• 病気・医療
  • 症状・原因
  • 胃がん
病気・医療

【管理栄養士コラム】胃がんの予防とビタミンC ~ピロリ菌との関係~

2018年08月29日 09時00分

Gastric cancer prevention article main
胃がんの予防に効果があるビタミンについてご存知でしょうか?(写真:Shutterstock.com)

 胃がんの発症に、ヘリコバクターピロリ菌感染の有無が関係しているのはご存知でしょうか。実は、この胃がん発症とピロリ菌との関係に、ビタミンCが予防の観点で関わっていることがわかってきました。ヘリコバクター・ピロリ菌感染の関与は、噴門部胃がんよりも非噴門部(分化型)胃がんにおいてより顕著とされています。

 ビタミンCは、多くの人に知られている身近な栄養素です。皮膚や細胞のコラーゲン合成に必要不可欠であることから、きれいなお肌を保つ上でも話題とされますが、胃がん予防として力を発揮する抗酸化ビタミンのひとつでもあります。

 前半では、胃がん予防には、どのようにビタミンCが関与しているのかをご紹介し、後半では、どのような食品をどれぐらいとると良いのか、また、サプリメントでとることの効果や、ビタミンCの体内吸収率などもご紹介していきたいと思います。

「野菜と果物を多く食べるほど胃がんの発症率が低下」で証明された?!

 なぜビタミンCは、胃がんの発症と関係があるということがわかったのでしょうか。ポーランドの国立食品栄養研究所の研究グループが、1960年から2006年にかけて、胃がんの発症率と食事のとり方について、大規模な調査を行いました。この研究では、野菜や果物をたくさん食べている人ほど、胃がんの発症率が低いことがわかりました。また、同時にビタミンCを多くとっている人ほど、胃がんの発症率が低いという結果もみられました。よって、ビタミンCを多く含む野菜や果物のとり方が、胃がんの発症リスクに影響しているのではないかと考えられています(※1)。

野菜や果物に多く含まれるビタミンCとがん予防 

 まず、がん全体とビタミンCとの関係から整理していきましょう。私達の体内では、活性酸素やフリーラジカルといった過剰に発生するとがんの原因となってしまう物質が、日々生じています。このがんの原因物質の発生を抑えたり、分解処理することを“抗酸化”といいますが、ビタミンCは抗酸化作用を持つ、魅力的なビタミンです(※2)。また、ビタミンCは免疫力を高める作用もあることから、様々ながんの予防効果が期待されています。

胃がんの原因ピロリ菌とビタミンCの関係 

 がんの中でも、特にビタミンCによる胃がんの予防効果が注目されています。胃がんの原因として、ヘリコバクターピロリ菌に感染していることが挙げられますが、ピロリ菌がどのような影響を及ぼしているのかを整理しておきましょう(※3)。

ピロリ菌感染と胃がんの関係
① ピロリ菌に感染していると胃粘膜に炎症を起こす。痛みや違和感がないこともあり、気づきにくい状態。
② 胃粘膜の炎症を繰り返すと粘膜が萎縮し、萎縮性胃炎になる。
③ 萎縮性胃炎の状態に発がん物質が入ってくると胃がんになる可能性が高まる。

 ビタミンCには、②の“胃粘膜の萎縮”を抑える作用があることが確認されています。胃がんの死亡率が高い、秋田県で行われた調査をご紹介します。この調査では、健康診断で慢性萎縮性胃炎があると診断された住民を対象としていますが、なんと52%も該当したようです。参加対象者に、ビタミンCを50mg、または500mgのどちらかを5年間毎日服用してもらい、その結果、以下が報告されています(※4)。

① 血中ビタミンC濃度は、50mgのグループでは摂取前より約13%上昇、500mgのグループは約39%上昇した。
② 5年後、胃粘膜の萎縮の進み具合は、両グループともおさえられていたが、50mgグループより500mgグループのほうが、より抑えられていた。
参考)健康管理の面から、ビタミンCの摂取量は、1日当たり100㎎/日(15歳以上)が推奨されています(※5)。

