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週末の寝だめが体内時計を狂わせる?

公開日:2018年10月31日
更新日:2019年5月27日

週末に寝すぎて辛い・・・なんてことありませんか?(写真:Shutterstock.com)

海外旅行に行ったわけでもないのに時差ボケ?

 時差ボケとは、時差のある場所に、飛行機などを使い短時間で移動した結果、不眠や眠気、疲労感など心身に不調をきたすことをいいます。その時差ボケのような症状が、海外に行ってもいないのに起こる「社会的時差ボケ」をご存知でしょうか?

 平日は会社や学校などに通うことにより、半ば強制的に睡眠のサイクルが決められています。しかし、休日は自由に寝たり起きたりできるため、平日と違った睡眠サイクルになりがちです。すると、そのことがきっかけで体内時計が崩れます。その時、時差がある場所に行ったわけでもないのに、「眠気が取れない」や「だるい」といった症状が起きることを「社会的時差ボケ」と呼びます(※1)。

 休みの後、月曜日がつらかったり、体がだるかったりするのは社会的時差ボケが原因かもしれませんね。

社会的時差ボケになりやすい人がいる?

 BDNFは脳由来神経栄養因子というタンパク質の一種で、神経細胞の発生や成長などに関与しており、「脳の栄養」とも呼ばれています。これまでの研究から、このBDNFの血中濃度が下がると、落ち込みやすくなったり、統合失調症になったりすることが知られています。また、ストレスを多く感じることでBDNFの血中濃度が低下することが知られています。女性においては、BDNFの血中濃度が高いとストレスからの回復が早いことが示唆されています。BDNFは睡眠にも関与しており、BDNFの血中濃度が低いと、睡眠の妨げになることも明らかになっています(※2)。
 
 日本大学の研究グループは、79人の健康な日本人に対して、BDNFの血中濃度や遺伝型と睡眠パターンについて研究を行いました。すると、BDNFの血中濃度が低い人ほど、休日の就寝時間が遅く、全体の睡眠時間が長くなり、社会的時差ボケを起こしやすいことがわかりました。しかし、平日の睡眠パターンはBDNFの血中濃度と関連がみられませんでした。また、BDNFの一箇所の遺伝子が異なることで、休日の就寝時間が1時間近く遅くなることも分かりました(※2)。
 
 電気が発明され、人は暗くても活動できるようになりました。しかし、そのせいで、睡眠時間が削られ、慢性的な睡眠不足に悩まされる人も多くいるでしょう。「これって社会的時差ボケかな?」と思ったあなた。休日だからと夜更かしするのではなく、朝日を浴びる健康的な生活を送ることで、平日も休日も元気に過ごせるといいですね。

 BDNFと睡眠の関係性についてではありませんが、MYCODE fumfumでは「夜更かし傾向」に関する、遺伝的特徴を知ることができます。気になる方はぜひチェックしてみてください。

監修者
医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。