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【管理栄養士コラム】食品の焦げを食べるとがんになるって本当!?

2019年06月02日 09時00分

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フライドポテト、ついつい食べてしまいますよね(写真:Shutterstock.com)

 「焦げを食べるとがんになる可能性が・・・」と聞いたことはありませんか?テレビなどで取り上げられることもあり、なんとなく焦げに対して、あまり良くないイメージがあるのではないでしょうか。

 がんの発症に関係している可能性がある焦げの成分は2種類あり、じゃがいもや野菜、パンなどの焦げに含まれる「アクリルアミド」と、肉や魚の焦げに含まれる「ヘテロサイクリックアミン」が挙げられています(※1)。この2つを比べると、アクリルアミドの方がヘテロサイクリックアミンよりも発がんへの影響が高いといわれています。今回はアクリルアミドについてご紹介させていただきます。

アクリルアミドとは

 食品を加熱すると、風味が増したり保存性を高めるなど、プラスの効果を発する成分が生じる一方で、健康に悪影響を与える成分も同時に生成されるといわれています。アクリルアミドは、食品を加熱した際に生成される有害な(発がん性)物質のひとつです。

 食品安全委員会は、食品から摂取するアクリルアミドの発がんリスクについて、「ヒトにおける健康影響は明確ではないが、動物実験の結果、公衆衛生上の観点から懸念がないとは言えないため、引き続き合理的に達成可能な範囲で、できる限りアクリルアミドの低減に努める必要がある」と結論づけています(※2)。国際がん研究機関による発がん性の分類でも、「おそらく発がん性がある物質」に分類されています(※3)。つまり、私達の健康に及ぼす影響の程度は明確にはなっていませんが、害がないとは言えないため、出来る限り摂取しない方が良さそうということです。

 アクリルアミドが発がんに関与しているメカニズムとして、アクリルアミドが細胞の中の遺伝子を傷つける可能性があるからだと考えられています(※4)。

私達はアクリルアミドをどのようなものから摂取しているのか?

 図1をご覧ください。食品安全委員会の調査によると、私達が日頃摂取しているアクリルアミドの56%は、高温で調理した野菜から、続いてコーヒーやお茶など焙煎した食品から抽出した飲料(17%)、ポテトチップスやせんべいなどの菓子類(16%)と推定されています(※5)。

 アクリルアミドは、アスパラギンというアミノ酸と、果糖やブドウ糖などの糖類(還元糖)が多く含まれている食品を、120℃以上の高温で加熱することにより生成されます。アクリルアミドに変わる成分であるアスパラギンを多く含む食品(野菜やいも類)を表1に示します(※6)。

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図1. 日本人のアクリルアミド推定摂取割合(※5)

①高温調理した野菜:フライドポテト、炒めたもやし・たまねぎ・れんこん・キャベツなど
②焙煎したものから抽出した飲料:コーヒー、緑茶、烏龍茶、麦茶など
③菓子類・糖類:ポテトチップス、クッキー、せんべいなど
④穀類:トーストしたパンなど

表1. 野菜類といも類のアスパラギン含有量(※6)

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*もやしは保存期間が長くなるほどアスパラギンの量が増加

日常取り組める工夫

 アクリルアミドが含まれている食品は、私達の食生活に欠かせないものばかりです。例えば、図1に示しましたが、高温で調理するとリスクにつながる“野菜”は、アクリルアミドの摂取源となりえますが、一方でがんの予防に欠かせない栄養素もたくさん含まれています。アクリルアミドが生成しやすい食材を排除するのではなく、がんを予防するために必要な栄養素をとりつつ、有害なアクリルアミドを生成させないための調理法や保存方法を工夫することが重要です(※7)。

【調理の準備段階での工夫】
①じゃがいもは冷蔵ではなく常温で保存する
 じゃがいもを長期間冷蔵保存すると、アクリルアミドに変わる成分の還元糖が増加するといわれています。常温で保存していたじゃがいもと冷蔵していたじゃがいもを同じように炒めたところ、冷蔵していたじゃがいもの方がアクリルアミドの生成量が2倍多かったとされています。

 じゃがいもは常温で保存するか、もしくは冷蔵したじゃがいもを使用状況に応じて常温に戻して使うようにしましょう。ちなみに、1週間程度常温に戻すことで、増加した還元糖が減少するといわれています(※7)。

②「水にさらす」野菜を選ぶ
 食材を水にさらすことにより、アクリルアミドに変わる成分であるアスパラギンや還元糖が洗い流されるため、アクリルアミドが生成されにくくなります(※7)。表1に示した通り、アスパラギンは、ごぼう、じゃがいも、たけのこ、アスパラガス、もやしなどに多く含まれています。ごぼうやじゃがいも、たけのこなどはアク抜きとしても水にさらすことが推奨されていますが、レタスやキャベツなどの葉物野菜は、水にさらすことによってビタミンやミネラルが損失します。アクリルアミドは過熱により生成されますので、フライドポテトのような高温で加熱する調理法の場合は、しっかり食材を流水にさらし、サラダや和え物など過熱しない調理法の場合は、サッと野菜の汚れを落とす程度にするなど、用途に合わせるようにしましょう。

【過熱調理の工夫】
①調理法は「煮る・蒸す・ゆでる」がおすすめ
 煮る・蒸す・ゆでるなどの“水”を利用した加熱法は、食材の温度が120℃を超えることがないため、アクリルアミドはほとんど生成しないといわれています。“炒める”は、アクリルアミドが生成しやすいのですが、炒める時間を短くし、残りの過熱は蒸し煮で仕上げるなどの工夫は効果的だとされています。電子レンジでの加熱も、アクリルアミドが生成されにくいためおすすめです(※7)。

②「焼く・揚げる・炒める」は加熱時間を短くする
 焼く・揚げる・炒めるなどの加熱法は、食材に熱が伝わりやすく、温度が高くなるため、アクリルアミドが生成しやすいとされています。また、調理の仕上がり状態によってアクリルアミドの生成量が異なり、加熱時間が長く、加熱温度が高くなるほど増加します。図2に、じゃがいもの素揚げ(フライドポテト)を例にあげてみました。揚げ色がほとんどないフライドポテトと加熱時間が長く全体的に揚げ色がついたフライドポテトを比べると、揚げ色が強いフライドポテトの方が、アクリルアミド濃度が約18倍にもなることが報告されています(※8)。焦げた料理はもちろんですが、日常的に頻度高く食べる料理は、“こんがり焼く”よりも、“軽く焼く”ようにしましょう。

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図2. 冷凍フライドポテトの揚げ加減とアクリルアミド濃度の関係(※8)


嗜好品の摂取頻度とその量

 日常的に、ポテトチップスやクッキーなどの揚げ菓子、焼き菓子類をたくさん食べている方や、これらの菓子類を食事と置き換えてしまっている方は、これを機に1日の摂取量とその頻度を見直してみましょう。

【アクリルアミドのまとめ】
・アクリルアミドが私達の健康に与える影響はまだ明確ではありませんが、害がないとは言い切れないため摂取量を減らす工夫は必要です。

・アクリルアミドを生成しやすい食品でも、がん発症予防に必要な栄養素を含む食品は多くあります。よって、生成しやすい食品を避けるのではなく、保存方法や調理法を意識し、アクリルアミドを生成させない工夫が大切です。