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食事・生活

知っているようで知らない乳酸菌、健康に良い理由とは?【MYCODEセミナーレポート】

2020年04月02日 09時00分

乳酸菌に関するMYCODEセミナーを開催しました(写真:Shutterstock.com)

 最先端の遺伝子研究や話題の健康トピックに関して、第一線で活躍する講師陣をお招きして開催する「MYCODEセミナー」。2020年2月は、乳酸菌が免疫に与える影響について、キリンホールディングス株式会社から、研究部門で乳酸菌の研究をリードされてきた藤原大介先生と森田悠治先生をお招きして、特にユニークな機能を持つ2つの乳酸菌について、最新の研究成果をお話しいただきました。


講師:藤原 大介 先生
キリンホールディングス株式会社ヘルスサイエンス事業部主幹、農学博士。東京大学大学院農学生命科学研究科を卒業後、キリンビール・基盤技術研究所に入社し、基礎研究に従事。専門は免疫学・微生物学。

講師:森田 悠治 先生
キリンホールディングス株式会社健康技術研究所主任研究員、農学博士。東京大学大学院農学生命科学研究科を卒業後、キリンビール・フロンティア技術研究所に入社し、基礎研究に従事。専門は感覚器研究。

<プラズマ乳酸菌の研究開発  講師:藤原大介先生>

 まずは、乳酸菌が私たちの健康にどのように関わっているのか、乳酸菌についての概要と、キリンホールディングス株式会社(以下、キリン)で研究が進められているプラズマ乳酸菌について、藤原大介先生からご紹介いただきました。

講義される藤原先生

知っているようで知らない乳酸菌

 乳酸菌とは、ヨーグルト、チーズ、漬物などに含まれる「乳酸をつくる菌」の総称で、現在400種類ほどあると言われています。また、乳酸菌は、その形状から、桿状(棒状)の菌と球状の菌が存在します。

 乳酸菌は、世界で最も研究されている食品材料です。これまでの研究から、様々な健康機能が明らかになってきました。従来は、生きた乳酸菌の効果について調べられてきましたが、近年は死んだ菌の状態でも効果があることが分かってきました。このように、菌の状態によって、以下の2つの作用が知られています。

・プロバイオティクス:生きた菌(生菌)として作用
・パラプロバイオティクス:死んだ菌(死菌)でも作用

 ただし、いずれの場合も乳酸菌が体内で定着することはなく、最終的には排出されてしまうため、その効果を持続させるためには、定期的な乳酸菌の摂取が必要となります(※1)。

プロバイオティクスとは?

 口から摂取した乳酸菌は、胃酸により大部分が死滅するものの、ごく一部が大腸まで生きて到達し、大腸内で乳酸・有機酸、抗菌物質、GABAといった有用物質を作り出しながら、腸内フローラ(腸内細菌叢)を良好に保ちます(図1)。

 これまで知られている効果としては、おなかの調子を整える、抗肥満、ピロリ菌の活動抑制、口腔内フローラ(口腔内細菌叢)の改善などがあります。

図1. プロバイオティクスの作用メカニズム

パラプロバイオティクスとは?

 プロバイオティクスが従来からある古典的な研究だとすれば、近年その作用が明らかになり、注目を集めているのが、パラプロバイオティクスです。摂取し、小腸に到達した乳酸菌は、小腸内の免疫細胞に取り込まれ、腸管内の免疫を活性化します(図2)。免疫と聞くと、血液を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、私たちの健康維持に重要な免疫機能は、その半分が腸内に存在することが近年明らかになってきました。

図2. パラプロバイオティクスの作用メカニズム

プラズマ乳酸菌の発見

 全ての乳酸菌は、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)と言われる免疫細胞を活性化することが知られていました。しかし、ウイルスに対する免疫機構では、NK細胞よりもさらに上流に「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」と呼ばれる免疫の司令塔となる細胞が存在しており、その下に、NK細胞やキラーT細胞など、様々な実行部隊の細胞が存在しています(※2)(図3)。

 それまでpDCを活性化できる乳酸菌はないと報告されていた中、キリンでは「もしそのような乳酸菌を見つけ、ウイルスに対する免疫を直接活性化できれば、安全かつ有効な予防法になるのでは」と考えました。そこで、世界中から乳酸菌を取り寄せ、探索を行ったところ、世界で初めて(*)pDCを直接活性化するユニークな乳酸菌(Lactococcus lactis Plasma)を発見し、「プラズマ乳酸菌」と名付けて、2012年に論文発表しました(※3)。

図3. 一般的な乳酸菌とプラズマ乳酸菌の違い(※2)

 pDCにプラズマ乳酸菌を加えると、他の乳酸菌では見られない抗ウイルス因子(インターフェロンα)が多く作り出されていました(※3)。さらに、本来ウイルスが来た時にのみ活性化するpDCが、プラズマ乳酸菌を加えることで活性化することが分かりました(※2)(図4)。つまり、プラズマ乳酸菌は、一般的な乳酸菌では見られない免疫細胞全体の活性化を起こしていることが示唆されます(図3)。

