- 関連遺伝子研究
- 遺伝子
- 肥満

痩せたい!でも肥満遺伝子を持っているからあきらめたほうがいい?
肥満にはなりたくない!遺伝子で決まっているならあきらめるべき?でも、同じ肥満遺伝子を持っていても環境によっては遺伝子が働かないことが分かってきたのです。

画像はイメージです。記事と直接の関係はありません。(写真:Alan Cleaver/クリエイティブ・コモンズ 表示 2.0 一般)
エネルギーの代謝能力や食事の好みなど、肥満になりやすくなる遺伝子はやはりあると考えられます。でも最近、肥満になりやすい遺伝子を持っていても環境によっては働かなかったり、逆に働きすぎたりすることがあるということが分かってきたそうです。
肥満遺伝子の働きは環境によって変わる?
2014年12月29日、米国マサチューセッツ総合病院を含む研究グループは、米国科学アカデミー紀要オンライン版で、肥満遺伝子の働きが環境によって変わるということを報告したのです。
私たち人間をはじめとする多くの生物は、自分の親から遺伝子を受け継いで生まれてきます。私たちは、遺伝子に刻み込まれたプログラムに従って成長することが分かっています。その一方で、私たちは環境に応じた適応や変化を行うことができる能力も持っているのです。同じ遺伝子を持っているはずの一卵性の双子が、全く同じ人間ではないのもそういったことの一つを表しているといえます。
遺伝子の突然変異と肥満は生まれた時期と関係するか
研究グループは、自然環境や社会環境などの変化によって、遺伝子からの影響の受けかたも変わるのではないかと考えていました。例えば、米国では20世紀後半に肥満が顕著に増加しましたが、その時に突然変異により肥満遺伝子が生じたのではなく、もともとあった遺伝子配列の違いと何らかの環境変化が協調的に働いた可能性があると考えたのです。
彼らは、米国で30年以上にわたり行われている、「フラミンガム心臓研究」のデータを用いて検証しました。肥満リスクが高くなると言われている「FTO遺伝子」の突然変異と肥満度の指標(BMI)との関連性が、生まれた時期によって変化するかどうかを調べたのです。
ある年以降に生まれた人は肥満遺伝子がONに?
その結果、肥満のリスクが高いFTO遺伝子のタイプとBMIの関連性が、ある時期に生まれた世代の前後で大きく変化していることがわかりました。同じタイプの肥満リスク遺伝子を持っていても、1942年頃より後に生まれた人の方が肥満度が高い傾向があったのです。
1942年といえば時代は第二次世界大戦中ですが、この頃から社会環境や食生活が現代的に変わってきたということなのかもしれませんね。研究はあくまでも統計の結果であり、肥満遺伝子がどのような環境の変化に関連したのかは明らかにはされていません。しかし少なくとも、現代人にとって肥満になりやすい遺伝子が、ある年代より前の環境では特に肥満になりやすい遺伝子として働いていなかったということなのです。
つまり、肥満遺伝子を持っていたとしても、環境次第で状況は変えられるはず!?
参考文献
Rosenquist JN et al. Cohort of birth modifies the association between FTO genotype and BMI.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Jan 13;112(2):354-9. doi: 10.1073/pnas.1411893111. Epub 2014 Dec 29.