• 遺伝子
  • 遺伝子検査
  • エピジェネティクス
  • マイマイ&トッピー
遺伝子

双子の違いの仕組み!「エピジェネティクス」のお話☆マイマイ&トッピーと遺伝について学ぼう-第2回☆

公開日:2015年5月25日
更新日:2018年6月18日

 マイマイとトッピーは、一卵性の双子の女の子。双子の遺伝に興味を持ち始めた今日この頃です。今回は、マイマイとトッピーが双子の「違い」の仕組みに迫るため、「エピジェネティクス」について学びます。その様子を一緒に見てみましょう☆


羊のドリー。(1996年7月5日~2003年2月14日)世界初のクローン哺乳類です。ドリーはクローンなのに、もとの羊とはいろいろ違うところがあります。なぜでしょう?(写真:Toni Barros/ クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 2.0 一般)

二人で違うところ、探してみよう

 こんにちは!私たちはマイマイとトッピー、10歳の双子の女の子よ。この前ママに教えてもらったんだけど、私たちは一卵性の双子なので、「ゲノム配列」が同じなの。「ゲノム」なんて言葉を使うと、なんだか大人になった気分!(第1回はこちら!

 でも私たち、違うところたくさんあるよね。例えば…
「好きな色!」(マイマイは緑、トッピーはオレンジ)
「好きな食べ物!」(マイマイはメロン、トッピーはにんじん)
「声の高さ!」(トッピーよりマイマイの方がちょっと高め)
「顔の輪郭!」(マイマイはまん丸、トッピーは良く見ると若干細め)
「得意な教科!」(マイマイは算数、トッピーは国語)
「ほくろの位置!」(確かに!)
「手相!」(ほんとだ!)
「好きな男の子!」(内緒だけど☆)

 「何だかいっぱいありすぎて、キリがないね!この辺でやめてジュースでも飲もうよ。」
「そうしよう!ママー、ジュース飲んでいいー?」
「もちろんいいわよー。だけどその前にちゃんと手を洗ってね。遊んだ後、手を洗ってばい菌を流すことは、病気を防ぐためにとっても大切な事なのよ、わかった?」
「はーい!」

生まれた直後、既にママは違いを見つけていた!

 (マイマイとトッピー、しっかり手を洗った後、並んでジュースを飲んでいます)
「マイマイ、トッピー、何をして遊んでいたの?」
「私たち二人で違うところをいろいろ見つけていたのよ。」
「うん、確かに、あなたたちのこと、そっくりって言う人は多いわよね。でもね、生まれてから毎日一緒にいるママから見ると、二人は全然違うわ。」
「それじゃあ、赤ちゃんのときに入れ違ったりって事、絶対ない?」
「ふふふ、それはあり得ないわよ。ママね、あなたたちが生まれたとき、二人並べてまずじーっと顔を見比べたの。そしたら眉間にうっすらと透けて見える血管が、マイマイは縦、トッピーは横だったのよ。」
「ほんとだー!」(二人、お互いに確かめ合う。)
「その日からずーっとマイマイは縦、トッピーは横だから絶対に入れ違ったりしてないわ。今はホクロの位置も違うし、何と言ってもオーラって言うのかしら?性格が全然違う(笑)。」

エピジェネティクスって何?

 「ねーママ、私たち、ゲノム配列、つまり体の設計図が同じなのに、一体どうしてこんなにいろいろ違うの?」
「むむ、なかなか難しい質問ね。それを説明するためにはまず『エピジェネティクス』を理解してもらう必要があるわね。」
「エピ…エビ?…なにそれ!?」

 ゲノム配列の違いが、一人一人の見た目や体質の違いに結びついているというのは前回話したわよね?これはね、ゲノム配列が違えば遺伝子のはたらきも違ってくるからなのよ。こういった違いを「ジェネティック」な違いと言うの。「ジェネティック」は、「遺伝の」という意味の英語よ。
 でもね、研究が進むにつれ、ゲノム配列が同じでも、遺伝子のはたらきなどに違いが出る場合もあると分かってきたの。この現象は、「ジェネティック」に、「後から」という意味の「エピ」をくっつけて、「エピジェネティック」と名づけられたのよ。ちなみに名付け親は、イギリスの発生学者ワディントン(Conrad Hall Weddington, 1905~1975)さん。

