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病気・医療

どんなウイルス?新型コロナウイルスの基礎知識

2020年08月20日 09時00分

新型コロナウイルスの特性について改めて整理してみましょう(写真:Shutterstock.com)

*本記事は7/22時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については厚労省や自治体の専用ページでご確認ください。

 2019年12月に中国の武漢市で発生して以来、新型コロナウイルスは世界中で猛威を振るっており、2020年7月には世界の感染者が1400万人を超えました。どうしてここまで広がってしまったのか。そもそもどうして「新型」と呼ばれているのか?今更人に聞けない新型コロナウイルスの基礎知識を、医師である石原藤樹先生に教えていただきました。

新型コロナウイルスはどのようなウイルスなのか

【ヒトに感染する7番目のコロナウイルス】

 「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」は、インフルエンザウイルスや麻疹ウイルスなどと同じRNAウイルスの一種です。今回の流行で「コロナウイルス」という言葉を知った人も多いかもしれませんが、実はこれまでにヒトに感染するコロナウイルスは6種確認されていました。

 そのうち4種類は一般的な風邪症状を引き起こすもの。その他、2002~2003年に中国を中心に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)と、2012年に中東で発生したMERS(中東呼吸器症候群)もコロナウイルスに分類されます。新型コロナウイルスはその中でも、SARSに近い型のコロナウイルスと考えられています。

 しかし、今回の新型コロナウイルスはMERSやSARSの流行をはるかに上回り、すでに世界規模の問題です。これほど世界中で大流行が起きるのは、1918年から流行したスペイン風邪以来100年ぶりではないでしょうか。

【「100年に1度の大流行」が起こったわけは?】

 世界的な流行が起こった大きな理由のひとつは、グローバル化が進み、人の移動が大きく増えたことにあります。そのため人口の多い中国をはじめ、あっという間にアジア全域、ヨーロッパ、アメリカまで感染が広がっていきました。

 そして、感染の広がってしまったもうひとつの理由が、無症状であっても感染力を持つことです。SARSの場合、多くは肺炎の症状の出ているときだけ感染力があるとされていました。発症している人は、体調も悪いので自然と移動が一定程度まで制限されていき、接触者の特定も容易なため世界的な感染爆発とまではいきませんでした。

 しかし、今回の新型コロナウイルスでは、発症の2日前程度から感染力があり、症状のない無症状者でも感染力を持つことがわかりました。そのため、感染拡大を防ぐための術を確立する間もなく、世界に感染が広がっていったと考えられます。

【「3密」環境下での感染力が非常に強い】

 他のコロナウイルスと比較して、新型コロナウイルスの感染力が著しく高いわけではありません。しかし、当初より指摘されていることではありますが、3密空間においては、感染力が非常に強くなる傾向があります。日頃から言われている通り、密閉、密接、密集の状態を避けることは非常に重要だと言えるでしょう。

重症化のしやすさ、危険性はどの程度?

【医療崩壊の有無が死亡率に大きく影響】

 新型コロナウイルスに感染し、症状が出た人のうち、約8割が軽症と言われています。致死率は、国や患者の基礎疾患の状態、医療の状態によって幅があるものの、肺炎症状が出た人で5%程度のようです。実際に感染しても症状が出ない人が一定数いるので、感染者全体で検証するとより低い水準となり、SARS(約9%)やMERS(約35%)と比較しても高いわけではありません。

 しかし、重症患者には手厚い治療が必要となるので、感染が急拡大して医療崩壊が起きてしまうと、その地域では致死率が2割を超えるなど、非常に高い水準に達してしまう恐れもあります。医療機関の余力を確保しておくことは、重症患者を受け入れるという点から重要なのです。

【重症化しやすいのはどんな人?】

 新型コロナウイルスに限らず、一般的な風邪や肺炎も同様ですが、高齢の方は重症化のリスクが非常に高くなります。喫煙者、糖尿病や高血圧など生活習慣病の方も高リスクです。また、理由はよく分かっていないものの、感染者、重症者ともに男性が多いようです。

 一方で特徴的なのが、子どもの感染が少ないこと。理由は明らかではありませんが、感染・重症化リスクがともに低いと言えそうです。

気になるワクチンと再感染について

【ワクチン開発までの時間を予測するのは難しい】

 実は、SARSやMERSの流行時もワクチン開発は行われていましたが、結果的に十分に有効なものは発表されていません。コロナウイルスに対するワクチンの開発にこれまで成功した例がないのです。そのため、今回もワクチンの開発までどのくらい時間がかかるのか、予測するのは難しい部分があります。

 ワクチンにはいくつか種類があります。従来使用されている代表的なワクチンは、インフルエンザなどに使用されるもので、感染力をなくしたウイルスの一部を身体に注射する「不活化ワクチン」と麻疹ウイルスなどに使用されるもので、弱毒化したウイルスを注射する「生ワクチン」です。もし、不活化ワクチンの開発に成功すれば、年内など、早い段階で実用化できる可能性もあります。

 もうひとつ注目されているのが、日本でも開発が進められているDNAワクチンやRNAワクチン。ウイルスそのものやその一部を注射する従来のワクチンとは異なり、ウイルスの一部を体の中で作り出す遺伝子を身体に注射します。自ら作り出したウイルス由来のタンパク質に対して、体内で免疫が働き、抗体を作り出すというアプローチで、元々はがん治療の技術を応用したものです。ウイルスを培養して生産する必要がないため、ワクチンの生産がしやすいのが大きなメリットです。ですが、まだ実用化された実績がないため、開発や安全性の検証に要する時間は未知数です。

 遺伝子を身体に送り込むために、ウイルスベクターワクチンと言って、身体に害の少ない他のウイルスそのものに、新型コロナウイルスの遺伝子の一部を挿入して、それを注射するというワクチンも研究開発されています。こちらはエボラ出血熱のワクチンなどで、試験的には実用化されている技術ですが、大規模な接種が行われたことがないため、その効果や安全性はやはり未知数です。

【免疫がどの程度持続するか分からない】

 ワクチンの開発に関連し、もうひとつ懸念されているのが免疫の持続性です。一度感染すると一生かからない水疱瘡や麻疹と異なり、新型コロナウイルスの抗体は一時的である可能性が指摘されており、再感染が疑われるケースも報告されています。

日々アップデートされる情報を注視して

 かつてない勢いで広がる新型コロナウイルス。少しずつではありますが、日々ウイルスの謎が解き明かされ、情報がアップデートされていっています。各種報道やSNS等で情報が拡散され、様々な情報に触れるかと思いますが落ち着いて情報を咀嚼することが重要です。

 新型コロナウイルスに関する相談は、新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センター(厚生労働省HP)より、お住まいの都道府県の相談先をご確認ください。


著者
松本まや
プロフィール:フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

参考文献
厚生労働省, 新型コロナウイルス感染症について

記事提供元
MYCODEの運営会社・株式会社DeNAライフサイエンスのグループ会社であるDeSCヘルスケア株式会社が提供する、ヘルスケアエンターテインメントアプリ「kencom」掲載記事より「どんなウイルス?新型コロナウイルスの基礎知識」を一部改編。
kencomについて詳しくはこちら

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