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【管理栄養士コラム】心筋梗塞の予防のためには、どのくらいの運動をすれば良いの?

公開日:2017年7月27日
更新日:2019年9月3日

管理栄養士による生活改善コラム、第七弾。心筋梗塞の予防法をご紹介します。


日々の運動習慣で心筋梗塞を予防しましょう。(写真:Shutterstock.com)

 あなたは、自分自身の活動量や運動習慣を把握されていらっしゃいますか? また、その運動の“量や質”を振り返ったことはありますか?今回は「心筋梗塞の予防」をテーマに、運動習慣について考えてみたいと思います。

 心筋梗塞は、動脈硬化により心臓の血管に血液の固まりができて血管が詰まり、血液が流れなくなることで心筋の細胞が壊れてしまう病気です(※1)。心筋梗塞の発症には、日頃の運動量と共に“運動能力”が大きく関与しており、運動能力が普通以下の人は、発症リスクが2.2倍高かったと報告されています(※2)。運動能力は、元々高い人でも運動習慣がないと低下していきますし、元々低めの方であっても運動を継続することで普通レベルを保つことができます。運動不足で現在の体力に自信の無い方は、これを機に運動習慣を見直していきましょう。

*以下の内容は、通院服薬中では無い方への病気予防・健康増進を目的としています。治療中の方は、必ず主治医の指示にしたがってください。

1. 病気予防のための運動とは?

 運動に、病気を予防する効果があることは良く知られています。では、どのような運動をどれぐらい実施すると良いのでしょうか。運動の効果は、「総運動量=運動の強度×運動時間×頻度」が関係しています(※3)。各病気の予防ガイドラインを見てみると、病気ごとに少しずつ違いがあります。図1をご覧ください。

図1. 病気予防のための運動強度とその量(※2, 4~10)

 運動強度は一般的に低強度、中強度、高強度に分類(表1)されますが、今回のテーマである心筋梗塞の予防には、中等度~高強度の運動強度が推奨されています。運動時間や頻度を加えると、速歩のような“ややきついと感じる運動”では少なくとも30分×週5回(または75分/週)、ランニングのような“きついと感じる”強度では少なくとも20分×週3回(または75分/週)が目安とされています(※2)。

表1. 運動強度の分類と生活活動・運動例(※2)

※苦しくてもう強度を上げられない全力の強度(最大酸素摂取量)を100%とした際の割合

2. 運動レベルの指標として「心拍数」の活用を

 運動する際には、個人差(体力レベル、運動への慣れ、病歴、その日の体調等)を考慮することがとても重要です。これらの個人差を配慮した運動レベルの指標は先程ご紹介した自覚的運動強度(表1)ですが、「ややきつい」などの主観的な指標となります。そこで、自分が「ややきつい」運動ができているかの指標として参考にしたいのが「心拍数(脈拍)」です。以下Aさんの例を参考に、あなたにとっての心筋梗塞の予防を目指した心拍数を計算してみましょう。

●心筋梗塞予防のための目標心拍数の計算
 Aさん(45歳)の「ややきつい(全力で運動したときの40%)」運動強度

①安静時心拍数
 →図2を参考に10秒間心拍数(脈拍)を測定し、1分当たりに計算
  Aさん:13拍/10秒×6倍=78拍/分

図2. 心拍数(脈拍)の測定

②最大心拍数
 →220-年齢
  Aさん:220-45歳=175拍/分

③目標心拍数「ややきつい(全力で運動したときの40%)」
 →(②最大心拍数-①安静時心拍数)×目標運動強度+①安静時心拍数
  Aさん:(175-78)×40%+78=117拍/分

Aさんの心筋梗塞予防のための運動目標は、117拍/分の強度で少なくとも1日合計30分以上(分けての実施でも良い)の運動習慣を目指すということになります。

3. 急に運動で強度を上げるのではなく、まずは日常生活で工夫を

 近年ウェアラブル端末(図3:心拍数が測定可能)が身近になり、MY健康サポートのカウンセリングに来られた多くの方が身につけていらっしゃいます。一方で、心拍数の測定をどのように活用したら良いかがわからないとおっしゃる方がほとんどです。

 まずは図4を参考に、日常生活の心拍数を計測してみましょう。ご自身の傾向がつかめたら目標心拍数を意識しながら活動量と質を高めていきましょう。
(端末をお持ちではない方は、階段を登った直後に心拍数を10秒間測定し、それを6倍した数値を参考にしてみてください。)

 ちなみに、日常生活では、心拍数は100拍/分以上にはなりにくいため、体力の向上には意識して運動することが必要です。

図3. ウェアラブル端末イメージ

図4. 日常生活で活動量と活動強度を高める工夫

4. 最後に

 今の時期はとても気温が高く、発汗による脱水で心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高まります。水筒を持ち歩くなど、水分補給をいつも以上に積極的にとるようにしましょう。

 一方で暑いからといってまったく動かない日々を過ごすと、数週間後から体力が低下し始めます。朝や夕方の比較的涼しい時間を有効活用したり、週末に森林浴に出かけたり、水泳に取り組むのも良いでしょう。日々の気候とご自身の体力を考慮しつつ、計画を立ててみましょう。

あなたの心筋梗塞のかかりやすさは?

 心筋梗塞の発症には遺伝要因と環境要因の両方が関与していますが、遺伝要因が50~60%、環境要因が40~50%と考えられています(※11)。ご自分の遺伝子検査結果を、この機会にぜひ復習してみましょう。
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参考文献
※1. 厚生労働省, e-ヘルスネット「狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)」
※2. 日本循環器学会, 虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)
※3. 日本循環器学会, 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)
※4. 日本糖尿病学会, 糖尿病ガイドライン2016, 南江堂
※5. 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会, 高血圧治療ガイドライン2014, 日本高血圧学会
※6. 日本神経学会, 認知症疾患治療ガイドライン2010 コンパクト版2012, 医学書院
※7. 日本乳癌学会, 科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン1治療編2015年版, 金原出版株式会社
※8. 国立がん研究センター社会と健康研究センター, 予防研究グループ「身体活動量と大腸がん罹患との関連について」
※9. 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会, 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版, メディカルレビュー社
※10. 日本動脈硬化学会, 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療ガイド2013年版
※11. Dai X, Genetics of coronary artery disease and myocardial infarction., World J Cardiol.