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病気・医療

花粉症は日本だけ?なぜかかる?春の花粉症講座

2020年03月19日 09時00分

花粉症のメカニズムと日本で多い理由とは?(写真:Shutterstock.com)

 毎年多くの人が悩まされている花粉症。今回はヘルスケアエンターテインメントアプリ「kencom」より、日本医科大学大学院・耳鼻咽喉科学講座主任教授の大久保公裕先生に伺った、花粉症の症状や基礎知識についての記事をお届けします。

大久保公裕(おおくぼ・きみひろ)先生

 1959年生まれ。日本医科大学大学院卒業。2010年から同大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学分野教授となり、現在は耳鼻咽喉科学講座主任教授および附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長も兼任。また日本アレルギー学会理事、日本耳鼻咽喉科学会代議員など学会活動にも従事している。

花粉症ってどんなものですか?

 花粉症はその名の通り、スギやヒノキなどの花粉が原因となってアレルギー症状を引き起こす病気で、季節性アレルギー鼻炎とも呼ばれます。症状は主に鼻と目に現れ、鼻はくしゃみ、鼻水、鼻づまり。目は涙や充血、かゆみなどが代表的です。また喉や皮膚のかゆみ、口の渇き、倦怠感や熱っぽくなるなどの症状も現れます。

 日本においては、地域差はありますがだいたい例年2月から5月頃にかけてスギ花粉とヒノキ花粉が飛散するため、毎年多くの人が花粉症に苦しめられるというわけです。

出典:大久保公裕、馬場広太郎、週刊日本医事新報 No.4100, 22-26, 2002

 花粉症は死に至るほどの病気ではありませんが、一番の問題はQOL(Quality Of Life)、つまり生活の質が下がってしまうことにあります。花粉症患者はシーズンになるとくしゃみや鼻水、気分がボーっとするなどの症状に苦しめられ、熟睡できなかったり、暖かい季節にも関わらず外出を控えるケースが増えてしまうのです。また仕事においても能率や判断力の低下により、パフォーマンスはかなり落ちてしまいます。

 そう考えると、この時期の日本全体の経済損失はかなりのものになるでしょう。QOLを下げないためにも、花粉対策は怠らないようにしていただきたいですね。

どうして花粉症になると目や鼻が痒くなるの?

 次に、花粉症になるメカニズムを知っておきましょう。私たちの身体は、花粉などの異物(アレルゲン)が侵入すると、それを受容するか排除するかを決めます。花粉を排除すると判断した場合、その花粉に反応するためのIgE抗体という物質が体内で作られるわけです。

 その後再び花粉が体内に入ると、目や鼻の粘膜にある白血球の一種である肥満細胞とIgE抗体が結合し、肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が分泌して花粉を身体の外に排除しようとします。そこで起きるのが花粉をくしゃみで吹き飛ばしたり、鼻水や涙で洗い流したり、鼻を詰まらせて体内に入れないようにすること。つまり花粉症の諸症状は、身体の防御反応なんですね。

 次に、花粉症を発症する人としない人がいる理由についてですが、花粉などのアレルゲンに対する許容量は、個々人で異なります。長年花粉を浴び続けて体内に蓄積された花粉の量がその人にとっての許容量を超えると、防御反応として花粉症の症状が起きるのです。

 つまり「今まで花粉症の症状が出たことがないから自分は大丈夫」という人でも、今年の春花粉を浴びた結果許容量がオーバーし、いきなり花粉症を発症することは十分考えられます。

 花粉症は誰にでも起こりうる病気、と心得ておきましょう。

日本ばかりで花粉症の話題を聞くのはなぜ?

 日本には現在、約2,000万人の花粉症患者がいると言われています。しかし、花粉症がここまで深刻なのは世界でも日本だけ。

 海外でも牧草地を中心にブタクサによる花粉症例はありますが、社会問題化するほどではありません。日本で花粉症患者が増えた一番の理由、それは戦後の日本でスギやヒノキの木が大量に植林されたことが挙げられます。

 昭和の日本では、戦後の復興や新たな都市開発などで大量の建築資材が必要となり、国が中心となって積極的にスギやヒノキの苗木を植林しました。とくにスギの植林面積は広大で、面積にして約450万ヘクタールがスギ林と言われています。スギは30年から50年で資材として使える大きさに成長します。その時点で計画通り伐採されれば良かったのですが、安価な輸入木材に押されるなどの理由で実際には相当数が成木として残り、結果として毎年春に大量のスギ花粉が飛散するようになってしまったのです。

出典:林野庁, 花粉発生源対策について(平成28年4月)

 国や各自治体でも、伐採や花粉の少ないタイプのスギへの植え替えなどさまざまな対策を講じてはいますが、現時点でスギ林があまりにも広大すぎて、全部伐採するには300~500年かかるとの試算もあります。当然コストも莫大になるため、今あるスギの木を無くすというのは現実的ではありません。

 また、地球温暖化の影響で毎年のように猛暑が続いているのも原因のひとつです。夏が暑いと翌年春のスギ花粉の飛散量は多くなります。さらに全国的な都市化で舗装道路や鉄筋の建物が増え、花粉が落ちても吸着せず風で舞い上がって再飛散するケースも増えているのです。

 沖縄や北海道はスギ林自体が少なく、花粉症にかかる人も少ないですが、それ以外の地域に住んでいるならば、花粉症の猛威から逃げるのは難しいと思います。ならば花粉の飛散状況を逐一チェックし、予防や対策をしっかり行うのが現実的です。

著者
黒田創
プロフィール:フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆中。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

記事提供元
MYCODEの運営会社・株式会社DeNAライフサイエンスのグループ会社であるDeSCヘルスケア株式会社が提供する、ヘルスケアエンターテインメントアプリ「kencom」掲載記事より「花粉症は日本だけ?なぜかかる?春の花粉症講座〜基本編」を一部改編。
kencomについて詳しくはこちら


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