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あなたの遺伝子でもわかる、脳の中で記憶に関わる海馬の大きさは?
脳の中で記憶の機能を管理している海馬。この名前はギリシャ神話に出てくる想像上の馬からきているそうです。海馬の機能や大きさに関係する遺伝子について、わかりやすくご紹介します。

記憶力と関係があると言われている脳の器官、「海馬」についてご存知ですか?(写真:Shutterstock.com)
脳の中で記憶に関わっているのが海馬です。日常的な出来事や勉強して覚えた情報などの新しい記憶は海馬に収められます。
海馬はタツノオトシゴのような形をしており、脳の中心部を囲むようにして水平方向に位置しています。

黄色い部分が海馬。(写真:Shutterstock.com)
海馬の大きさと関係する遺伝子があった
米国のワシントン大学を中心とした研究グループは、海馬の大きさと遺伝子の関係を調べました。研究では、まず約1万人近い人の海馬の大きさをMRIにより測定し、そのデータと被験者の200万箇所以上の遺伝情報を網羅的に比較しました。
結果、MYCODEでも調べているrs7294919というSNP(遺伝子の一部)が、海馬の大きさともっとも強い相関のある遺伝領域の一つである事がわかりました(※)。
日本人では約35%程度の人が『海馬の大きさが大きいタイプ』の遺伝子を持っているようです。
(筆者はこの海馬が大きい傾向にあるタイプの遺伝子を持っており、もちろん周りに自慢しました!)
ちなみにこのrs7294919と呼ばれるSNPは、HRKという『細胞死』に関係の深い遺伝子の近くで見つかりました。
記憶障害の患者さんなどでは、細胞死による海馬の萎縮が見られることからも、細胞死と海馬の大きさ、記憶力に何か関連がありそうなことが示唆されたことになります。
遺伝子のタイプによって海馬の大きさに影響があるかもしれないというのは、とても興味深いですね。
「海馬」の名前の由来は?
そもそもこの海馬(英語ではhippocampus)というちょっと不思議な名前、一体どこから来ているのでしょうか?
その名前の由来には諸説ありますが、一つには、ギリシャ神話に登場する海の神様、ポセイドンが乗っていたとされる想像上の馬(hippocampus)に形が似ていた事を由来とするという説があります。
脳の中の部位を神話上の生物に例えるなんて、なんだかロマンチックですね。このhippocampusの別称がsea horseであり、日本の海馬という呼び名は、このSea(海) horse(馬)から来ているそうです。こちらは何だか単純です。
記憶と五感の関係
さて、この海馬が我々の記憶に大きく関わっているとのことですが、記憶と言えば皆さんも『何かの匂いを嗅いだ瞬間に、過去の光景がフラッシュバックしたり、ある特定の人や場所を思い出した』という経験があるのではないでしょうか?
これは「プルースト効果」と言い、よくある現象として広く知れ渡っています。そして、この現象と海馬は深く関わっていることがわかってきています。
私たちは日々様々な感覚(視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚)を働かせ、それを記憶の保管庫である海馬へと受け渡し、記憶として定着させています。
そして不思議な事に、海馬への受け渡しにおいて、五感の中で嗅覚のみが直接海馬と接続して記憶を保管できるのです。
嗅覚のみが直接記憶の保管庫である海馬と繋がっているため、あの『匂いと共に記憶が鮮明に湧き上がる』という現象が起きているということなのです。
記憶を司る不思議な器官、海馬に興味を持っていただけましたでしょうか?
MYCODEヘルスケアの検査結果が出ている方であれば、この海馬の遺伝的な大きさについて、今すぐに確認する事ができます。
興味を持っていただいた方は、ぜひ自分の記憶の保管庫である海馬の大きさについて、遺伝子からわかることをのぞいてみて下さい!
監修者
認定遺伝カウンセラー 藤田和博先生
プロフィール:昭和大学藤が丘病院での先天異常、血液腫瘍の遺伝子・染色体検査の経験を生かし、現在は大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科教授として臨床検査学教育と研究に従事。
※ Bis JC, Common variants at 12q14 and 12q24 are associated with hippocampal volume., Nat Genet.
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