• 管理栄養士
  • 肥満
  • ダイエット
  • 糖質
食事・生活

【管理栄養士コラム】糖質制限ダイエット!効果があるって本当?リスク・問題点は?

公開日:2015年2月26日
更新日:2020年3月13日

糖質制限ダイエットの効果とリスクについてまとめました(写真:Shutterstock.com)

 炭水化物の摂取量を極端に減らす「糖質制限ダイエット」は、短期的には減量や血糖コントロールの改善につながるとして、減量や生活習慣病の食事療法のひとつとして広まっています。しかし、日本においての長期的な効果や安全性については、まだ明らかになっていません。

糖質と炭水化物の違い

 まず、糖質とは何か、炭水化物とは何か、を整理してみましょう。

 炭水化物は糖質と食物繊維の総称で、食物繊維はほぼ消化されず、便から排泄されますが、糖質は消化吸収されてエネルギー源となります。しかし、糖質と炭水化物を同義語として使用することも少なくありません。そのため、「糖質制限ダイエット」は、「低糖質ダイエット」、「低炭水化物ダイエット」などいろいろな呼び方をされることがあります。

糖質は一体どんな働きをしているの?

 糖質は血糖値を上げ、その結果血糖値を下げるホルモンであるインスリンが分泌されます。このインスリンは脂肪の合成を促進し、脂肪の分解を抑制するホルモンでもあります。

 一方で、糖質は脳など体の大切な部位でエネルギー源として利用される重要な栄養素です。特に、脳では飢餓状態にない限りブドウ糖を主に消費していますので、糖質の摂取状況は脳の働きに影響するともいわれています。

日本人はどのくらい糖質を食べているのか

 現在私達日本人は、1日に平均約1900kcalを摂取しています。このエネルギーとなり得る栄養素は炭水化物、たんぱく質、脂質ですが、そのうち炭水化物(糖質)の占める割合は約60%です。つまり、(1日平均摂取)エネルギーの半分以上(1140kcal)を炭水化物からとっているのです(※1)。

糖質だけが減?それともカロリー減?それぞれの食事パターン

 糖質制限ダイエットとは、ご飯を抜くなど糖質を制限することにより、「単純にエネルギー(kcal)が少なくなっている場合」と「糖質の代わりにエネルギー源となるおかずを増やしたんぱく質や脂質の量を増やしたダイエット」にまず分けられます。

 まず、日本人の平均である炭水化物(糖質)が60%の食事とはどんなものかを1食約600kcalで例を挙げると、「大盛りのご飯1膳に焼き魚、野菜炒め、ほうれん草のおひたし、味噌汁」といったものになります。

 糖質の多いご飯を抜くと、単純にエネルギー(kcal)が少なくなるのがわかると思います。

 次に同じエネルギー量で炭水化物の量を50%にするとどうなるかをお示しすると、「普通盛りのご飯1膳に焼き魚、肉野菜炒め、ほうれん草のおひたし、味噌汁」となり、ご飯の量を少なくし、炒めものに肉が加わります。

 さらに、炭水化物の量を40%に減らすと、「小盛りのご飯1膳に焼き魚、肉野菜炒め、冷奴、ほうれん草のおひたし、味噌汁」となり、ご飯の量を減らした分、豆腐が追加されています。

糖質制限ダイエットのメリット

 中性脂肪やHDLコレステロールの改善や血圧の低下など心血管疾患リスクの低減が認められるとの報告もありますが、糖質制限ダイエットは、まだ長期にわたる臨床データや安全性、科学的根拠が不十分であることから万人に勧められるダイエット法でないことは確かです(※2)。

 一方で、現在わかっていることでは、糖質中心の食事と比較してたんぱく質や脂質の多い食事は食後の満腹感が高かったり、空腹感を感じるまでの時間が長いことから間食予防につながるなどのメリットがあるということもいえます(※3)。

糖質制限の潜在的リスク

 では、糖質の割合が少なくなると、どのような潜在的なリスクがあるのでしょうか。

 1日の摂取エネルギーのうち糖質が30~40%(糖質摂取の少ない人達)の人達と60~70%(日本人の平均的な摂取割合)の人達で死亡率を比較すると、糖質摂取量30~40%の人達の死亡率が約30%高いという報告があります。ただし、このような研究では、単純に糖質摂取量が少ない人と比較的多い人を比べただけですから、糖質制限が寿命を縮めるのかどうかは、まだわかっていません。また、糖質の代わりにどのような栄養素を食べているのかにも関係すると考えられます(※4)。

 また、糖質の多いご飯や芋類、果物には多くの食物繊維も含まれています。これらの食品を控えることにより、食物繊維の不足にならないよう気をつけなければなりません。食物繊維摂取量との関連が検討された生活習慣病は多岐にわたり、心筋梗塞の発症並びに死亡や、糖尿病の発症との間に負の関連を認めたとする研究報告が数多くあります。また血圧並びにLDLコレステロールとの間でも負の関係が示唆されています(※5)。

たんぱく質を過剰にとりすぎると良くないの?

 たんぱく質を過剰にとった時の健康被害としては、糖尿病発症リスク、心血管疾患、がんの発症率の増加などが報告されています。たんぱく質と腎臓の関係については、腎機能が低下した場合の悪影響は大きいと考えられています(※6)。

 糖質を制限した時のその他の影響としては、ご飯やパンなどを控えるため、おかずの量が増えます。基本的におかずは味付けがされているので、塩分のとりすぎには注意が必要です。

糖質制限に注意が必要な人

 糖尿病で服薬、インスリン注射をしている方は低血糖になる心配があります。また、腎機能低下、すい炎、肝硬変の方は、糖質制限は適応となりませんので、必ず主治医とご相談ください。

最後に

 ご飯を全く食べないといったダイエットにどんなに効果があったとしても、ご飯に納豆や卵をかけた美味しさ、丼のご飯と具が一体となった美味しさ、他にもたくさん、ご飯と合うおかずがあります。これらをすべて手放してしまうのは、非常に残念に思います。

 無理なダイエットで一時的に体重が減っても維持できなかったり、健康状態に影響が出てしまっては意味がありません。甘いものが好きな方の場合は、ご飯を食べていないからとお菓子を食べ過ぎてしまいダイエットに失敗してしまうことがあります。

 ・お菓子や砂糖を含む飲み物を控える
 ・「ラーメンとチャーハン」、「お蕎麦と稲荷ずし(小丼)」といった糖質の重ね食いを控える
 ・夕食が遅くなる場合は、主食となるご飯を少なめにする

などといった糖質制限をするのが良いのではないでしょうか。


参考文献

※1. 厚生労働省, 平成25年国民健康・栄養調査結果の概要
※2. Santos FL, Systematic review and meta-analysis of clinical trials of the effects of low carbohydrate diets on cardiovascular risk factors., Obes Rev.
※3. 中村美知子, PFC比の異なる食事摂取が空腹感に及ぼす影響 -血漿アミノ酸・脂肪酸濃度との関係-, 山梨医大紀要
※4. Noto H, Low-carbohydrate diets and all-cause mortality: a sys- tematic review and meta-analysis of observational studies., PLoS One.
※5. 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準2015年版「炭水化物」
※6. 厚生労働省 日本人の食事摂取基準2015年版「たんぱく質」


あなたの遺伝子検査結果をみてみよう!!