 では、プラズマ乳酸菌には具体的にどんな作用があるのでしょうか。最近の研究成果の一部をご紹介いただきました。

図4. プラズマ乳酸菌により活性化したプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)(※2)

研究成果①:風邪・インフルエンザなどウイルスに対する働き

 はじめに、マウスにおいて、インフルエンザウイルスに対するプラズマ乳酸菌の作用を調べました。普通食のマウスは、感染10日目で全個体が死亡したのに対し、2週間予防的にプラズマ乳酸菌を投与したマウスでは約70%が生存していました。また、肺炎症状も劇的に改善していることが分かりました(※4)。さらに、マウスでは、インフルエンザだけでなく、デング熱を発症するデングウイルスへの効果も分かってきました(※5)。

 一方、ヒトでは、インフルエンザの罹患率が減少すること(※6)、咳や熱っぽさといった風邪・インフルエンザの症状が軽減することが明らかになりました(※7)(図5)。つまり、プラズマ乳酸菌は、免疫の司令塔を活性化することで、強い感染防御機能があることが分かりました。

図5. ヒトにおけるインフルエンザ・風邪に対する効果

 では、どうやって口から摂取した乳酸菌が咳に関わる肺で働くようになるのでしょうか。小腸で吸収されたプラズマ乳酸菌は、①pDCを活性化し、それが血流によって運ばれ、直接肺に到達する、あるいは、②pDCによって作られた抗ウイルス因子(インターフェロンα)が肺へ運ばれる、と考えられています。

研究成果②:エイジング・肌に対する働き

 マウス(5週齢~82週齢)に毎日普通食にプラズマ乳酸菌を加えて与え続けた結果、普通食のみのマウスでは毛が抜け、老衰していたのに比べ、プラズマ乳酸菌を与えられたマウスは毛並みも良く、老衰の特徴が見受けられませんでした。

 特に肌への効果が顕著で、普通食のマウスでは老化により表皮が薄くなり、真皮のコラーゲンの脱落も起こっているところ、プラズマ乳酸菌を摂取したマウスでは表皮も厚く、真皮のコラーゲンも維持されていることが分かりました(※8)(図6)。

図6. マウスの肌におけるプラズマ乳酸菌の効果

 さらに、ヒトでもMYCODE会員にご協力いただいた臨床研究で、プラズマ乳酸菌を8週間摂取したグループとそうでないグループの2群に分けて肌の状態を比較しました。その結果、摂取していないグループでは、肌フローラ(肌細菌叢)のバランスが崩れ、肌の劣化や不調につながる恐れが考えられましたが、プラズマ乳酸菌を摂取したグループでは、肌フローラのバランスが維持されていることが分かりました。この結果は、プラズマ乳酸菌摂取で、肌が安定に保たれることを示唆しています。

 MYCODE会員の皆様は、「プラズマ乳酸菌の肌への効果 研究成果レポート」でキリンとの共同研究の詳細をご覧いただけます。


<乳酸菌は目にも良い!~目の疲れの原因と対策~  講師:森田悠治先生>

 次に、プラズマ乳酸菌とはまた別の、KW乳酸菌が目に与える効果について、森田悠治先生にご紹介いただきました。

講義される森田先生

目は大きな健康課題のひとつ

 スマートフォンやパソコンが普及し、目を使う機会は増えてきました。一方で、「人生100年」とも言われる現代において、目を使う期間というのも長くなっています。つまり、いつまでも自分らしく過ごすためには、健康な目を維持し続けることがより重要になっており、目というのは大きな健康課題になっています。

ブルーライトの影響とは?

 その中で、注目されている1つがブルーライトの影響です。ブルーライトは380~500nmの波長を持つ青色光で、可視光の中でも最も波長が短く、強いエネルギーを持ちます。太陽光などの自然光の中にも含まれていますが、スマートフォンやパソコンなどの人工の光に多く含まれており、近年特に影響が大きくなっていると言われております。外から入ってくる光は、基本的に目の前側(角膜や水晶体等)でブロックされ、目の内部には届きにくいと言われておりますが、ブルーライトは強いエネルギーがあるため、目の奥にある網膜まで到達し、ダメージを与えてしまう可能性が指摘されています(図7)。

 過度のブルーライトによって起こる目の症状のひとつは、目がチカチカする、目がかすむといった目の疲れです。さらに、目が疲れてくると、目だけでなく、肩や腰が凝る、物事に集中できなくなる、体内時計が乱れて眠れない、眠りが浅くなる、目の老化が進むなどのデメリットを引き起こします。

 近年の研究から、目はブルーライトなどによって日々ダメージが蓄積されていること、さらに目のダメージには過剰な免疫(炎症)も関わっていることが分かってきました。そこで、キリンでは免疫を調節してダメージを押さえることで目の疲れを解決できないか、研究が進められてきました。

