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遺伝子

古代人の謎からわかった、人類がたくましく生き延びた理由とは?

公開日:2015年3月26日
更新日:2018年6月18日

 数百万年もの昔、チンパンジーから進化した人類の祖先は現在のアフリカで生まれたとされています。1カ所で生まれた人間は、なぜこのように世界中で広く生きることが可能になったのでしょうか?


画像はイメージです。記事と直接の関係はありません。(写真:Charles R. Knight)

ドイツで発見された古代人の骨

 1856年、ドイツのネアンデルタール渓谷で見つかった古代人のものと思われる骨。「ネアンデルタール人」と名付けられた人々は多くの調査により、約40万年前頃からユーラシア大陸の広い範囲で生きていたこと、石器を使用し火を使っていたこと、死者を埋葬し花を供えていたことなどが明らかになり、高度な知力や私たちに近い感情を持っていたことが分かってきました。
 しかし、2万年前頃に何らかの理由で彼らはいなくなったそうです。ネアンデルタール人が進化してそのまま現代の人類となったとか、それとも彼らは別々に進化した人類集団で後から来た現代人の祖先と争って絶滅したか、など様々な説が考えられ、研究者の間で長い間論争が引き起こされていました。

最新の技術で骨の化石を遺伝子検査!

 1997年に報告されたミトコンドリアと呼ばれる細胞小器官DNAの解析では、ネアンデルタール人と現代人の遺伝情報はほとんど一致しなかったことから、彼らは我々の先祖ではないと判断されました。
 しかし、近年、全遺伝情報(ゲノム)の詳細な解析が可能になり、ネアンデルタール人の全ゲノム情報を分析した結果、数%程度ネアンデルタール人と共通の遺伝情報をもっている現代人がいることが分かりました。全く交流がなかったと思われていた説を覆す発見でした。

ネアンデルタール人の正体とは?

 現代人でネアンデルタール人の遺伝子を持っているのは、アフリカ人以外すべてといわれています。このことから、アフリカから北方に出てきた私たちの祖先は、先にアフリカから移住していたネアンデルタール人の祖先と出会い、ともに暮らしていた時代があったと考えられます。
 新たな遺伝子を手にいれた私たちの祖先は、それまでに持っていなかった病原菌への抵抗力や、免疫力を得ることができ、それは新たな新天地で生きのびるために有益となったのでしょう。

たくましく生き延びてきた人類

 一方でネアンデルタール人集団がなぜいなくなったのかについては、いまだはっきりしたことは明らかになっていません。しかし、ネアンデルタール人の遺伝子は、私たち日本人も含めた現代人の遺伝子の中に混ざっており、着実に引き継がれているのです。
 このように人類は交流を重ね、たとえ種としては絶滅したとしても自分の遺伝子をしぶとく残していくことで、柔軟に環境に適応する力をもち、長い年月をたくましく生き延びてきたのですね。
そのようなことが、人類が世界中で生き延びる力の一つとなったのかもしれません。

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参考文献

Callaway E et al. Ancient DNA reveals secrets of human history.
Nature. 2011 Aug 9;476(7359):136-7. doi: 10.1038/476136a.

Sankararaman S et al. The genomic landscape of Neanderthal ancestry in present-day humans.
Nature. 2014 Mar 20;507(7492):354-7. doi: 10.1038/nature12961. Epub 2014 Jan 29.

Prüfer K et al. The complete genome sequence of a Neanderthal from the Altai Mountains.
Nature. 2014 Jan 2;505(7481):43-9. doi: 10.1038/nature12886. Epub 2013 Dec 18.

Mendez FL et al. A haplotype at STAT2 Introgressed from neanderthals and serves as a candidate of positive selection in Papua New Guinea.
Am J Hum Genet. 2012 Aug 10;91(2):265-74. doi: 10.1016/j.ajhg.2012.06.015.