エピジェネティックな違いをもたらす3つの要因

図1.エピジェネティックな変化

 じゃあ一体、ゲノム配列以外のどこが違えば「エピジェネティック」な違いが生じるのか?それを調べるために、科学者たちは研究を重ねたわ。その結果、大きく分けて次の3つの変化が原因になっていると分かったのよ。

(1)DNAに起こった「メチル化」と呼ばれる小さな化学変化。
不思議なことに、メチル化されるのは、なぜか「シトシン-グアニン(CpG)」の順に並んだ場合のシトシンだけと決まっているの。生命にはこういう神秘的なルールがいっぱいあるのよ。
(2)「ヒストン」に起こった小さな化学変化(メチル化、アセチル化、リン酸化など)。
「ヒストン」って知ってる?長いDNAがぐちゃぐちゃにならないように巻きつけてまとめている、糸巻きみたいなタンパク質のことよ。
(3)「クロマチン構造」と呼ばれるDNAのまとまり具合の変化。
これは、(1)や(2)の結果生じる変化よ。
(図1参照)
 
 これら3つの変化のどれかが起きると、ゲノム配列が同じでも、遺伝子のはたらきに変化が起きて、違いが生じてくるって訳だったのよ。

 こういった小さな化学変化がどうやって起きるのか?その仕組みのほとんどは、実はまだ良く分かっていないの。メチル化されたDNAが、また元に戻ったりすることもあるのだけど、それもまだ謎のまま。でもね、エピジェネティックな違いは、どうやら時間が経つにつれて増えていくようよ。マイマイとトッピーのような一卵性の双子を大勢調査した結果、年を取れば取るほど二人の間に違いが増えていたんだって。おもしろいわね!

図2.ジェネティクスとエピジェネティクス

 というわけで、ゲノム配列が同じ一卵性の双子でも、「エピジェネティック」な違いにより、ホクロや輪郭などのちょっとした見た目の違いから、好みや能力、さらにはがんなどの病気のかかりやすさまで、さまざまなところで違いが出てくるってわけだったのよ。(図2参照)
あれ?マイマイ、トッピー、眉間にしわが・・・!難しい?大丈夫?わかった??

再びマイマイとトッピー登場

 うーん、はっきり言って難しい!でも大丈夫、何となくわかったよ!つまり、エピジェネティックな違いがあるから、私たち二人は「クローン人間」になってないっていうわけだよね?そういえば、かわいがっていたネコが死んで、そのネコから取った細胞でクローンネコを作ってもらったら、模様が全く違ったっていう話、聞いたことある…これもエピジェネティックな違いが原因だったんだね!神様は、そう簡単に人間の思い通りにはしてくれないってことだよね、きっと。

 「ところで、一卵性の双子をたくさん調査したっていう話がさっきあったけど、そういう調査っていろいろ行われているのかな?」
「どうなんだろうね?」
「今度ママに聞いてみようよ!」
「そうしよう!」

(第3回に続く)

<ためになる!おさらいクイズ>

 次のうち、エピジェネティックな違いに影響されないものはどれ?

(1)マイマイとトッピーの血管の形
(2)マイマイとトッピーの性格
(3)マイマイとトッピーのMYCODE結果

 正解は、もうわかりましたね、(3)です!MYCODEはSNP(第1回参照)の情報を基に、皆さんの体質や病気のリスクをお知らせしています。

というわけで、今日はここまで!

 遺伝子検査MYCODEでは、自分の遺伝子を調べることで、様々な体質や病気のリスクについて知ることが出来ます。MYCODEでわかるのは、全て「ジェネティック」なことなので、生まれてから死ぬまで、変わることはありません。自分のジェネティックな特徴を知るために、遺伝子検査を活用してみるのも面白いかも知れませんね!


参考文献

服部成介, 水島-菅野純子:よくわかるゲノム医学(羊土社)