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病気・医療

【認定遺伝カウンセラーコラム】「もやもや病」について知ろう

公開日:2017年1月11日
更新日:2019年4月8日

MYCODEでは、150項目もの病気の遺伝的傾向をご提供しておりますが、中には初めて耳にする病名もあるのではないでしょうか。今回は、「もやもや病」という病気についてご紹介します。


「もやもや病」という脳の血管に起こる病気をご存知でしょうか。(写真:Shutterstock.com)

 MYCODEでは、150項目もの病気の遺伝的傾向をご提供しておりますが、中には初めて耳にする病名もあるのではないでしょうか。そのような病気のリスクが高値に表示され、不安を感じられた方もいらっしゃるかと思います。このコラムでは、病気についての理解を深めていただき、生活改善による予防や早期発見についての情報を提供し、日常の健康管理に役立てていただくことを目的にしています。

 今回は、「もやもや病」という病気についてご紹介します。

もやもや病とはどんな病気?

 もやもや病は、脳の血管に起こる病気です。脳に血液を送る内頚動脈という血管の終末部が何らかの原因で細くなり、脳への血流量が不足します。これを補うため、この周辺にある細い血管が拡張して発達し、これが空気中を漂うタバコの煙のように“もやもや”と見えることから、この病名が付けられました(※1)。

 今のところ明らかな原因は分かっていませんが、遺伝要因と環境要因の相互作用により発症すること、特定の遺伝情報を持つ人に発症しやすい傾向があることがわかっています。一部は家族内に発症することがありますが、親から子に必ず伝わるものではなく、また兄弟に発症者がいたとしても、本人が必ず発症するわけではありません。一方で家族歴がまったくない人が発症する場合もあります。

 MYCODEでは、もやもや病の遺伝的な発症リスクが最も低い方で日本人平均の0.17倍、最も高い方で日本人平均の4.03倍という結果をご提供しております。あなたの結果はいかがでしたでしょうか。

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もやもや病の症状は?

 もやもや病の症状には2つのタイプがあります。

 1つは虚血型(血が不足すること)の症状で、血管が細くなったことで脳への血液量が不足し、手足の麻痺や言語障害が起こることがあります。これらの症状はすぐに回復することから「一過性脳虚血発作」とよばれています。子供では熱いものを「ふぅーふぅー」としながら食べる動作、ハーモニカや笛などの楽器演奏がきっかけで過換気状態となり、症状が出ることもあります。過度の脳虚血の状態が続くと、脳梗塞に至る場合があるため注意が必要です。

 もう1つは出血型の症状です。拡張した血管は本来の太さ以上になって血液を送っているため壊れやすく、脳に出血を起こす場合があります。このとき激しい頭痛や意識障害、手足の麻痺、言語障害が起こり、致命的になる場合もあります。

もやもや病はどれぐらい発症しているの?

 日本国内での患者数は2015年の調べで約16,000人登録されており、10万人あたり6~10人程度いると考えられています(※2)。多くは10歳以下の子供に発症しますが、成人では30歳~40歳台に小さなピークがあります。

もやもや病への対策はありますか?

 現在、発症を促進・予防する要因は研究段階で、早期発見すべく研究が進められております。健常人が脳ドックを受けて発見される頻度は、およそ0.05%と推測されています(※3)。何らかの自覚症状がある場合や発症リスクが高いと感じられる方は脳ドックなどで画像検査のチェックと医師の診察を受けることをお勧めします。

もやもや病の検査・診断はどのようにされますか?

 もやもや病は、脳の画像検査で、「もやもや血管」(図1)を証明することによって診断されます。脳の血管の状態を調べる脳血管撮影や磁気共鳴画像(MRI)/磁気共鳴血管撮影(MRA)で検査されます(※3)。

図1.脳血管模式図

もやもや病の治療法はあるのでしょうか?

 脳梗塞の予防として、血管内で血小板という血液の成分が固まらないようにする抗血小板療法があります。また、外科的治療としては脳への血流量を確保するための血管のバイパス手術が実施される場合もあります(※2)。専門医が、それぞれの症状や状態を把握した上で、適切な治療法を選択しています。

 もやもや病のように、生活習慣等の予防法が研究段階のものもありますが、あらかじめその病気特有の症状や診断方法を知っておくことで、早期発見につながる場合があります。MYCODEをご自身の健康管理に是非お役立てください。


執筆者
認定遺伝カウンセラー 藤田和博先生
プロフィール:昭和大学藤が丘病院での先天異常、血液腫瘍の遺伝子・染色体検査の経験を生かし、現在は大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科教授として臨床検査学教育と研究に従事。
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