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【管理栄養士コラム】脂肪肝にも種類があるって知ってますか?食事によって異なる2つの脂肪肝

公開日:2018年4月11日
更新日:2023年5月10日

お酒を飲まない人でもなる脂肪肝とは?(写真:Shutterstock.com)

脂肪肝の原因はお酒だけじゃない!?あなたの飲食の傾向は?

 「自分の肝臓はフォアグラだ!」と笑い話として聞いたことはありませんか? 脂肪肝とは、肝臓、特に肝細胞に脂肪が沈着した状態をいいます。以前は、お酒を飲みすぎると脂肪肝になるというイメージが強くありましたが、最近になって、アルコールをあまり飲まないのに脂肪肝である人が非常に多いことがわかってきました。このフォアグラ状態の肝臓をもつ人は検診や人間ドックのデータを調べると30%もいるといわれています(※1)。

 なぜ、肝臓に脂肪が沈着するのでしょうか。食事からとった糖質やたんぱく質、脂肪などの栄養素はそのままの形では、体内で使うことができません。肝臓は、これらの栄養素を使える形に変換し、その後貯蔵したり、必要に応じてエネルギーとして供給するという働きがあります。食べ過ぎや運動不足によってこれらの栄養素が余ってしまった場合、内臓脂肪や皮下脂肪のほか肝臓にも貯蔵されるため、余剰分が多いほど脂肪肝の原因となります(※2)。

 脂肪肝は、飲酒習慣が原因で生じる「アルコール性脂肪肝」と、お酒をあまり飲まないのに発症する「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)」に分類されます。原因は異なりますが、脂肪肝の状態を放って置くと肝硬変や肝臓がんに進行する可能性があります。脂肪肝の段階で対策をたてることがとても重要ですので、まず、それぞれの脂肪肝について、特徴と対策を整理していきましょう。

アルコール性脂肪肝につながる飲酒習慣

 飲酒習慣が原因のアルコール性脂肪肝であるかどうか、まず以下の項目をチェックしてみましょう。

①お酒を毎日3合以上、5年以上は飲み続けている(女性やALDH2活性欠損者*は、2合以上)
*ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)活性欠損者とは、遺伝的にアセトアルデヒド(アルコール分解物質)の分解に関与している酵素活性が低く、お酒に弱い人のこと

②禁酒をすると血液検査で高値だったAST、ALT、γ‐GTPが改善した

図1. お酒の種類別1合の目安量

 アルコールは、肝臓に中性脂肪を蓄積させるメカニズムを促進する作用があるため、毎日3合以上(女性やお酒に弱い人は2合以上)を長年(5年以上)続けている人の9割が脂肪肝だと報告されています(※3)。この結果から、多量飲酒を継続すると、ほぼ脂肪肝になるといっても過言ではありません。

 一方で、肝臓は本来、再生力が強い臓器です。禁酒を1ヶ月程度行うと、脂肪肝の程度が強くとも改善がみられることが知られています。ここで注意したいのは、脂肪肝の段階で飲酒習慣を改善せずに、肝硬変まで進行してしまうことです。図2をご覧ください。肝硬変になってしまうと、肝機能の回復はかなり難しく、完全断酒しなければその後の生存率に大きく影響するといわれています。また、肝硬変の3~10%は肝臓がんに進行するともいわれています(※3)。ぜひ、フォアグラだとちょっと笑える脂肪肝の段階で、その後の人生をイメージしていただき、お酒と上手に付き合う習慣に切り替えるようにしましょう。

図2. アルコール性肝障害の自然経過(※3)

アルコール性脂肪肝まとめPOINT!

・健康診断や人間ドックの結果を確認し、ご自身の状態を把握
・脂肪肝が疑われる場合は、アルコール性であるかどうかを知るために、まずは1ヶ月禁酒!
・その後必ず病院を受診し、禁酒の効果を確認(血液検査や腹部エコー検査)
・それらの値が改善した人は、脂肪肝にならないための新たな飲酒ルールを
 例:ご褒美日以外は1日1合まで、飲み過ぎた次の日は休肝日を設ける等
*禁酒したにも関わらず改善しなかった場合は非アルコール性を参考に

非アルコール性の脂肪肝の原因となる食事と分類

 お酒をあまり飲まないのに脂肪肝になる人の多くが、肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪の影響で糖尿病や高血圧、脂質異常症が発症)が原因であることが明らかになっています。これらの脂肪肝を「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)」といいます。アルコール性脂肪肝の復習もかねて、非アルコール性脂肪性肝疾患であるかどうかを確認してみましょう。

①お酒はあまり飲む方ではない(アルコール性脂肪肝の飲酒量に該当しない)
②禁酒をしても血液検査で高値だったAST、ALTが改善しない
③肥満である(もしくは体脂肪率が高い)
④糖尿病、脂質異常症、高血圧などの指摘を受けたことがある

 また、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、2つに分類されます。
①病態があまり進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL:ナッフル)
②進行性の非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)
 
 図3をご覧ください。NAFLDと診断された人の80~90%は病態があまり進行しないNAFLに該当し、10~20%は脂肪肝炎が認められるNASHに該当するといわれています。このNASHは、病態が徐々に悪化し、肝硬変や肝臓がんに進行する可能性があるため、計画的に改善する必要があります。NASHに該当するかどうかは、肝生検(肝臓の一部を針で採取して顕微鏡で観察)をもとに判断されます。気になる方は、肝臓を得意とする専門病院を受診するようにしましょう(※4)。

図3. 非アルコール性脂肪性肝疾患の診断・治療フローチャート(※1)

