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大人の病気と子供の病気、実は同じ遺伝子が原因??
年をとると、手足がブルブルと震える病気
パーキンソン病は、じっとしていたいのに手足がブルブル震えてしまったり、思うように動けなくなったりしてしまう難病です。若者にはほとんどない大人の病気で、まれに40歳前に発症する人もいますが、ほとんどが50歳過ぎに発症します。日本人の約1000人に1人がこの病気にかかると考えられています。
うちの子、落ち着きがなさすぎるのですが・・・
ADHD(注意欠如・多動性障害)を知っていますか?これは子供における発達障害で、日常生活や学習に支障を来たすほどに気が散りやすい、忘れっぽい、落ち着きが無いなどの状態がみられます。日本の小中学生の約3%程度がADHDであるとも言われています。
二つの病気の共通点
大人のパーキンソン病と子供のADHD。実は、どちらも脳で必要な「ドーパミン」という物質が不足することが原因となって起こることが知られています。脳で作られるドーパミンの量が減ってしまったり、脳の神経細胞「ニューロン」が、ドーパミンを脳の必要な部分まで正しく届けることができなくなったりして、症状が現れるのです。
遺伝子レベルでの研究
どちらもドーパミン不足が原因なのであれば、遺伝子に共通点があるのでは?と、研究者は考えました。そして2014年、英国や米国、デンマークの研究グループが、その共通点を見つけたという報告をしました。
研究グループは、パーキンソン病を患った91人を対象に、遺伝子を解析しました。
その結果、パーキンソン病とADHDの両方を患った人において、ニューロンの「DAT」とよばれるたんぱく質の遺伝子に2カ所、変異(正しく働かないように変化してしまった部分)があったということがわかりました(※)。
「DAT」は、「トランスポーター」と呼ばれる、使われなかったドーパミンを神経の中で再利用するための再取り込み口の一種です。このたんぱく質に変異があったことにより、ドーパミンの量を適切に保つことができなくなり、これらの病気が発症したのかもしれません。
神経の病気も、遺伝子の解明によってどんどん新たな事実がわかってきています。これまで別々と思われていた病気も、遺伝子レベルでの共通点が分かることにより、今後の医療の発展が期待されます。
監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。