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コレステロール値が高いと何が問題なの!?医師が解説する正しい対策とは【MYCODEセミナーレポート】

2020年01月09日 09時00分

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コレステロールと中性脂肪に関するMYCODEセミナーを開催しました(写真:Shutterstock.com)

 最先端の遺伝子研究や最新の健康トピックに関して、第一線で活躍する講師陣をお招きして開催する「MYCODEセミナー」。2019年11月は、「MYCODEトピックス」の監修医でもあられる石原藤樹先生にお話しいただきました。

講師:石原 藤樹(いしはら ふじき)先生
医学博士、北品川藤クリニック院長。糖尿病、内分泌、循環器を中心とした臨床経験後、地域の総合医として心療内科、小児科まで幅広く担当し、心身両面から健康を見守る北品川藤クリニックを開業。「かかりつけ医」として幅広い医療相談に応えている。診療の傍ら、1日15,000アクセスを誇る人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」をほぼ毎日更新。

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講義される石原先生

 生活習慣病である脂質異常症は、空腹時採血で主に悪玉(LDL)コレステロール(140㎎/dl以上)、善玉(HDL)コレステロール(40㎎/dl未満)、中性脂肪(150㎎/dl以上)のうち、1項目でも基準値外の場合に診断されます。今回は、私達の健康状態をあらわす指標でもある、コレステロールと中性脂肪について、これらの項目がどのようなリスクを示すのかなど、エビデンスをもとにお話しいただきました。また、近年話題のサプリメントの効果や、食事で心がけるポイントなどについてもご説明をいただきました。

<1:コレステロールと中性脂肪について>

1-1.コレステロールは、体に欠かせない脂質

 コレステロールと聞くと健康に良くないイメージがありますが、体内で重要な役割を担っています。コレステロールは、細胞膜の成分やステロイドホルモンの材料でもあるため、私達の体には欠かせません。

 また、コレステロールは私達の肝臓でも合成されており、その量は体内のコレステロール全体の70~80%を占めています。食事によるコレステロールの影響は20~30%とされ、体内で合成される方が食事の影響よりも大きいことがわかります。

1-2.コレステロールと心臓病・脳卒中との関係

 私達の体に欠かせないコレステロールですが、血中のコレステロール濃度が高まると、健康にどのような影響があるのでしょうか。コレステロールの高低は心臓病や脳卒中の発症に関与しているのではないかと考えられていますが、どのように関与しているのかをご説明いただきました。

 これらの病気には、主に動脈硬化が関与しているといわれています。動脈硬化が起こる仕組みは、血管内膜にできた傷から、血管壁にLDLコレステロールが入り込み、入り込んだLDLコレステロールが酸化されて、体に有害な酸化LDLへと変化します。この酸化LDLは異物としてみなされるため、免疫細胞のマクロファージに取り込まれます。マクロファージは酸化LDLをたくさん取り込んだ末に力尽きて動けなくなります。その残骸がプラークと呼ばれる粥状の物質となって血管壁に蓄積されていきます。このプラークが肥大化し、動脈硬化を引き起こすといわれています。

 また、肥大化したプラークが破けると、破けたところを塞ごうと血小板が集まり血栓が生じます。その結果、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などにつながるといわれています(図1)。血中コレステロールが高くなると、動脈硬化の進行する危険性は間違いなく高まります。

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図1. 心筋梗塞に至るまでの経過

 しかし、コレステロールが高いだけで、常に動脈硬化が進行するという訳ではありません。血管の内膜の障害や炎症の関与など、そこには複雑なメカニズムがありそうなのですが、動脈硬化が進行するという仕組みの詳細は、完全には解明されていないそうです。

 疫学研究などでコレステロールと病気の発症との関連をみてみると、虚血性心疾患などの心臓病に関しては、総コレステロールが上昇すると発症リスクも高まる関係が報告されています。この点には疑問の余地はありません。一方で、脳卒中は、日本人の十分なエビデンスはまだないとされつつも、脳梗塞はコレステロールが上昇するほどリスクが高くなるが、脳出血に対しては、リスクが低下するというデータもあるようです。いずれにしても、定期健診などでコレステロールの値を確認し、基準値内におさまるように生活習慣等をコントロールすることが重要とされています。

1-3.コレステロールが低いことは問題なのか?

