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腸内フローラで健康管理ができる?最新研究から読み解く腸内細菌の機能と可能性【MYCODEセミナーレポート】

2019年08月07日 09時00分

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腸内フローラに関するMYCODEセミナーを開催しました。(写真:Shutterstock.com)

 最先端の遺伝子研究や最新の健康トピックに関して、第一線で活躍する講師陣をお招きして開催するMYCODEセミナー。2019年7月は、腸内環境や腸内細菌の割合などが分かる独自の検査キット「Mykinso」を開発・販売している株式会社サイキンソーから、竹田綾取締役CSOと管理栄養士の志田結先生をお迎えして、「腸内フローラ」の基本情報から最新の研究成果、腸内環境を整える生活習慣などについてお話いただきました。

講師:竹田 綾 先生
株式会社サイキンソー取締役CSO。高卒で渡米、フロリダ州立大学で博士号取得(分子生物物理学)後に帰国。株式会社ジナリスにてDNA解析受託サービス(企業/アカデミアの研究者向け)のコンサル営業を主に担当。出産を期に「食と健康」に興味を持ち、腸内細菌叢の可能性に魅せられサイキンソーを共同創業。

講師:志田 結 先生
共立女子大学卒業後、「管理栄養士として予防、未病の分野に携わりたい」という思いのもと、保育園での食育活動や病院・企業での特定保健指導業務などに従事。健康や疾患、食事と密接な関わりのある「腸内フローラ」の奥深さと可能性に魅せられ、2016年、株式会社サイキンソー入社。

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写真は奥から竹田綾先生、志田結先生

<第1部:腸内フローラとは何か、最近の研究でわかってきたこと> 講師:竹田 綾先生

1-1.「細菌叢」「腸内フローラ」とその機能

 「細菌叢」よりも「腸内フローラ」という言葉の方が、聞きなじみがあるかもしれません。「細菌叢」とは、“人体に棲みついている微生物の集団”のことをいい、その働きは私達の健康に大きな影響を与えています。中でも“腸内”に住む細菌叢を、「腸内フローラ」と呼んでいます。

 この腸内にいる細菌数は100兆~500兆個、体重の1.0~1.5kgは腸内細菌と考えられています。これらの腸内細菌は、「一つの臓器」に匹敵するほどの働きと影響力があり、主に以下の働きが挙げられています。
①腸の活動を活性化
②食べた物の消化や吸収、排便の促進
③肥満予防
④免疫機能の調整・正常化
⑤感染症の予防
⑥炎症の抑制

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1-2.産まれてから腸内フローラのバランスが決まるまで

 母親のお腹の中にいる胎児の腸内は、ほぼ無菌状態ですが、産まれてくる際(産道を通る時)に、母親の腸内フローラを受け継ぐといわれています。よって、乳児期の子供と母親の腸内フローラはとても似ていますが、父親とはまったく似ていないようです。成長過程でミルクや離乳食をとるなどの環境要因により、腸内の環境が次第に成長していき、3~5歳で腸内フローラのバランスが決まってくるといわれています。

 腸内環境が世代をまたいで受け継がれることに関して、興味深いマウスの研究をご紹介いただきました(※1)。食物繊維が多いエサで育ち、腸内環境が良いマウスの子供や孫は、その良い状態を維持したが、食物繊維が少ないエサで育ち、腸内環境が悪いマウスから生まれた子供は腸内環境が悪く、孫になると更に悪い状態になったようです。また、その腸内環境が悪い子供や孫に対して食物繊維が多いエサを与えても、腸内環境は回復しなかったと報告されています。母親の腸内環境の状態が子供や孫まで伝わると思うと、今現在食物繊維の摂取量を見直すことの重要性を改めて感じます。

