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運動は腸内細菌に良い影響を与える!?
健康に影響を与える腸内の微生物
私たちの腸内には数百種、百兆個に及ぶ多種・多様な細菌が住んでおり、それらは集合体を形成しています。
この細菌の塊は腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)または腸内フローラとよばれ、肥満やアレルギー、皮膚疾患、脳、神経系疾患など様々なにも影響を与えることがわかってきました。また、腸内にいる微生物の種類も重要で、微生物の多様性が少なくなると自閉症や胃腸の病気のリスクが高くなることが報告されています。
運動と腸内微生物との関連は?
これまで、食事や現代的なライフスタイルが腸内微生物と関連することがわかっていた一方で、運動との関連についてはよくわかっていませんでした。そこで、アイルランドのコーク大学の研究グループは、腸内微生物に関する運動と食事の効果を調べました。
トップアスリートの腸内を調べたところ・・・
研究グループが解析したのは、ラグビーの国代表の選手たち。明らかに一般の人の運動量や食事の内容が異なるために選ばれました。腸内微生物を同定するため、特定の遺伝子の配列を解読しました。
トップアスリートの腸内細菌の種類は豊富だった
最初にラガーマンと一般の人の血液検査の結果を比較したところ、激しい運動で上昇するクレアチンキナーゼの値に差があるだけでなく、ラガーマンでは炎症性マーカーが低く、代謝マーカーの値も良いことがわかりました。
腸内微生物の分析の結果、ラガーマンの腸内には、分類学上、22種の門分類にわかれる微生物が存在しており、一般の人より多様な微生物がいることがわかりました(※)。この微生物の種類は、タンパク質の消費量やクレアチンキナーゼの値が高くなると、増えることがわかりました。
今回の研究により、運動は腸内細菌の側面からも健康に良い効果を与えていることが示されました。一般の人が適度な運動をしたときも、ラガーマンと同じような結果となるのか気になるところです。
監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。
参考文献
※ Clarke SF, Exercise and associated dietary extremes impact on gut microbial diversity., Gut.