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病気・医療

狂牛病の仕組みの一端を解明、狂牛病の進行を抑えられる日はやってくるのか?

公開日:2015年1月23日
更新日:2018年6月18日

写真はイメージです。記事と直接の関係はありません。(写真 Mirar abajo/Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0 International)

プリオン病、狂牛病、クロイツフェルト・ヤコブ病

 今回は狂牛病で有名なプリオン病のお話です。

 プリオン病とは、牛の「狂牛病」という名前で一般的に有名になった脳神経の病気の総称で、人で発症するものに「クロイツフェルト・ヤコブ病」、羊で発症するものに「スクレイピー」などと呼ばれるものがあります。特徴的な症状は認知症や運動失調で、最終的には脳がスポンジ状に隙間だらけになって死にいたるという、非常にまれではありますが、とても恐ろしい病気です。

 まだ分かっていない事の多いこの病気について、スイスにあるユニバーシティ・ホスピタル・チューリッヒの研究グループが、プリオン病の原因の一端を明らかにしたとする報告を、科学誌PLoS Pathogensで2014年12月号に発表しました。

プリオン病は脳の病気・・・脳内の活性酸素が原因?

 プリオン病は脳内に存在する「正常型のプリオンタンパク」が通常の方法では分解されない「異常型プリオンタンパク」に変換されて蓄積し、神経細胞を傷つけることによって発病すると考えられています。

 これまでに、脳内の異常型プリオンタンパクの蓄積は、脳に酸化ストレスを与え、細胞やDNAが活性酸素によって傷つけられることが、クロイツフェルト・ヤコブ病の原因になっていると考えられていました。しかし、ストレスの元となる活性酸素が発生する仕組みについては、今までのところよく分かっていませんでした。

脳内での活性酸素発生の仕組みを研究

 研究グループは活性酸素の生産において中心的な役割を担っていることが知られている「NOX2(ノックスツー)」というタンパク質に着目しました。脳のなかでNOX2というたんぱく質を特にたくさん作っている細胞は、活性酸素を生成しており、周辺の細胞を傷つけている可能性が高いと予想できるのです。

 研究グループがクロイツフェルト・ヤコブ病になった人の脳のどの部分でNOX2が生成されているかを調べたところ、傷ついた細胞の修復に関わる「ミクログリア」という細胞で、活性酸素を生産するNOX2が大量に作られていることがわかりました。
つまり、このミクログリア細胞で生成されるNOX2、およびそこから生産された活性酸素が、クロイツフェルト・ヤコブ病の原因である可能性が示唆されたことになるのです。

 プリオン病と酸化ストレスの関係については、まだまだ分かっている事が少ないのが現状です。
今後さらに研究が進むことによって、脳細胞での活性酸素発生を抑制し、クロイツフェルト・ヤコブ病の進行を抑制する治療法が実現できる日がくるかもしれません。


参考文献

Sorce S et al. The Role of the NADPH Oxidase NOX2 in Prion Pathogenesis.
PLoS Pathog. 2014 Dec 11;10(12):e1004531. doi: 10.1371/journal.ppat.1004531.