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病気・医療

なぜ風疹の流行が問題視されるの?大人の予防接種が必要な理由とは?

公開日:2019年11月7日
更新日:2019年11月27日

風疹の予防接種、あなたは何回受けましたか?(写真:Shutterstock.com)

風疹の症状と最大の問題点は?

 風疹は、感染から14~21日の潜伏期間の後、発熱や発疹、リンパ節が腫れるなどの症状が出ます。しかし、発熱を伴わないことも多く、約15~30%の人で感染しても症状が現れない不顕性感染が見られます。淡紅色で小さい発疹が全身に見られることもあります。熱が下がると、ウィルス量が激減し、感染力はほとんどなくなります。

 基本的に予後は良好で、感染力も麻疹(はしか)や百日咳と比べると弱いため、それほど危険な病気ではないのですが、この病気の一番の問題は、妊娠20週の頃までの妊婦が感染するとそれが胎児にまで影響を与え、先天異常を含む様々な症状を有する先天性風疹症候群が出現することにあります。妊娠中の感染時期によりその重症度は様々ですが、先天性心疾患や難聴、白内障、色素性網膜症などの病気にかかる可能性があります。

日本での流行と予防接種の関係

 1990年代前半まで、日本では風疹が5~6年ごとの周期で大流行が見られていました。しかし、乳幼児期での予防接種を義務化したことから、大規模な全国的な流行は見られなくなりました(※1)。

 ところが、風疹ワクチンが定期接種の対象になっていない国も多く、それらの国々では風疹の大流行と先天性風疹症の多発が見られます。実際に2011年から、十分な免疫を持たない人が海外で感染し、帰国後発症するケースが散見されています。2012年から2013年に首都圏と近畿地方を中心に大流行が見られました。患者の9割は成人で、男性の患者が女性の3.5倍もいることが特徴的です。

 これは、日本では一時期(1977年~1995年)女子のみが定期接種の対象であったことが原因として挙げられます。

風疹を予防するには?

 風疹は2回の予防接種を受けることで、約99%の人が免疫を持つことができるといわれています(※2)。風疹は弱毒化したウィルスを使用しているため、妊娠してからでは予防接種を受けることはできません。

 また、子供の頃かかったから大丈夫、と思っているあなた。ある調査では、血液検査したところ、約半数が勘違いだった(記憶違い、または風疹に似た別の病気にかかっていた)という報告もあります。予防接種は多く受けても問題はありません。妊娠を計画している人は、早めに予防接種を受けるといいでしょう。

 そして、女性だけでなく、妊婦さんの周りにいる人がかからないこと、大流行を起こさないことも大事です。男性でも、自分の家族や周りの人々を風疹やその合併症から守るために、風疹の予防接種を、ぜひ受けてください。

監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。