• 遺伝子
  • 関連遺伝子研究
遺伝子

砂糖の何百倍も甘くって低カロリーな、天然甘味料の正体は?

公開日:2015年3月30日
更新日:2018年6月18日

 砂糖の150倍以上の甘味があり、低カロリーとして知られている甘草(カンゾウ)の主要成分、グリチルリチン。日本の理研植物科学研究センター等の研究グループがグリチルリチンの合成に関わっている遺伝子を発見しました。


画像はイメージです。記事と直接の関係はありません。(写真:Jens Buurgaard Nielsen/クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 2.5 一般)

 甘味料といえば、キシリトールやトレハロースが思い浮かびますが、糖の100倍とも200倍ともいわれるぐらい強い甘味をもつ天然の甘味料があることをご存知でしょうか。漢方薬に使われる甘草(カンゾウ)の主要成分、グリチルリチンは、低カロリーの天然甘味料として使われています。また、肝機能改善作用,抗ウイルス作用,抗アレルギー作用など様々な薬効を示し、最近では、メタボリック症候群の予防に効果的な食品としても注目されています。
 日本の理研植物科学研究センター等の研究チームは、このグリチルリチンの合成に関わっている遺伝子を見つけたことを報告しました。

グリチルリチンはカンゾウの地下部の組織の主要な成分

 カンゾウは、一般用漢方薬の70%以上に使われており,最も人気のある漢方薬の原料といっても過言ではありません。マメ科の多年草で,その肥大した根や地下茎に様々な薬効を示すグリチルリチンを含んでいます。これまでにグリチルリチンは主にカンゾウの地下部の組織で作られていることがわかっていたのですが、その仕組みについては謎でした。

2つの合成遺伝子を発見

 研究グループは、まずカンゾウの地下茎で働いている遺伝子を網羅的に調査し、その中から、根や地下茎等の地下部の組織でよく働いている5つの遺伝子を選抜しました。 この5つの遺伝子の機能を調べたところ、この中の1つの遺伝子がグリチルリチンの合成に関わることを明らかにしました。研究グループは、さらに研究を発展させ、この遺伝子の発見から3年後には、新たにもう一つの合成遺伝子を発見しました。

新たに動き出したビジネス

 今回の研究で、「グリチルリチン」の合成に関わる遺伝子が発見されたことで、この遺伝子を利用した工業生産への応用が期待されます。
 一方で、カンゾウそのものを国内で安定供給するための動きもあります。漢方薬の原料の中で人気者のカンゾウですが、国内使用量の100%を中国やオーストラリアからの輸入に頼っています。近年では、野生のカンゾウの乱獲等による種の絶滅が深刻な問題となっています。 秋田県内では、休耕田を活用して漢方薬原料の薬用植物を栽培する動きが広がっているようです。また、大手ゼネコンの鹿島は、カンゾウの水耕栽培に成功しており、新たなビジネスモデル化を模索しているようです。近い将来、国産のカンゾウから漢方薬が作られる日は思ったよりも早くやってくるかもしれません。


参考文献

Seki H et al. Licorice beta-amyrin 11-oxidase, a cytochrome P450 with a key role in the biosynthesis of the triterpene sweetener glycyrrhizin.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Sep 16;105(37):14204-9. doi: 10.1073/pnas.0803876105.

Seki H et al. Triterpene functional genomics in licorice for identification of CYP72A154 involved in the biosynthesis of glycyrrhizin.
Plant Cell. 2011 Nov;23(11):4112-23. doi: 10.1105/tpc.110.082685.