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食事・生活

【管理栄養士コラム】肥満・アルツハイマー型認知症のリスクを高める睡眠不足、あなたは大丈夫?

公開日:2019年1月30日

睡眠不足と生活習慣病の関係についてご存知ですか?(写真:Shutterstock.com)

 肥満や、糖尿病、高血圧などの生活習慣病を発症している人は年々増加していますが、これらに睡眠不足が関与していることはご存知でしょうか?また、睡眠不足は、アルツハイマー型認知症の発症にも関わっていることがわかってきました。今回は、睡眠不足が、肥満や生活習慣病、アルツハイマー型認知症にどのように関わっているのか、なぜ睡眠不足を改善しなければならないのかをご紹介します。

1. 睡眠時間が5時間以下だと生活習慣病になりやすい

 さまざまな研究から、睡眠時間が5時間以下の人は、肥満、糖尿病、高血圧になりやすいとされており、中高年だけではなく小学生にもあてはまるといわれています(※1)。また、それぞれの生活習慣病や睡眠障害が関係しあうことにより、悪循環に陥ります(図1)。

図1. 不眠・睡眠不足と生活習慣病の悪循環(※2)

1 糖尿病と不眠
 糖尿病患者の60%に不眠の症状がみられたとされています。徹夜明けは血糖値が上昇することから、不眠や睡眠不足は糖尿病の発症に影響していると考えられています。

2 高血圧・無呼吸症候群と不眠
 高血圧患者では、40%に不眠の症状がみられたとされています。不眠状態は、交感神経が緊張し、血管を収縮させるため、高血圧の発症に影響すると考えられています。また、睡眠時無呼吸症候群の患者は、呼吸が止まることで体内の酸素濃度が低下します。その酸素不足を補うために心臓の働きが強まり、高血圧につながると考えられています。

3 肥満と睡眠不足
 睡眠不足が続くと肥満になりやすくなる原因のひとつに、ホルモンの影響が挙げられます。睡眠不足になると、食欲を抑えるホルモン「レプチン」の分泌が減少し、逆に食欲を高めるホルモン「グレリン」の分泌が増えるといわれています(※1)。ある研究では、5時間睡眠の人は、8時間睡眠の人と比べると、レプチンの量が15.5%少なく、グレリンの量が14.9%多い可能性があると報告されています(※3)。つまり、 睡眠不足の人は、ホルモンの影響で食欲のコントロールが難しくなり、体重増加につながっているのではないかと考えられます。

 私達は、自分の意志でホルモンの分泌量を変えることはできません。また、「たくさん食べてしまった・・・、食欲を抑えられなかった・・・。」と、自己嫌悪が加わると、体重増加の負のスパイラルに陥ります。まずは、食欲に関わる“睡眠時間”を見直してみてはいかがでしょうか。

2. アルツハイマー型認知症の原因物質  ~睡眠不足が続くと長年かけて蓄積~

 睡眠時間や睡眠の質が、アルツハイマー型認知症のなりやすさと関係していることがわかってきました。

 睡眠の役割はたくさんありますが、そのひとつに「脳にたまっている老廃物の除去」が挙げられています。老廃物であるアミロイドβペプチド(Aβ)は、アルツハイマー型認知症の発生要因のひとつであり、起きて活動している間に増加、蓄積し、睡眠中に除去され減少するとされています(※4)。

 実際に、睡眠の質が悪い人は、アミロイドβペプチドが異常量であることが多いと報告されています(図2)。その結果、脳に蓄積されやすく、アルツハイマー型認知症のリスクを高めるのではないかと考えられています(※4)。

図2. 睡眠の質とアミロイドβペプチドの蓄積の関係(※4)

 このアミロイドβペプチドは長い年月をかけて蓄積されますが、ある研究では、アルツハイマー型認知症発症の15年前から蓄積が生じていたと報告されています(※5)。よって、アルツハイマー型認知症の発症リスクを低下させるには、若い世代から睡眠のあり方について考え、アミロイドβペプチドの蓄積を少しでも遅らせる習慣を身につけることが大切です。「若いからアルツハイマー型認知症にはならない」と考えている方も、若いうちから将来のアルツハイマー型認知症リスクを低下させる習慣を考え、睡眠時間を確保すると共に、睡眠の質も改善することを意識していきましょう。

3. 高齢者には30分程度の仮眠がおすすめ!アルツハイマー型認知症を予防

 上記でご説明した“睡眠時間や質”に関係してきますが、高齢者においては、短時間の仮眠をとると、アルツハイマー型認知症の発症率を低下させることが報告されています。ある研究では、仮眠をとる習慣がない人に比べて、30分以内の仮眠をとる人はリスクが1/6と最も低く、30~60分とっている人は1/3にリスクが低下したと報告されています(※6)。

 短時間の仮眠がアルツハイマー型認知症のリスクを低下させる要因は、仮眠をとらずに過ごすと、夕方以降の“居眠り”につながりやすく、寝付きや睡眠の質が悪くなってしまいますが、短時間の仮眠をとり夜の睡眠を充実させることにより、脳の老廃物除去以外にも、脳の疲労回復や免疫機能が改善され、そのことがアルツハイマー型認知症のリスクを低下させる要因となっているのではないかと考えられています(※1)。

 ただし、ここで注意したいのが仮眠のとり過ぎです。仮眠が60分を超えてしまうと、逆に発症リスクが2倍になってしまうことが指摘されています(※6)。習慣的な短時間仮眠は効果があるといわれていますが、長すぎる仮眠はかえって逆効果になってしまうようです。

 そこで、「30分で起きることがつらい・・・」という方に朗報です!仮眠をとる直前にカフェインを摂取すると、30分程度で目を覚ましやすいといわれています。個人差はありますが、カフェインの覚醒効果は、摂取してから15~30分程度とされており、カフェインが効き始める頃にスムーズに仮眠から覚めることができるといわれています(※1)。カフェインは、身近なコーヒーや紅茶に含まれていますので、仮眠習慣に上手に取り入れてみましょう。

 睡眠不足は、肥満などの生活習慣病やアルツハイマー型認知症の発症と関係しているため、食事や運動習慣、喫煙などと一緒に見直していきましょう。

 以前お伝えした「睡眠の質と量を改善 〜仕事の能率やストレスとの付き合い方を学ぶ!~」の記事では、充実した睡眠をとるにはどのように過ごせば良いかなど、睡眠の種類や役割、快眠につながるポイントを確認できます。こちらもチェックしてみてください。

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