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「双子研究」で何がわかるの?☆マイマイ&トッピーと遺伝について学ぼう-第3回☆

公開日:2015年6月2日
更新日:2019年12月26日

 双子のマイマイとトッピーによる双子の科学のお話、最終回の今回は「双子研究」についてです。その前にふたご座の神話、どんなお話だかご存知ですか?


ふたご座のカストルとボルックス。神様の双子にもいろいろな違いがあったようです。(写真:Shutterstock.com)

 マイマイ&トッピーもついに最終回、第3回のテーマは「双子研究」です! これまでのお話を見ていない人はこちらからどうぞ!
「☆第1回☆そっくりな双子と似てない双子、いったい何が違うの?」
「☆第2回☆双子の違いの仕組み!-「エピジェネティクス」のお話」

 今日のマイマイとトッピーは二人でふたご座神話の本を読んでいます。そこにママが登場。マイマイとトッピーは前から疑問だった、「双子について、どうやって研究しているの?」ということについて聞くことにしました!

ふたご座の神話

 こんにちは、私たちはマイマイとトッピー!10歳の双子の女の子よ。今ね、一緒にふたご座の物語を読んでいたの。

 あのね、大神ゼウスの双子の男の子、カストルとボルックスは1つの卵から生まれたんだって。つまり、私たちと同じ一卵性ってことね。二人は仲良くすくすく育ち、強い青年になったの。

 ところがある日、牛を盗みに来た人と戦って、カストルは殺されてしまった!でもボルックスは頭に石が当たっても死ななかった。なぜかというとね、実は一卵性だったのに、カストルは人間、ボルックスは神様として生まれていたの。何て悲しい運命!(ちょっと変だなって思うけど、こういうところが物語りらしいところよね、うん。)

 これを深く悲しんだボルックスは、父親ゼウスに、「いつも一緒だったカストルと一緒にお墓に入りたいから、自分も神様から人間に変えて下さい」ってお願いしたんだって。この言葉に心を打たれたゼウスは、二人を「ふたご座」として夜空に上げ、永遠に一緒にいられるようにしたんだって。

 悲しいけれど、双子や親子の愛と絆が伝わる温かいお話だね。

ママ登場…「双子の神話」から「双子の科学」

 マイマイ、トッピー、何だかずいぶんしんみりムードね、一体どうしたの?あら、ギリシア神話を読んでいたのね。ん?ふたご座のお話?そうね、悲しいけれど、最後は二人一緒になれて良かったわね。

 ところで知ってる?このギリシア神話、紀元前15世紀頃に作られたと言われているのよ。つまり、今から3500年くらい前に考えられたお話ってこと。そんな昔から、双子は神秘的な存在として注目されてきたわけね。だけど、双子の違いが科学的に明らかにされ始めたのは、それから何千年も後だったのよ。

 「ママ!ずーっと思ってたんだけど、『双子の違い』って科学的にどうやって証明するの?

 私たちみたいな一卵性の双子で「同じところ」は、「遺伝子が同じところ」っていう風に、割とすんなり受け入れられるけど…。あ!もしかして、この前ママが言ってた『実際に双子をいっぱい集めて調べた研究』で調べるの?」

 「マイマイするどい、その通り!『双子研究』と言ってね、この方法で、双子の同じところや違うところが科学的にいろいろ明らかになってきたのよ。」

 「ママ、もっと教えて!」

「双子研究」の創始者「フランシス・ゴルトン」

フランシス・ゴルトン(1822-1911)

 世界で初めて「双子研究」を行ったのは、イギリスのフランシス・ゴルトンという人類学者よ。この人はね、「進化論」で有名なチャールズ・ダーウィンの親戚で、二人は「おじいさん」が同じ人なんですって。

 ゴルトンが双子研究を始めたきっかけはね、家系が才能に影響していると気付いたことだったの。例えば、ユウちゃんちはユウちゃんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも、みんなかけっこがいつも1着で、リレーの選手でしょ?これ、足が速い家系ってことよね。ゴルトン自身だって、親戚がダーウィンだし、これって明らかに科学者の家系よね?そういうことに気づいたってわけ。

 ゴルトンは、これに興味を持って、家系と才能の関係について研究を始めたのよ。その研究の中で、双子も実に興味深いと気がつき、調べていったの。何組もの双子に「どんな病気をしたか?」とか「どんなところが似ているか?」とか、いろいろなアンケートを取って、これは同じ、これは違う、という風に調べていったのよ。

 その結果をまとめて今からちょうど140年前の1875年に「遺伝の理論」という論文を発表したの。この中でゴルトンは、「双子を研究すれば、ある違いが『生まれか育ちか(nature and nurture)』、どっちの影響で起きているのかを見つけられる」と世界で初めて指摘したの。『生まれか育ちか』は、そのまま『遺伝か環境か』と言い換えられるわね。

 ちなみに、現代の遺伝学のきっかけとなった「メンデルの法則」が世に認められたのは1900年。なんとゴルトンは、それより先に遺伝について気づいていたとも言えるのよ。

「双子研究」で「遺伝と環境」の違いが次々明らかに!