1-3.腸内フローラの個人差と変化

①個人差
 イスラエルのある研究で、食事をした時の血糖値の上昇に腸内細菌の個人差が影響しているという報告をご紹介いただきました(※2)。その研究では、800人の血糖値上昇パターンを分析しました。すると、以下のような人たちがいることが分かりました。
・砂糖を食べた時に血糖値が上がり、パンを食べてもあまり上がらない人
・パンを食べた時に血糖値が上がり、砂糖を食べてもあまり上がらない人
また、
・バナナを食べた時に血糖値が上がりやすく、クッキーを食べてもあまり上がらない人
・クッキーを食べた時に血糖値が上がりやすく、バナナを食べてもあまり上がらない人
 このように、血糖値の上昇には個人差があり、この違いを予測する要因として腸内フローラの組成が関与しているのではないかと考えられています。実際に、アメリカとイスラエルでは、腸内フローラからその人にはどのような食事が適しているかを導き出し、個別の栄養指導をすることも始まっているそうです。

②加齢に伴う変化
 腸内フローラは、生涯を通じて変化するとされています。乳児の頃に多かったビフィズス菌が加齢に伴って少しずつ減少し、プロテオバクテリア(下痢になりやすいなどあまり良くない菌)は高齢になるにつれて増加するといわれています。

③腸内フローラの安定性
 サイキンソーで実施されている検査でも、腸内フローラの検査を一定期間に数回行うと、腸内細菌の組成がほとんど変わらない方と、短い期間に細かく変わる方がいるようです。一般的にも腸内フローラの安定性は腸内環境の状態をみる指標になるとされており、安定していた方が良いといわれています。腸が元気な方は組成がほとんど変わらないのに対し、腸に問題や不安を抱えている方は検査のたびに組成が変わり、不安定であることが多いそうです。

1-4.腸内フローラの多様性

 腸内細菌は、これまで「善玉菌」「悪玉菌」という分類が使われることが多く見受けられました。しかし最近の研究では、単純に菌の良し悪しを分類するのは難しいとされ、「種類の多さ」と「バランス」を表す「多様性」が注目されています。

 幅広く、様々な種類の菌がバランス良く存在している状態を「多様性が高い」と言い、腸内環境が良いとされています。それに対して、菌の種類が少なくバランスが偏っている状態を「多様性が低い」といわれています。トップアスリートやアフリカの原住民は多様性が高く、病気を患っている方や自閉症の子供では腸内環境が悪く、多様性が低いという研究結果もあるようです。

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1-5.腸内フローラから作られる短鎖脂肪酸

 短鎖脂肪酸とは、腸内フローラから作り出される物質であり、例として酢酸、プロピオン酸、酪酸などが挙げられます。

 私達が食事から摂取した食物繊維は消化されない成分であるため、そのまま大腸まで到達します。大腸では、食物繊維がビフィズス菌やクロストリジウム等(腸内細菌)のエサになることで、短鎖脂肪酸が産生されます。産生された短鎖脂肪酸は、消化や吸収・排便を促進する、肥満予防、感染症予防、炎症の抑制などに影響しているといわれています。

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<第2部:腸内環境を整えるための、食事を中心とした生活習慣について> 講師:志田 結先生

2-1.腸内フローラを整える食事“シンバイオティクス”とは

 “腸にいい食事”と聞いてよく思い浮かぶヨーグルトや納豆などの発酵食品には、菌そのものが含まれています。しかし、腸内細菌を育てて定着させていくには、菌そのものを含む食品のみを摂取するのではなく、腸内細菌のエサになる食品も日々とる必要があります。

①プロバイオティクス(腸に菌を直接届けて腸内細菌のバランスを整える“補菌”食材)
 体に良い効果をもたらす菌そのものを含んだ食品のことをいいますが、一時的な補充には即効性がある一方で、なかなか腸内に定着しないようです。また、とり方の注意点として、胃酸や加熱による影響が大きいので、空腹時や長時間の加熱は避けた方が良いとのことです。食品例として、味噌、キムチ、ぬか漬け、納豆、ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料などです。

