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病気・医療

茶色いパンと白いパン。体に良いのはどっち?

公開日:2015年1月30日
更新日:2019年5月20日

全粒粉パンと呼ばれる茶色のパンは、普通のパンと比べると食物繊維や鉄分、ビタミンなどを豊富に含んでいるそうです。


普通のパンと全粒粉パンの違い、わかりますか?(写真:Shutterstock.com)

 茶色いパンとは、チョコパンではありません。全粒粉パンのことです。

 全粒粉とは、小麦粉の一種です。普通の小麦粉は、胚乳だけを粉にしていているのですが、全粒粉は小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にしたものです。 普通の小麦粉と比べると食物繊維や鉄分、ビタミンなどを豊富に含んでいるそうです。

全粒粉パン食べれば死亡率が低くなる!?

  このたび、全粒粉を多く摂取している人は、心臓病による死亡率が低くなるという報告がありました。2015年1月5日、米ハーバード大学の公衆衛生学、ウー・ホンユ氏らの研究グループが、米国医師会雑誌であるジャマ(JAMA)誌に研究成果を発表しました。

 全粒粉を含む食品を多く食べることは、2型糖尿病や心臓病のような生活習慣病などのリスクを下げることがこれまでに報告されています。しかし、これまで全粒粉と死亡率を結びつけたデータはほとんどありませんでした。

大規模な調査で見えてきたものは、心臓病予防

  研究グループは、米国の看護師健康調査(1984年から2010年)で女性7万4341人、医療従事者疫学研究(1986年から2010年)で男性4万3744人、合計12万人程度の人を対象として、全粒粉の摂取量と死亡リスクの関連を検証しました。彼らは年齢、喫煙、BMI、身体活動、食事の内容をそれぞれ点数付けし、全粒粉と健康の関連を詳細に分析しました。

 この10年以上にわたる追跡期間中に死亡したのは2万6920人でした。結果として、生活スタイルや食事などに関係なく、全粒粉を摂取する量が多いと、心臓病による死亡リスクが低いことが分かったのです(※)。

 1人分の全粒粉量(1日当たり28g)をとると、全死因による死亡が5%低く、心臓病による死亡は9%も低いことがわかりました。しかし、がんによる死亡リスクとは関連性が見られなかったようです。

小麦の表皮に予防効果あり

 彼らはさらに、全粒粉に含まれる各成分ごとの健康効果を比較してみました。するとふすま(ブラン、小麦の表皮)を摂取した人では心臓病の死亡は2割減少していたものの、胚芽と死亡率低下には関連がみられませんでした。

 全粒粉で作ったパンが美容や健康に良いとは知られていましたが、死亡率まで減らすことがわかってきたのは画期的です。全粒粉にはこれからも注目ですね。

監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

参考文献
Wu H, Association Between Dietary Whole Grain Intake and Risk of Mortality: Two Large Prospective Studies in US Men and Women., JAMA Intern Med.