 総コレステロールが160~180㎎/dlより低いと総死亡のリスクが高くなるという疫学データはありますが、がんなどを罹患した結果、栄養失調によりコレステロールが減少したためだと考えられています。また、遺伝子変異でコレステロールが極端に低い(14~16㎎/dl程度)人を対象とした調査では、特に健康上の問題は報告されていないようです。よって、がんや肝臓病などによる栄養失調が原因と考えられる場合を除けば、コレステロールが低いほど健康には良いと考えて問題はないとのご説明がありました。

1-4.家族性高コレステロール血症について

 遺伝性疾患である家族性高コレステロール血症のヘテロ接合体(注1)は、人口の200~500人に1人認められる病気です。心筋梗塞を起こす人の1割は家族性高コレステロール血症という報告もあるようです。

 家族性を見分ける方法として、①15歳以上、②服薬がない状況でLDLコレステロールが180mg/dL以上、③家族にコレステロールが高い人がいる場合は、家族性高コレステロール血症の疑いがあるとされています。さらに、いくつかの兆候として、目やひじ、膝の黄色腫(目の周りの皮膚表面に生じる、黄色みを帯びたようなしこり)、アキレス腱の肥厚(≧14.5mm)、若い方の老人環(角膜の上のほうが白っぽくなる)が挙げられます。これら兆候がない場合でも、①~③に該当する場合は、必ず医師の診断を受けるようにしましょう。
※注1)両親から1個ずつ受け継いだ遺伝子(対立遺伝子)の片方が異常。

1-5.高コレステロールの治療薬について

 血中コレステロールが高い場合に処方される代表的な薬として「スタチン」が挙げられます。このスタチンは、肝臓でコレステロールを合成するのを妨害する薬で、動脈硬化の進行を防ぐ効果もあるとされています。このスタチンは、原則年齢が40~75歳までの間に使用を開始します。その理由として、この年齢以外での使用効果が確認されていないためとのことでした。また、5~10年スタチンを服薬し、10年経った時点で、その後継続するかを検討することが最善とされています。5年以上スタチンを服薬すると、その効果は中止しても20年残り、5年未満で止めてしまった場合は、明確な効果が確認されていないとのことです。

1-6.中性脂肪

 血中の中性脂肪は体に蓄えられた脂肪の一部ですので、血液中に多く存在すると肥満や糖尿病などになりやすいことは間違いありません。一方で、食事の内容により血中レベルの数値が大きく変動するので、その解釈はコレステロールほど単純ではありません。中性脂肪が高い場合は、不健康のサインと捉え、運動や食習慣などの生活習慣を改善することが重要とのことでした。


<2:脂質異常症と食事改善>

2-1.脂質のとり方は脂肪酸の比率を重視する時代に

 脂質のとり方として、「揚げ物を控えましょう、お肉の脂身がない部位を・・・」のような脂質の摂取量を制限するよりも、「魚をとりましょう、〇〇のあぶらをとりましょう」と、脂質の質(脂肪酸の比率)が重要視されるようになりました。

 脂質の種類は主に飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます(※1)(図2)。飽和脂肪酸は主に常温で個体のものが多く、肉の脂身やバターやチーズなどに多く含まれています。多くとり過ぎると悪玉(LDL)コレステロールが上昇するといわれています。不飽和脂肪酸は液体の油であり、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸とに分類されます。多価不飽和脂肪酸は、オメガ3系(n-3系)とオメガ6系(n-6系)とに分類されますが、脂質異常症や動脈硬化の予防には、オメガ6系に対してオメガ3系の摂取比率が高いほど良いとされています。つまり、オメガ3系を増やし、オメガ6系を減らすことが推奨されています。

