毛深さ

人類の体毛が薄くなったのはなぜ？

　我々の祖先は、体毛が全身に生えていましたが、いつどの時代に体毛が薄くなったのでしょうか。

　残念ながら、何が原因で体毛が薄くなったのかはっきりとはわかっていないようですが、諸説ある中のいくかをご紹介したいと思います。

・性選択説：かの有名なダーウィンは、「オスが体毛の少ないメスを好んだから」体毛が薄くなったと唱えています。そんな理由で、体毛が薄くなるの！？と怪しい気もしますが、スキンシップとして触れ合うことを考えると、体毛に覆われていてゴワゴワしているよりも、体毛が少ない方が柔らかくて気持ちがいいというのは、わかる気もします。

・水生説：人は海辺で進化したため、イルカやクジラのように、海中で保温の役に立つ皮下脂肪を発達させ、海中で役に立たない体毛は退化しました。体毛が退化した理由を聞くと一理ありそうですが、こちらの説には物的証拠が見つかっていないようです。

・体温調節説：高度に発達した人間の脳は、体温が41度を越えると「脳死」の危機に瀕します。そのため、体温の急上昇の一因となる体毛が退化しました。こちらは、夜間の寒さは防ぎにくいという欠点があるようです。

　他にも色々な説があるようですが、いつか体毛が薄くなった原因がわかると面白いですね。

どうして髪は抜けるのにヒゲは抜けないの？

　髪は抜けるのになぜヒゲは伸びていくのでしょうか？この問いに答えてくれるのは、男性ホルモンで代表的なテストステロンです。

　テストステロンが、血中を流れて細胞内に入ると、ある酵素によってジヒドロテストステロン（DHT）という物質に変化します。このDHTが細胞内の男性ホルモン受容体と結合して毛乳頭細胞の核内に入り、標的遺伝子のプロモーターと結合して、標的となる遺伝子に作用し髪が抜けます。ところがこの作用は、髪とヒゲでは逆に働くことになります。

　DHTが細胞内で受容体と結合すると、ヒゲが生える部分では、毛の成長を促進するシグナルを出すのに対し、前頭部や頭頂部には逆に髪の成長を止めるシグナルを出すのです(※1)。同じ物質でも逆の働きをすることで、髪が抜けたり、ヒゲが伸びたりするなんて面白いですね。

毛深さについても遺伝子が関わっているの？

　毛深さやしみ、そばかすなどの皮膚と遺伝子との関係は少しずつわかってきていますが、今までの研究は、ヨーロッパ系の人々のデータを解析したものが多く、日本人のデータを用いて解析されたものがありませんでした。そこに目をつけたのが、東京女子医科大学を中心としたグループです。日本人女性約1万人にアンケートを取り、アンケート結果と遺伝子との関連を調べたところ、毛深さと遺伝子との関連が明らかになりました。

　東京女子医科大学を中心とした研究グループによると、TBX15という遺伝子のrs984225に「G」を持つ人の方が、「A」を持つ人よりも毛深い傾向にあるということがわかりました(※2)。

　rs984225にはGG、GA、AAの遺伝型がありますが、日本人平均と比べると

・GGの遺伝型を持つ人は「毛深いタイプ」
・GAの遺伝型を持つ人は「やや毛深いタイプ」
・AAの遺伝型を持つ人は「毛深くないタイプ」

という遺伝的傾向を持っていると言えます。