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催眠のかかりやすさ
- 原語
- hypnotizability
- 研究
- イタリア ピサ大学
この研究のふむふむポイント
催眠はファンタジー?それとも現実?
「催眠」というと、オカルトや超能力など、フィクションの世界の話だと思っている方は多いのではないでしょうか。しかし、医学や心理学のカウンセリングで用いられている催眠は超能力的なものではなく、本人が望まない暗示にかかることはないようです。
無意識の不思議、催眠で病気を治療!?
人が催眠にかかるメカニズムについては、詳細なことは分かっていない部分も多いようですが、一方で、様々な疾患や悩みに効果があると言われています。例えば心身症や慢性的な痛みの軽減、あるいは教育現場などで効果が期待できることも実際にあるのです。
催眠にかかりやすい遺伝型とは?
イタリアのピサ大学をはじめとする研究グループは、OPRM1遺伝子に存在するrs1799971と呼ばれるSNPが、催眠のかかりやすさと関連していることを報告しました。
催眠のかかりやすさについてもっと知る
催眠はファンタジー?それとも現実?
「催眠」と聞くとどんなイメージでしょうか?怖い?それとも怪しい?普通催眠といえば映画や小説の中で、誰かが悪い催眠術師に操られて・・・というオカルトものや、TVのバラエティー番組で怪しい超能力者が登場して・・・というようなフィクションのイメージが強いですよね。催眠術なんて、本当にあるの?と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、医学や心理学のカウンセリングで用いられている「催眠」は超能力的なものではなく、どちらかといえば瞑想や自己暗示のイメージに近いかもしれません。催眠を受ける人も催眠中にある程度意識があるため、実際にはドラマのように犯罪を犯したり、急にスプーンを曲げられるようになったりと、全く望まない暗示にかかることはないようです(※1)。
無意識の不思議、催眠で病気を治療!?
古代の人類社会には、シャーマンや巫女など、呪術に関わる存在がいました。そこでは呪術の一種として催眠が用いられてきたという事実もあるようですが、その効果のほどを確かめることは難しいでしょう。
一方、近代において催眠を医学として最初に行ったのはオーストリアの医師メスメルという人物です。彼は、自分の体から発する「動物磁気」によって患者を治癒する、と主張しました。その治療は、患者たちが部屋の中に置かれた樽から突き出た棒を患部に当てて待ち、派手な服を着て登場したメスメルがパスと呼ばれる動作を行うと、その患者は恍惚状態になって治癒される、といったものでした(※1)。
怪しげな奇術のようにも聞こえる治療ですが、当時、多くの人が病気や痛みを治癒されたと感じ、彼のもとに多くの患者が集まったそうです。しかしその後、この治療は他の科学者によって磁気などによるものではなく催眠の一種であることが明らかにされていきました。
人が催眠にかかる際の脳のメカニズムについては、まだ研究中である部分も多いようです(※2)。しかし、これまでの臨床的な知見などから、催眠は様々な疾患や悩みに効果があると言われています。精神的な疾患だけでなく、事故や地震などのPTSD、慢性的な痛みの軽減、子育て、教育現場など、ストレスの多い現代人にとっては、その利用法は多岐にわたっているのです(※1,3,4)。
実はすごい効果を持つかもしれない「催眠」。ただ、実際には催眠を行う人と受ける側の人に強い信頼関係が必要で、さらに催眠を受ける人の条件も効果を左右するようです(※1)。つまり、受ける側にも催眠にかかりやすい人と、かかりにくい人がいるということなのです。
催眠にかかりやすい遺伝型とは?
イタリアのピサ大学の研究グループは、OPRM1遺伝子に存在するrs1799971と呼ばれるSNPが、催眠のかかりやすさと関連していることを明らかにしました。
研究によれば、rs1799971に「G」を持つ人の方が「A」を持つ人より催眠にかかりやすい傾向があります(※5)。
rs1799971にはGG、GA、AAの遺伝型がありますが、日本人平均と比べると
・GGの遺伝型を持つ人は「催眠にかかりやすいタイプ」
・GAの遺伝型を持つ人は「やや催眠にかかりやすいタイプ」
・AAの遺伝型を持つ人は「催眠にかかりにくいタイプ」
という遺伝的傾向を持っていると言えます。
研究の詳しい内容を見る
イタリアのピサ大学をはじめとする研究グループは、103人のヨーロッパ人の催眠のかかりやすさとOPRM1遺伝子上に存在するSNP rs1799971との関連について解析しました。
研究では、スタンフォード標準催眠感受性スケール(SHSS形式A)を用いて、研究同意をした大学生に実際に催眠を受けてもらい、催眠への感度が高いグループと低いグループに分け、遺伝型との関連を調べました。
解析の結果、rs1799971と、催眠のかかりやすさについて関連があることがわかりました(※5)。
対象SNPの遺伝型に基づき、以下のタイプに区分されます。
- 催眠にかかりやすい
- 22.0%GG
- やや催眠にかかりやすい
- 49.8%GA
- 催眠にかかりにくい
- 28.2%AA
参考文献
※1. 斎藤稔正, 催眠法の実際, 創元社
【対象SNP】rs1799971