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食事・生活

今更もうやめられない!?人間はどのくらい昔からお酒を飲んでいたのか

公開日:2015年1月15日
更新日:2022年4月19日

遺伝子研究で見えてきた、飲酒の起源?(写真:Shutterstock.com)

お酒の歴史はいつから始まる?

 お酒が大好き!という人、皆さんの中にもたくさんいるのではないでしょうか?では、我々人類がお酒を好きになり、飲み始めたのは一体いつからなのでしょうか?

 以前は、人間がお酒の成分であるアルコールを飲み始めたのは、はじめてお酒を作る方法が考え出された5千年ほど前からだろうと思われていましたが、米国の研究グループは、それよりももっと昔、1千万年前頃からすでにお酒を味わうことができたのではないか、という研究結果を報告しました。

アルコール分解酵素の遺伝子を解析

 はるか昔、人類の祖先はお酒に含まれるアルコールを分解できず、お酒を飲むと苦かったり、気持ち悪くなったりして嫌な気分になったと考えられます。お酒を飲んだときに、楽しい気分で飲むためには、アルコールを分解してくれる“酵素”を作る遺伝子(アルコール分解酵素遺伝子)をもつことが必要となります。

 研究グループは、人間とその祖先を同じとする霊長類の遺伝子を比較調査することで、我々の祖先がいつこのアルコール分解酵素遺伝子を獲得し、お酒を飲むことができるようになったのか、明らかにしようと考えました。

 いくつか存在するアルコール分解酵素遺伝子のうち、もっとも起源が古いと考えられるADH4という遺伝子について調査した結果、1000万年前に人間と分かれて別々に進化したと考えられるゴリラやチンパンジーに、なんと同じような遺伝子の特徴が確認できたのです(※)。つまり、我々の祖先がまだゴリラやチンパンジーと同じ共通祖先であった時代にこの遺伝子が生まれていたということになるのです。我々人間の祖先ははるか昔、猿のような樹上生活をやめ、地上に降りてきたころからお酒をたしなむことができたということです。なんと古い歴史なのでしょう!!

最初は木の下に落ちている熟した果物を分解するため

 生物は変化する食生活に適応し、様々な食物を消化する能力を身につけて進化してきたと考えられています。我々の祖先は、木から降りて地上で生活をし始めた頃から、木の上で採っていたよりもさらに熟した果物(天然のアルコールが豊富に含まれている)を食べるようになり、そのために次第にアルコールをおいしく味わうことができる能力が得られていったのだろうと研究グループは考えているのです。

 現代人は砂糖を多く摂取するようになったことで糖尿病、肥満をはじめとする多くの疾患にかかりますが、これは近年、我々の食生活が急激に変化し、体がまだ多くの砂糖を含む食生活に合わせて進化していないからだ、とも考えられているのです。

 進化という長いモノサシで考えれば、病気になることも別の視点で見つめることができますね。

 遺伝子検査MYCODEでは、アルコールを分解できるタイプの遺伝子をもっているかどうかについて調べることができます。

 自分の遺伝子を調べ、遥かな人類の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


監修者

医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。

参考文献

Carrigan MA, Hominids adapted to metabolize ethanol long before human-directed fermentation., Proc Natl Acad Sci U S A.