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白いオオカミと黒いオオカミ、もともとオオカミはどっち色??

公開日:2015年1月3日
更新日:2018年6月15日

白く美しいオオカミ(写真:Gunnar Ries/クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 2.5 一般)


絵本では黒いオオカミが多いけど・・・

 皆さんオオカミの毛の色というと、黒色を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?事実、オオカミは絵本や漫画などでは黒い色で描かれることが多いのですが、実は本当の野生のオオカミは白い色をしていた、ということがアメリカのスタンフォード大学の研究グループによる調査でわかりました。

オオカミの毛色を黒くしている遺伝子

 研究グループは、北米のオオカミの毛色のパターンと遺伝子の関係を調査し、これまでに他の動物で知られていた毛色を決める遺伝子が、オオカミの毛色を決めてはいないことを明らかにしました。

 オオカミの黒、グレー、白の毛色を決めているのは、他の動物で毛色を決めている遺伝子とは異なる独自の遺伝子で、この遺伝子の働きににより、オオカミの毛色は黒くなっていたのです。

黒い遺伝子は犬からもらった?

 さらに、この遺伝子について詳細に調べていったところ、ある興味深い事が明らかになりました。この黒い色の遺伝子は野生のオオカミが昔からもっていた遺伝子ではなく、アメリカ大陸に人間と一緒にやってきた飼いイヌから持ち込まれたものであることがわかってきたのです。

黒い体は何のため?

 飼いイヌと子孫を残す事で黒い色を獲得したオオカミは、森の中で木や草の影に身をひそめるのに有利だったので、特に森林の多い地域で生き残り、広く繁殖することができたのではないかと考えられます。

 そのため、アメリカでは現在も森林の多い地域のオオカミは黒色をしている事が多く、逆に森林の少ない地域では白色のオオカミが多いという分布が観察されています。黒い毛色を手に入れることで、オオカミはその繁殖領域を広げることができたのでしょう。

 オオカミに黒い毛色を持ち込んだイヌも、もともとは約3万年前にヨーロッパで狩猟採集をしていた人類になついたオオカミが家畜化された事が進化のきっかけであるとされています。オオカミから進化したイヌが、再びオオカミと交わり、その後のオオカミの生き残りに貢献したかもしれないというのは、とても興味深いですね。


参考文献

Druzhkova AS et al. Ancient DNA analysis affirms the canid from Altai as a primitive dog.
PLoS One. 2013;8(3):e57754. doi: 10.1371/journal.pone.0057754.

Anderson TM et al. Molecular and evolutionary history of melanism in North American gray wolves.
Science. 2009 Mar 6;323(5919):1339-43. doi: 10.1126/science.1165448.