 ところで双子って、言ってみれば「同い年のきょうだい」よね。一卵性でも二卵性でも、同じ日に生まれて、その日から同じ親、同じ家で、特に小さいうちはほとんど同じように育っていくでしょ?

 同じ日に別の家に生まれた二人は、家庭環境もそれ以外の環境も、がらりと違うわよね。でも、双子なら、他人よりも明らかに「環境」がそろってる。だから、遺伝子が全く同じ「一卵性の双子」をたくさん比べれば、環境が原因で生じた違いがはっきりと見えてくるってわけ。

 さらに、きょうだいレベルで遺伝子が大体半分くらい同じ「二卵性の双子」も併せて比較すれば、遺伝と環境がどのくらいの度合いで影響しているかまで分かっちゃう!
 
 「個性」にしても、「病気」にしても、「遺伝だけ」とか「環境だけ」ではなくて、「遺伝と環境の両方」に影響を受ける場合の方がずっと多いの。だから一卵性と二卵性、両方の双子で比較した研究は、人間の違いを調べていく上で、とても大きな手がかりを与えてくれるわけなのよ。

 どう?「遺伝と環境」の違いを調べたい科学者が、貴重な「双子研究」に注目する理由、とってもよく分かったでしょ~。

双子研究は未来に続く

 双子研究の論文はね、140年前の最初にゴルトンが論文を発表して以来、いろいろな研究分野にわたって実にたくさん発表されてきているのよ。どのくらいあるのか、ちょっと調べてみようか?(ママ、パソコンを持って来て、カチャカチャやって画面を表示しました。)

 「これはね、『パブメド(PubMed)』という有名な論文検索データベースの1つよ。」

PubMedで”twin study”(双子研究)で検索した結果。 2015年5月12日現在8809件。

「キャー英語だ!」

「何言ってるの、世界共通の論文はほとんど英語よ。だからちょっと我慢してね。いい?この検索欄に双子研究という意味の英語『twin study』と入力して、エンターを押すと…ほら、8809!」

「え、何が8809なの?」

「これまでに報告された双子研究の論文数よ!へー、9000近くあるのね!これってどのくらいの数なのか、ちょっと考えてみようか?例えば、マイマイとトッピーはまだ10歳だから、今日まで毎日1つずつ論文が出てきたとすると…ざっと、生まれる15年前から出続けていたって計算になるわね!パブメドに載ってない論文もあるし、『twin study』というキーワードで検索されない論文もあるから、実際はもっとたくさんあるのよ。どう?すごい数だって実感できた?」

マイマイとトッピー、将来の目標!?

「ひゃー!双子って珍しいイメージがあるけど、ずいぶん研究されてきたんだね!」

「うん、そうだね!これまでのたくさんの研究で、双子の性格、好み、運動能力、学力、音楽の才能、がんになりやすさ、指紋、とか、「☆第2回☆双子の違いの仕組み!-「エピジェネティクス」のお話」で教えてもらったような、いろいろな『エピジェネティック』な違いが科学的にわかってきたってことだったんだね!」

「それにしても私たち、だいぶ双子のことに詳しくなったね!日本にも、国のプロジェクトとして双子研究をしている機関がいくつかあるんだって。例えば、東京大学、慶応大学、大阪大学…。」

「そうだ!私たち、頑張って勉強して、将来「双子研究する双子」になれたらおもしろいかも!」

「それいい!ママー、私たち将来、双子の双子研究者目指すことにしたー!」

「こらこら、そんな未来のことより、この宿題のバッテンのところ、今すぐもう一回やり直してちょうだい!」

「はあ~い・・・」

(完)

<ためになる!おさらいクイズ>

 次のうち、「双子研究」でわかるのはどれ?

(1)遺伝と環境により生じる人間の違い
(2)マイマイとトッピーの名字や住所
(3)10個ある卵のうち、黄身が2つ入っている卵

正解は、もうわかりましたね、(1)です!

 3回にわたってお送りした、マイマイとトッピーのお話、楽しんでいただけましたか?遺伝子検査MYCODEでは、自分の遺伝子を調べることで、様々な体質や病気のリスクについて知ることが出来ます。双子のあなたもそうでないあなたも、この機会に是非MYCODEを試してみてはいかがでしょうか☆


監修者
認定遺伝カウンセラー 藤田和博先生
プロフィール:昭和大学藤が丘病院での先天異常、血液腫瘍の遺伝子・染色体検査の経験を生かし、現在は大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科教授として臨床検査学教育と研究に従事。