん研究センター, 日本のがん罹患数・率の全国値公表(2015年集計)
※2. Lichtenstein P, Environmental and heritable factors in the causation of cancer--analyses of cohorts of twins from Sweden, Denmark, and Finland., N. Engl. J. Med.
※3. 農林水産省, 国際がん研究機関(IARC)による加工肉及びレッドミートの発がん性分類評価について
※4. 国立がん研究センター, 身体活動量と大腸がん罹患との関連について
※5. 国立がん研究センター, 大腸がん(結腸がん・直腸がん)