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男性はいずれいなくなる・・・?男性の遺伝子が大量消失しているという「謎」

2015年01月27日 14時00分

男性のみが持つ遺伝情報は、細胞の中で「Y染色体」として保持されています。そしてこのY染色体、進化の過程でドンドン小さくなっている事が判明してきています。果たして男性は進化の果てに、消滅してしまうのでしょうか・・・?


私たちの遺伝情報が刻まれている染色体がもつ「謎」とは?(写真:Shutterstock.com)

男性のみがもつ遺伝情報『Y染色体』

 皆さん、我々がもつ遺伝情報には、男女で大きな違いがある事を知っていますか?

 細胞の中で、遺伝情報、すなわちDNAは折りたたまれて23対の「染色体」を形成しており、その中で男女の「性」を決定しているのは、性染色体と呼ばれる一対の染色体です。

 この性染色体は常に対となっており、その組み合わせが【X:X】の場合、女性になり、【X:Y】の場合、男性になることが分かっています。

 今回はこの男性のみがもつ遺伝情報であるY染色体に関するお話です。

 Y染色体は男性しか持たないため、この中に含まれる遺伝子は、いわば男性限定の遺伝子なのですが、最近の研究で、この男性限定の遺伝子の数が急激に減っている、という事がわかってきています。
 
 このため、近い将来に男性であることを決定付けているY染色体がなくなってしまうのではないか、という説があります。中には男性は滅亡し人類は滅亡する、もしくは人類は女性だけになるのではないかと心配する声も聞かれます。

 そんな男性滅亡論に反論する研究が報告されました。米国マサチューセッツ工科大学らの研究グループは、Y染色体の遺伝子のうち重要なものは、厳格に保存されているということを英国科学誌Natureで示しました。

元々あった男性限定の遺伝子は、わずか3%に減少

 ヒトの性染色体は、およそ2~3億年前に男女共通の1対の染色体から誕生したと考えられています。このうちY染色体となったものは、進化の過程で遺伝子の消失が進んでいることが明らかになっています。

 特に、5回にわたって起こった大きな構造変化が遺伝子の消失を加速したと考えられています。度重なる構造変化の結果、Y染色体の多くが切り捨てられ、現在では元々あった遺伝子のうちわずか3%しか残っていないといいます。

 さらに、これらの遺伝子の欠失により、Y染色体の長さはX染色体の3分の1程度になってしまいました。これらのことから、Y染色体がいずれ崩壊するのではないかという説が生まれたわけです。

最後の3%は特別に大事だった

 最後の構造変化が起こったとされる3000万年前以降、Y染色体の遺伝子の数はどのように変化してきたのでしょうか?研究者たちは、約3000万年前まではヒトと共通の祖先であったサル(アカゲザル)のY染色体の遺伝子と、ヒトのY染色体の遺伝子を比較する事で、2500万年前以降、どのくらいヒトのY染色体に変化が起きているのかを推定しようと試みました。

 解析の結果、Y染色体の遺伝子の消失は、3000万年前に起こった構造変化以降、ほとんど起きていない事が明らかになりました(※)。2~3億年という長いスパンでみるとY染色体の遺伝子は大量に消失しているように見えますが、最後に3%だけ残された遺伝子はとても重要で、大切に保存されてきていたのかもしれません。

 今回の結果を聞いて、男性の皆さんは少し安心できたのではないでしょうか。もともとペアーだった男性のY染色体と女性のX染色体は、長い進化の過程で別々の道を歩み、Y染色体の遺伝子が急激に減っているのは不思議です。長い進化の歴史の過程で、私たちが理解できていることは非常に限られているのかもしれません。


監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。

参考文献
Hughes JF, Strict evolutionary conservation followed rapid gene loss on human and rhesus Y chromosomes., Nature.

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