図7. ブルーライトの作用

免疫は目でも機能

 ブルーライトが目に届くと、まずその刺激に対して反応が起こります。次に、過剰な反応によるダメージ修復が起こることが分かってきました。一方、ダメージを修復する免疫細胞を強力に活性化できる乳酸菌として、KW乳酸菌(Lactobacillus paracasei KW3110)という乳酸菌が見つかりました。このKW乳酸菌は、炎症を鎮めるインターロイキン10の産生を誘導することができるため、顕著にダメージ修復機能があることが分かりました。さらに、本来過剰なブルーライトを当てると、ヒトの網膜の培養細胞にダメージが起こり、細胞が死んでしまうところ、KW乳酸菌による免疫の影響を加えて評価した場合では、その細胞の死を抑えられることが分かりました(※9)。

 次に、加齢における効果について調べたところ、標準食のみでマウスを飼育した場合には、加齢で網膜の視細胞が死んでしまい、層が薄く、半減しているのに対し、標準食にKW乳酸菌を加えた場合にはその細胞死が抑えられ、細胞の層が維持されていることが分かりました。さらに、視細胞だけでなく、網膜神経節細胞の細胞死も抑えられていることが分かり、KW乳酸菌が目の老化を抑える可能性を示唆していました(※10)(図8)。

 さらに、ヒトでの検証試験については、タブレットでの画面を見る作業前後での目の疲労感が有意に軽減していることが分かりました(※9)。

図8. マウスでのKW乳酸菌の視細胞保護効果

目に良いとされる他のものとの違いは?

 例えば、目薬はもちろん目に有効ではありますが、目は元々異物を身体の内部に入れないような仕組みがあり、基本的に角膜を中心とした目の外側のケアにとどまると言われています。

 また、「目に良い」と聞くと、ブルーベリーを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。ブルーベリーに含まれるアントシアニンという色素は、体の中の酸化を抑える抗酸化作用があります。一方、これまでにヒトでの臨床試験においてブルーベリーで効果が認められているのは、主に「ピント調節」能力と呼ばれる点になりますが、これは目の前面(毛様体)における効果であると考えられます。

 目薬もブルーベリーも目の前面には効果があるものの、網膜のように目の後ろ側の負担を根本から解決するためには、体の内側からケアする必要があるのです。その点、KW乳酸菌は、ダメージケア能力が高く、全く新しいアイケアの手段として期待されます。

会場の様子

 その後、MYCODE会員の皆様にもご協力いただいた目に関する共同研究の成果も、当社研究担当者よりご報告させていただきました。MYCODE Researchでは、会員の皆様のご協力を得て、様々な研究を行っております。新たな研究への参加募集についてはメール等でもご案内しておりますので、チェックしてみてください。

 また、当日は会員の皆様から多くの質問も寄せられ、乳酸菌や免疫に対する関心の高さが伺えました。

 MYCODEセミナーは、今後も開催予定です。会員の皆様にはメールで開催予定をお知らせしておりますが、セミナー予定ページもぜひご活用ください。



* 免疫の司令塔の一つのプラズマサイトトイド樹状細胞を直接活性化することが確認された乳酸菌(PubMed及び医学中央雑誌Webを用いて、キーワード「乳酸菌×プラズマサイトイド樹状細胞」:ナレッジワイヤ調べ(※11))



参考文献
※1. 厚生労働省, e-ヘルスネット「 腸内細菌と健康」
※2. キリンホールディングス株式会社, プラズマ乳酸菌研究レポート
※3. Jounai K, Spherical lactic acid bacteria activate plasmacytoid dendritic cells immunomodulatory function via TLR9-dependent crosstalk with myeloid dendritic cells., PLoS One.
※4. Jounai K, Oral administration of Lactococcus lactis subsp. lactis JCM5805 enhances lung immune response resulting in protection from murine parainfluenza virus infection., PLoS One.
※5. Suzuki H., Administration of plasmacytoid dendritic cell-stimulative lactic acid bacteria is effective against dengue virus infection in mice., Int J Mol Med.
※6. Sakata K, Preventive effect of Lactococcus lactis subsp.lactis JCM 5805 yogurt intake on influenza infection among school children., Health.
※7. Sugimura T, Effects of oral intake of plasmacytoid dendritic cells-stimulative lactic acid bacterial strain on pathogenesis of influenza-like illness and immunological response to influenza virus., Br J Nutr.
※8. Sugimura T, Long-term administration of pDC-Stimulative Lactococcus lactis strain decelerates senescence and prolongs the lifespan of mice., Int Immunopharmacol.
※9. Morita Y, Effect of Heat-Killed Lactobacillus paracasei KW3110 Ingestion on Ocular Disorders Caused by Visual Display Terminal (VDT) Loads: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Parallel-Group Study., Nutrients.
※10. Morita Y, Long-term intake of Lactobacillus paracasei KW3110 prevents age-related chronic inflammation and retinal cell loss in physiologically aged mice., Aging.
※11. キリンホールディングス株式会社, プラズマ乳酸菌研究レポート「マンガで解説 免疫細胞のしくみ」

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