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ヒトの進化の不思議、ヒトのDNAにとりこまれた生物とは?

公開日:2014年12月24日
更新日:2018年6月18日

ヒトの遺伝子には、ヒト以外の遺伝子が紛れ込んでいる・・・?


ヒトの設計図にはウィルスの設計図が紛れ込んでいる!?

 ヒトはもちろん、あらゆる生物のもつ遺伝情報を“ゲノム”と呼び、生物ごとに“ゲノム”はそれぞれ異なった特徴を持つことが知られています。しかし近年の研究により、ヒトのゲノムの中には、ウィルスなど他の生物のゲノムが混ざっていることが徐々に明らかになってきました。

 ゲノムとは遺伝情報であり、生命の設計図ともいえます。そんな大事な情報に、なぜウィルスの遺伝情報が混ざってきたのでしょうか?

ウィルスゲノムの混入と進化の必然

 ヒトゲノムの中にウィルスゲノム(ウィルスの遺伝子)が紛れ込んでいるという事実は、生物の進化と大きく関係していると考えられています。

 生物は様々な環境の変化に対応できるよう、常に多様性を求める存在であり、我々人類の祖先も同様に「多様であること」を重視する生命体でした。
 そのような特性のもと、人類の祖先は積極的にウィルスなど他の生物の遺伝情報を取り込んできたのだと考えられています。ウィルスに感染した人類の祖先は、侵入してきたウィルスの遺伝子を自分たちの遺伝子にそのまま取り込み、ゲノムの多様性を広げるという戦略をとってきたのかもしれません。

ウィルス遺伝子の混入は4000万年以上前から?

 ウィルス遺伝子のヒトゲノム混入の歴史の中で最も古いものの一つとして、約4000万年前のものがあります。それまでの研究で知られてきたものとは異なる種類のウィルスで、「ボルナ病ウィルス」という、現在は馬などの家畜に感染することで知られるウィルスの一種でした。
 4000万年以上前に人類の祖先に感染したウィルスの遺伝情報が、今でも我々の遺伝情報の中に一部組み込まれているという事実はとても驚くべき事だといえます。

 ヒトゲノムという我々の設計図の中には、我々がこれまで考えていたよりも、遥かに多くの“他の生物の設計図”が紛れ込んできているようです。これらの研究が、なぜヒトがヒトになりえたのかという、大きな謎を解くヒントをくれるかもしれません。


参考文献

Horie M et al. Endogenous non-retroviral RNA virus elements in mammalian genomes.
Nature. 2010 Jan 7;463(7277):84-7. doi: 10.1038/nature08695.