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汗をかくとベタついたり、臭くなるからイヤだと言ってるあなた、汗をかくことは大切なんです
汗は体温を保つためにとても大切なものです。汗をかくことができない「無汗症」という病気の人がいることを知っていますか。日本とスペインの研究グループは無汗症の原因となる遺伝子を発見したのです。

画像はイメージです。記事と直接の関係はありません。(写真:Teresa/クリエイティブ・コモンズ 表示 2.0 一般)
汗をかきやすい人と、かきにくい人がいますよね。汗っかきの人は、匂いや脇汗が気になってイヤだと思われているかもしれませんが、私たちが汗をかくのには理由があり、汗をかくことにより体温を一定に保っています。
理化学研究所とスウェーデンの研究グループは、無汗症の人を調べることで発汗に関わる遺伝子を発見したと報告しました。
汗をかかない「無汗症」とは
汗をかきたくないと思われている方がいるかもしれませんが、全くかかないのも問題です。汗をかくことができないと熱中症やめまいになりやすく、重症化すると意識障害を起こすこともあります。中には、汗腺の形成不全や交感神経の異常などが原因で汗をかくことができない「無汗症」という病気の人がいることが知られていました。
これまでとは違うタイプの無汗症があった
研究グループは、パキスタンで生まれながらにして汗をかくことができない家系を発見し、原因となる遺伝子の解明を目指して研究を始めました。
その症状を診断したところ、この無汗症の人たちは、汗腺の形成不全や交感神経に異常がないにもかかわらず、32℃の環境におかれても汗を全くかかず、高温多湿の環境では、皮膚温度が高くなり、心拍も異常に上昇することがわかりました。また、家族全員が無汗症ではないことから、父親と母親の両方から原因とされる遺伝子を受け継がないと無汗症にならないと考えられました。
無汗症の人で、1遺伝子の配列に変異が見つかった
そこで、無汗症の原因となっている遺伝子を探したところ、無汗症の人の「ある1つの遺伝子の配列」に変異が生じていることがわかりました。汗の量が、本当にこの遺伝子の配列の違いで変るのかをマウスで調べたところ、この遺伝子の機能を欠損したマウスでは、通常のマウスより汗の分泌量がおよそ1/6に減りました。
今回の研究で、汗腺の形成不全や交感神経の異常の他にも、たった1つの遺伝子が正常に働かなくなるだけで、汗をかかなくなることがわかりました。研究グループは、これまで、原因不明の無汗症の人にもこの遺伝子が関わっている可能性があると指摘しています。この遺伝子の発見が突破口となり、発汗の仕組みが明らかにされ、無汗症の治療に生かされる日が来るのが期待されます。
今回のように、たった1つの遺伝子の変化でヒトの体質が変ってしまうこともあるんですね。遺伝子ってすごいですね。あなたも遺伝子を調べることで新たな自分に出会うことができるかも。
参考文献
Klar J et al. Abolished InsP3R2 function inhibits sweat secretion in both humans and mice.
J Clin Invest. 2014 Nov;124(11):4773-80. doi: 10.1172/JCI70720. Epub 2014 Oct 20.