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ハエにも同性愛が存在した・・・?メスに目もくれなかったハエが見せた意外な行動

公開日:2014年12月8日
更新日:2018年6月15日

ハエの見せた意外な行動とは・・・? (写真:James Niland/クリエイティブ・コモンズ 表示 2.0 一般)


メスに興味を示さないオスのハエ「サトリ」

 東北大学の研究グループは、ハエの行動を研究するためにたくさんのハエを飼育しており、その中である非常に“変わった行動”をとるオスのハエの系統を発見しました。
その系統のハエはメスに求愛行動を示さず、交尾もしないという特徴がありました。ハエは本来、羽を振るわせる求愛のダンスをするのですが、この系統はメスに関心を持たず、そのような行動を一切とりませんでした。

 この姿を見た研究者たちは、このハエがまるで悟り(さとり)をひらいたお坊さんのようであったため、この系統のハエに「サトリ」という名をつけました。

後に判明した「サトリ」の意外な行動

 メスに興味をもたないこのハエは、はじめのうちこそ、まるで悟りを開いているようにも見えたのですが、観察を続けるうちに、ある意外な特徴を持つことが明らかになりました。

 なんと、サトリのオスはオスばかりの環境を作ってやるとオスにプロポーズをすることが明らかになったのです。メスに興味を示さないサトリは、悟りの境地を開いたお坊さんではありませんでした。サトリは同性愛者だったのです。

 この事象について詳細に調べてみると、サトリのオスでは、脳で働いているある遺伝子(Fru エフアールユー)が通常のオスとは違う遺伝子に変化していることが判明し、これがメス好きからオス好きへの好みの転換の原因であることが示唆されました。これまでに、性の指向性の決定には脳の神経細胞が関わっていると考えられていましたが、サトリの例も、その説を支持するものといえるでしょう。

 同性愛は、様々な生物種で存在する、決して珍しくない愛の形なのかもしれません。


参考文献

Ito H et al. Sexual orientation in Drosophila is altered by the satori mutation in the sex-determination gene fruitless that encodes a zinc finger protein with a BTB domain.
Proc Natl Acad Sci U S A. 1996; 93: 9687-92.