- 遺伝子
夢の毒なしジャガイモ?遺伝子研究が開く、新しい食の安全
“毒なしジャガイモ”が出来る日も夢ではない??
ジャガイモの毒成分を研究
ジャガイモの新芽や光が当たって緑色になった皮の部分に毒成分が含まれていることは、皆さん聞いたことがあるのではないでしょうか。
このジャガイモ中の毒成分(ステロイドグリコアルカロイドといいます)を食べると吐き気や下痢、おう吐、腹痛、頭痛、めまいなどの症状が現れ、ひどい時は死に至り、とても注意が必要です。
なんとか毒のない、安全なジャガイモを作れないかということで、ジャガイモの毒に関する研究は様々行われてきました。そんな中、理化学研究の斉藤教授らの研究グループは、この毒成分の生成に関わる遺伝子を発見したとして、2014年の米国科学雑誌「The Plant Cell」に発表しました。
毒を作る遺伝子を発見
ジャガイモの毒成分“ステロイドグリコアルカロイド”に含まれる物質は、コレステロールから作られていることが知られています。しかし、この毒成分がどのように合成されるのか、どのような遺伝子が関わっているのかは、これまで謎のままでした。
研究グループは、この毒成分の合成の秘密を探るべく、ジャガイモの膨大な遺伝子データベースを探索し、毒成分の合成に関わると予想される2つの遺伝子を見つけだし、それぞれ「SSR1」「SSR2」と名付けました。
遺伝子の働きを抑えると、毒成分の量が90%も減少!
これらの遺伝子のうち、特にSSR2と名づけられた遺伝子を働かないようにしたジャガイモでは、毒成分の量が通常のジャガイモより90%も減少していました。このSSR2遺伝子がジャガイモの毒成分の生成に関わっている事は、まず間違いがないことが推察されます。
この研究の成果は、毒成分の量を減らしたジャガイモの開発への応用が期待されます。今後研究が進むことによって、毒のないジャガイモを安心して食べられる日がくるかもしれません。
参考文献
Sawai S et al. Sterol side chain reductase 2 is a key enzyme in the biosynthesis of cholesterol, the common precursor of toxic steroidal glycoalkaloids in potato.
Plant Cell. 2014 Sep;26(9):3763-74. doi: 10.1105/tpc.114.130096.