胃粘膜の萎縮とビタミンC 

 ではなぜ、ビタミンCをとることで、胃粘膜の萎縮が抑えられたのでしょうか。ピロリ菌に感染している人の血中ビタミンC濃度は、低下しているといわれています。よって、ピロリ菌による胃炎を抑えるために、ビタミンCがたくさん消費されている可能性があると考えられています(※6)。よって、秋田県での調査でもビタミンCを多くとることで、胃粘膜の炎症が抑制できたのかもしれません。

 胃がんを予防する一歩として、ピロリ菌に感染している人は早めに除菌し、血中のビタミンCレベルを低下させないようにすることが大切です。また、ピロリ菌以外の要因(食べ過ぎ、飲み過ぎ、刺激が強い食品の食べ過ぎ、喫煙、ストレス等)で胃炎を診断された人も、炎症を抑えるためにビタミンCが消費されている可能性があるため、摂取量を見直すようにしましょう。

ビタミンCの摂取量・推奨量と食品のとり方

 私達は体質など個人差があり、同じ性別や年齢であっても必要な栄養素の量が少しずつ異なります。その個人差を加味した上で、ほとんどの人が必要量を満たす栄養素の摂取量を“推奨量”として、食事内容の判断や改善方法の提案に活用されています。日本人の食事摂取基準では、ビタミンCの推奨量は、15歳以上(男女共)で100㎎とされています(※5)。

 私達はビタミンCの推奨量を摂取できているのでしょうか。表1をご覧ください。平成28年度の国民健康栄養調査によると、ビタミンCの摂取量は年齢による差がありました。若い世代ほど不足傾向にあり、推奨量を達成している世代は、60歳以上でした(※7)。

表1.ビタミンC摂取量とビタミンCを多く含む食品の摂取量

Gastric cancer prevention article 0
Gastric cancer prevention article 1

図1. ビタミンCの供給源

 次に、ビタミンCはどのような食品から摂取されているのかを見てみましょう(図1)。先ほどご紹介したポーランドが実施した胃がんと食事状況を調べた研究でも示されていましたが、日本の食生活でもビタミンCは、主に野菜38%、果物30%から供給されていました。また、表1からも野菜や果物の摂取量が多い世代ほど、ビタミンCの摂取量も多いことがわかります(※7)。

がん予防に野菜をあと100g増やしましょう

 若い世代中心に、野菜や果物不足によるビタミンCの摂取不足が懸念されます。毎日の食生活に、まず100gの野菜を追加してみてはいかがでしょうか。野菜80~100gとは、コンビニで売られているサラダやお総菜1品程度です。図2にビタミンCが多く含まれる野菜と果物をご紹介しますので参考にされてください。

Gastric cancer prevention article 2

図2.ビタミンCを多く含む野菜と果物
注:野菜は1食の目安量として小鉢1皿程度(約80g)で算出

野菜からとったビタミンCとサプリメントは効果が違う?

 ビタミンCは、食品から摂取してもサプリメントから摂取しても体内での利用率には違いがないといわれています。ただ、体内への吸収率は、1日の摂取量が200㎎程度までは90%と高く、1000㎎/日以上になると50%以下に低下するといわれています。つまり、多くとればとるほど効果が高まるわけではなく、一定の摂取量を超えると血中のビタミンC濃度が頭打ちになります。また、健康を保つ上で血中ビタミンC濃度をコントロールする必要があるので、多く摂取すると吸収率が低下し、尿中への排泄量が増加する仕組みがあります。

 ビタミンCの不足をサプリメントで補うことはひとつの手段ではありますが、野菜不足が解消されるわけではありません。野菜不足はビタミンCだけではなく、野菜に含まれているその他の栄養素(ビタミン・ミネラル類、食物繊維等)全般が不足します。病気の予防を目指すうえでは、毎日の食事に1品の野菜料理を追加することはとても価値があることです。まず食品からビタミンCを摂取することを目指し、サプリメントを用いる場合は、1000㎎/日以上を継続的に摂取することは推奨されていないことは知っておきましょう(※5)。