②プレバイオティクス(腸内細菌のエサになる“育菌”食材)
 ヒトが分解・吸収しづらい成分のため、そのまま大腸に届き、腸内細菌のエサとなる食品のことです。自分の腸内細菌を育てることにつながります。食品例として、水溶性食物繊維(大麦、海藻、こんにゃく、オクラ、なめこ等)、オリゴ糖(バナナ、はちみつ、たまねぎ、アスパラガス等)、糖アルコール(果実類、きのこ類等)、レジスタントスターチ(未精製穀物、冷えた炭水化物)などです。

 この2種類の食材を組み合わせてとることをシンバイオティクスといいます。組み合わせて食べることで相乗効果が生まれ、腸内細菌の多様性を高めることにつながるといわれています。例えば、「ヨーグルト×バナナ×はちみつ」、「味噌汁×わかめ×たまねぎ」、「納豆×山芋×オクラ」のような組み合わせがあります。

 これらの食品は、多様性を高めるという観点では、ひとつの商品(例:あるメーカーのヨーグルト等)に限定して同じものを食べ続けるのではなく、様々な種類の商品をとることが良いようです。一方で、「このヨーグルトを食べているといつも体調が良い」ということをご自身で感じている場合は、継続してとることも大切だそうです。

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2-2.短鎖脂肪酸を作り出す腸内細菌

 食物繊維が大腸にそのまま届き、それをエサとして腸内細菌が短鎖脂肪酸(酢酸、乳酸、酪酸等)を作り出すことは先程ご説明しました。この短鎖脂肪酸を作り出す腸内細菌にはどういうものがあるのか、そしてその菌を腸に定着させていくためのシンバイオティクスをご説明いただきました。

①ビフィズス菌
 酢酸を作り出す菌として有名な菌であり、整腸作用や感染症予防等が期待されています。代表的なとり方として、ビフィズス菌入りのヨーグルト(プロバイオティクス)にオリゴ糖やはちみつ(プレバイオティクス)を加えてとるなどはいかがでしょうか。すべてのヨーグルトにビフィズス菌が入っているわけではないので、各メーカーの表示を参考にされると良いでしょう。

②乳酸菌
 乳酸を作り出す菌であり、便通改善や免疫機能調整等の効果が期待されています。発酵食品全般(プロバイオティクス)に乳酸菌が含まれているため様々な発酵食品をとることを意識すると良いそうです。また、プレバイオティクスとして、レジスタントスターチをご紹介いただきました。レジスタントスターチとは、消化されない(レジスタント)でんぷん(スターチ)という意味で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方の働きを持っています。大麦や全粒小麦(全粒粉)などの未精製穀物や、冷えた白米やトウモロコシ、ジャガイモなどに含まれており、加熱すると減り、冷めると再び増えるとのことで、冷えた大麦ご飯と納豆や漬物類などは良い食べ合わせかもしれません。

③酪酸菌
 酪酸を作り出す菌であり、抗炎症作用や免疫機能の調整等の効果が期待されています。酪酸菌を含む食品としてぬか漬け(プロバイオティクス)が唯一挙げられますが、酪酸菌が腸内に全く存在しない人は稀なため、エサとなるプレバイオティクスをとることでも十分有効とのことです。

2-3.今日からできる!腸活アイディア

 最後に、簡単に実践できるアイディア8項目をご紹介いただきました。ご自身の生活に取り入れられそうなものからチャレンジしてみましょう。

□1日3食、なるべく決まった時間に食事をする
□朝食は必ずとる
□ご飯は押し麦(もち麦)入りにする
□味噌汁には必ず海藻類ときのこを入れる
□スープや味噌汁を具だくさんにして食物繊維量アップ
□外食をするときはなるべく定食料理を選ぶ
□1日30品目を目指す
□ヨーグルトを食べる時は、はちみつやバナナを組み合わせる

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たくさんのMYCODE会員にご参加いただきました

 MYCODEセミナーは、今後も開催していく予定です。MYCODE会員の皆様にはメールで開催予定をお知らせしておりますが、セミナー予定ページもぜひご活用ください。