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地球上で最も人間の命を奪う生物は「蚊」、その恐ろしい進化とは?

蚊はヒトのにおいをかぎ分けている!?
蚊が原因で亡くなる人の数は・・・年間100万人!?
刺されるととってもかゆい蚊。そんな蚊は実は人間にとって、非常に危険な存在でもあるのを知っていますか?蚊は様々な病気を媒介して感染症の原因となり、なんと年間100万人近くの人を死にいたらしめるそうです。年間で最も多く人の命を奪う動物は蚊である、とも言われています。
※人間の命を奪う生物ランキング(WHO統計より)
1位:蚊 725,000人(年間)
2位:人間 475,000人(年間)
3位:蛇 50,000人(年間)
4位:犬 25,000人(年間)
そんな蚊の中で、人間の血だけを好むように進化しているという、恐ろしい種類がいることがわかってきました。
ヒトの血だけを好む“ネッタイシマカ”
ネッタイシマカ(Aedes aegypti)という種類の蚊は、黄熱病、デング熱などの感染症を媒介している蚊です。この蚊にはヒトを避け、ヒト以外の動物を吸血する「森林型」と、森林型とは別にヒトの血を選択的に吸いに来る「家屋周辺型」がいるとされています。
このような人の血を選択的に吸う蚊はどのように生まれたのでしょうか?
米ロックフェラー大学のLeslie B. Vosshall らのグループは、家屋周辺型のネッタイシマカが人だけを好むようになったいきさつを研究し、2014年10月、英国の科学雑誌Natureで報告しました。
ヒトの血だけを好むようになった恐るべき進化
研究グループは、森林型と家屋周辺型のネッタイシマカの遺伝子を解析し、人の血を選択的に好むようになったメカニズムを調べました。
調査方法はなんと、箱のなかに蚊を閉じ込めて、その中に腕を突っ込み、どれだけ蚊に刺されるか、というもの・・・研究者の情熱に感服です。
結果、ヒトを好む家屋周辺型の蚊は、人のにおいに高濃度で含まれる化合物(スルカトン)のにおいを敏感に感じるための、特殊に進化した遺伝子を持っていることがわかりました。これは、人以外の血を好む森林型の蚊はもっておらず、人の血を好む家屋周辺型のみに見られる特別な進化でした。
ネッタイシマカにはもともと人以外の生物の血を吸う森林型しかいなかったのですが、どこかのタイミングで突然変異が起こり、人の血だけを好む、我々にとっては吸血鬼ともいえるような種類の蚊が誕生したと考えられます。
行動の進化に関わる遺伝子は、あまり多くは見つかっていませんが、今回の結果は、その希少な実例を示したものになります。様々な感染症を媒介する蚊がヒトの血を好んで吸うようになったいきさつを今後知ることは、蚊の感染症撲滅につながる事が期待されます。
参考文献
McBride CS et al. Evolution of mosquito preference for humans linked to an odorant receptor.
Nature. 2014 Nov 13;515(7526):222-7. doi: 10.1038/nature13964.