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図2. 脂質の種類(※1)

2-2.オメガ3系の魅力と多く含む食品

 オメガ3系は、主にサンマやサバなどの青身魚の脂に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)や、エゴマ油やナタネ油、アマニ油などの植物性油脂のαリノレン酸などがあります。

 オメガ3系は、血中の中性脂肪の値を改善したり、動脈硬化の原因となる血管の内皮障害や炎症を抑制したり、脂肪細胞の燃焼を促進するなどの作用が報告されています。また、摂取量が多いほど、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクが低下し、寿命も長くなるとの報告もあります。

 オメガ3系の摂取量を増やす方法として、含有量の高い青魚の摂取頻度を増やすことが推奨されていますが、妊婦に対しては、多過ぎると魚に含まれる有機水銀の影響も懸念されています。気になる方は厚生労働省のホームページを参照するようにしましょう(※2)。

2-3.EPA・DHAをサプリメントで摂る効果と注意点

 オメガ3系のEPAとDHAを、薬やサプリメントから摂取するときの効果についてご説明いただきました。薬もしくはサプリメントで1日2~4g摂取すると、血中の中性脂肪が2~3割低下し、動脈硬化の進行を防ぐことが期待されています。ただし、サプリメントについては、人に対する効果が明確に証明されていないのが現状とのことです。また、多量に摂取すると不整脈や出血がやや増加したなどの報告や、1日4gを超える量を摂取すると、むしろ悪玉コレステロールが増加したという報告もあるようです。よって、薬としては1日2~4g処方されることもあるそうですが、サプリメントは2gまでにするのが良いのではないかというご見解をご紹介いただきました。

2-4.その他、生活習慣のポイント

 昔の食事指導は総カロリーを抑えるために脂質を制限するという考えでしたが、最近では、脂質よりも糖質を制限する方が生活習慣病の予防になるという考え方に変わってきました。脂質異常症診療ガイド2018年版では、摂取エネルギーに対する炭水化物比が50~60%と記載されていますが(※3)(図3)、近年では炭水化物比は50%を切る方が良いという報告もあるようです。

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図3. 中性脂肪が高い人(高トリグリセリド血症)の生活習慣のポイント(※3)

 コレステロールの摂取量については、最近は基準が明記されない傾向にありますが、これはどの程度制限すると良いかの根拠が明確ではないため、ガイドラインなどに設定されていないとのことです。しかしながら、コレステロール量を気にせずとも良いということではなく、1日200㎎を基準と考え、多くても300㎎までに抑えると良いとアドバイスをいただきました(※3)(図4)。ちなみに、平成29年国民健康・栄養調査によると、20歳以上のコレステロール平均摂取量は324㎎と報告されています。

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図4. LDLコレステロールが高い人の生活習慣のポイント(※3)

MYCODEで提供している脂質異常症関連の項目

 MYCODEでは、遺伝性疾患である家族性高コレステロール血症はご提供しておりませんが、病気の項目で、脂質異常症(高トリグリセリド血症)、体質では、悪玉(LDL)コレステロール値、悪玉(酸化LDL)コレステロール値、善玉(HDL)コレステロール値をご提供しております。ご自身の生まれ持った体質の傾向と、健康診断の結果とを併せてご覧いただき、生活習慣改善にご活用ください。

 MYCODE会員は、マイページよりご自身の結果を確認することができます。






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会場の様子

 MYCODEセミナーは、今後も開催していく予定です。会員の皆様にはメールで開催予定をお知らせしておりますが、セミナー予定ページもぜひご活用ください。

参考文献
※1. 奥恒行, 基礎栄養学(改訂第3版)., 南江堂
※2. 厚生労働省, 魚介類に含まれる水銀について
※3. 日本動脈硬化学会, 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド 2018年版., 日本動脈硬化学会

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