非アルコール性の脂肪肝改善を目指した食事と運動

 NAFLDは肥満が原因のメタボ体質が原因で発症しますので、予防・改善する手段として、食事や運動による「体重減少」が一番効果的です。現体重の7%を減らすと改善効果があるといわれていますので、以下を参考に計画をたててみましょう(※1)。

【NAFLDの改善を目指したダイエット計画】

Step1:
現体重の7%を減量すると改善効果がみられる
例)体重80㎏×0.07(7%)=5.6㎏の減少を目指す!
  1ヶ月に1㎏減らすことを目標とし、6~12ヶ月で達成する

Step2:
食事からの摂取カロリーを減らすルールを決める!
・体脂肪量1㎏をカロリー(エネルギー量)にすると約7000kcal
 1㎏減/月を目指すとすると、摂取カロリーを今よりも-240kcal/日に

Step3:
運動で脂肪を燃焼、“今より”も余計に体を動かす!
・30~60分/週3~4日、ウォーキングなどの有酸素運動が理想
・軽い筋トレ(レジスタンス運動)も効果的
 
 Step2で食事からの摂取カロリーを減らす上で、脂質を控えた方が良いのか、糖質を制限した方が良いのかという話題が多くなりました。脂肪肝の改善では、とり過ぎている脂質を減少させることが推奨されていますが、脂質でも糖質でもとり過ぎている自分の食傾向を認識し、まずは“摂取カロリーを減らす”目標を設定することが重要です。例え、脂質や糖質のどちらかを極端に制限したとしても、カロリーコントロールによる改善効果を上回る方法はないとされています(※5)。
*カロリー(摂取エネルギーkcal)になる栄養素は、脂質、たんぱく質、炭水化物の3つ。

果物などの糖質が多い食事は脂肪肝には大敵?

 NAFLDの診療ガイドラインでは、果糖(フルクトース)の過剰摂取はNAFLDのリスクを上昇させる可能性があるとされています。果糖は、主に果物やハチミツなどに多く含まれていますが、血糖値が上昇しにくい糖として知られています。また、普段料理などに使用している砂糖(ショ糖)や、ジュースなどの嗜好飲料に使用されている異性化糖は、ブドウ糖と果糖を主成分としていますので、私達は果物を食べなくとも、意識せずに果糖を摂取していることになります。

 では、果糖がNAFLDに及ぼす影響はどれぐらいなのでしょうか。動物実験などの研究により、果糖を過剰摂取すると肝臓に脂肪が蓄積するメカニズムが解明されつつあります。一方で、最近報告された肥満男性を対象とした研究では、果糖を過剰摂取する期間と、ブドウ糖を過剰摂取する期間をそれぞれ2週間設けて観察した結果、肝臓への脂肪蓄積量に糖質の種類による差が見られなかったと報告されています。また、同研究では高カロリー食のもとでこれらの糖類を過剰摂取すると、果糖でもブドウ糖でも、脂肪肝に関する指標が悪化したともいわれています(※6)。

 これらの結果より、NAFLDの発症には果糖が影響はしているが、果糖のみを減らすより、カロリー制限を基本とし、過剰に摂取している糖質全体を減らすことが重要であると考えられます。

 実際の食生活に落とし込むと、脂肪肝が気になる方は、果糖を含む果物の摂取量を1日100g程度(リンゴ1/2、グレープフルーツ1/2、キウイフルーツ1個、いちご5~7個)を目安にすると良いでしょう。果物には食物繊維やビタミン類が豊富に含まれているため、がんや循環器系など様々な病気予防に推奨されています。全く食べないのではなく、適量をとりつつ、嗜好飲料や菓子類に含まれる糖類を見直すことが重要です。

コーヒー等カフェインを含む飲食物の、脂肪肝炎悪化抑制につながる可能性

 近年、コーヒーに含まれるカフェインは、NAFLD(NASH)の肝線維化(脂肪肝炎から悪化した状態)を抑制するのではないかと期待されています(※1)。どれぐらい飲むと良いのかは明確にはなっていませんが、カフェインの過剰摂取による健康被害を考慮すると、1日3~5杯程度が目安になりそうです。もし、糖類たっぷりの嗜好飲料を飲む習慣がある場合は、無糖のコーヒーに置き換えるのも工夫のひとつです。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)まとめPOINT!

・まずは飲酒量チェックし、アルコール性脂肪肝ではないことを確認
・脂肪肝改善を目指して減量にチャレンジ:現体重から-7%又はBMI25以下を目標に
 カロリーコントロールの際には、果糖含め糖質のとり過ぎをチェック!
・普段飲む飲料として、カフェイン入りのコーヒーが良いかもしれません
・糖尿病などの基礎疾患がある人は、主治医に相談の上、一度肝臓専門病院を受診

脂肪肝の予防や改善を目指す上で大切なことは、改善行動をあきらめず、コツコツ継続することです。
また、その改善行動の効果を定期健診などで確認するようにしましょう。

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参考文献
※1. 日本消化器学会編, NAFLD/NASH診療ガイドライン2014, 南江堂
※2. 厚生労働省, eヘルスネット「脂肪肝」
※3. 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター,アルコール性肝疾患
※4. 日本消化器病学会ガイドライン, NAFLD/NASH
※5. 池嶋健一, NAFLD の診療・研究の進歩, 日本消化器病学会雑誌
※6. Johnston RD, No difference between high-fructose and high-glucose diets on liver triacylglycerol or biochemistry in healthy overweight men., Gastroenterology.

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