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痩せたい!でも肥満遺伝子をもっているからあきらめたほうがいい?

公開日:2015年3月20日
更新日:2022年4月19日

肥満遺伝子と環境の関係は(写真:Shutterstock.com)

 肥満にはなりたくない!そう思っている方は多いのではないでしょうか。肥満のなりやすさは遺伝で決まっているともいわれています。では、肥満になりやすい遺伝子をもつ場合はあきらめるしかないのでしょうか?

 米国の研究グループは、肥満になりやすい遺伝子をもっていても環境によってはその遺伝子がはたらかなかったり、はたらきすぎたりすることがあると報告しました。

肥満遺伝子のはたらきは環境によって変わる?

 私たち人間をはじめとする多くの生物は、自分の親から遺伝子を受け継いで生まれてきます。私たちは、遺伝子に刻み込まれたプログラムに従って成長することがわかっています。その一方で、私たちは環境に応じた適応や変化を行うことができる能力ももっているのです。同じ遺伝子をもつはずの一卵性の双子が、全く同じ人間ではないのもそういったことの一つを表しているといえるかもしれません。

遺伝子の突然変異と肥満は生まれた時期と関係するか

 研究グループは、自然環境や社会環境などの変化によって、遺伝子からの影響の受けかたも変わるのではないかと考えていました。例えば、米国では20世紀後半に肥満が顕著に増加しましたが、その時にいきなり突然変異で肥満遺伝子が生じたのではなく、もともとあった遺伝子配列と何らかの環境変化が協調的にはたらいた可能性があると考えたのです。

 彼らは、米国で30年以上にわたり行われている、「フラミンガム心臓研究」のデータを用いて検証しました。肥満リスクが高くなるといわれている「FTO遺伝子」の突然変異と肥満度の指標(BMI)との関連性が、生まれた時期によって変化するかどうかを調べたのです。

ある年以降に生まれた人だけが肥満遺伝子がONに?

 その結果、肥満のリスクが高いFTO遺伝子のタイプとBMIの関連性が、ある時期に生まれた世代の前後で大きく変化していることがわかりました(※)。同じタイプの肥満リスク遺伝子をもっていても、1942年頃より後に生まれた人の方が肥満度が高い傾向があったのです。

 1942年といえば時代は第二次世界大戦中ですが、この頃から社会環境や食生活が現代的に変わってきたということなのかもしれません。研究はあくまでも統計の結果であり、肥満遺伝子がどのような環境の変化に関連したのかは明らかにはされていません。しかし少なくとも、現代人にとって肥満になりやすい遺伝子が、ある年代より前の環境では特に肥満になりやすい遺伝子としてはたらいていなかったということなのです。

 つまり、肥満遺伝子をもっていたとしても、環境次第で状況は変えられるはずであることを意味しているともいえるのではないでしょうか。


監修者

医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。

参考文献

Rosenquist JN, Cohort of birth modifies the association between FTO genotype and BMI., Proc Natl Acad Sci U S A.


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