あなたの結果もわかる!
打たれ強さ
- 原語
- psychological-distress
- 研究
- 英国 エディンバラ大学
この研究のふむふむポイント
「打たれ弱い」のは遺伝型のタイプのせい!?
ショックな出来事があってもすぐに立ち直る人もいれば、胃がキリキリ痛んだり、仕事が手につかなくなるなど心身に大きな影響が出てしまう人もいますよね。このように、「打たれ強さ」には大きな個人差があります。
「打たれ強い人」に憧れる・・・でも、どんな人?
ストレスを感じても比較的平気そうに見える「打たれ強い人」は、問題や心配事が起こっても長く引きずらず、問題をしっかりと見極めたうえで気持ちを切り替えることができる人物のようです。
「打たれ弱い」のは遺伝子のせい!?
エディンバラ大学の研究グループによって、持っていると打たれ弱くなってしまう遺伝型が見つかりました。
打たれ強さについてもっと知る
打たれ強い人と、打たれ弱い人の違いって・・・?
今日のプレゼン、大失敗だったなあ・・・ショックが大きすぎて、食事が喉を通らないよ。一方、同僚は上司に鬼のように怒られていたけどケロッとしているぞ。打たれ強いと言うべきか、神経が図太いと言うべきか・・・。
今回MYCODE fumfumでご紹介するのは、「打たれ強さ」。
ショックな出来事などが原因でストレスを感じてもすぐに立ち直って普段どおりに行動できる人もいれば、胃がキリキリ痛んだり、仕事が手につかなくなるなど心身に大きな影響が出てしまう人もいますよね。
「ストレス」という言葉を初めて使用したのは、カナダの生理学者のハンス・セリエという人物です。
ストレスを感じると人の身体はストレスに耐えるために緊急反応を起こします。これは「警告反応期」と呼ばれます。
セリエによると、この「警告反応期」はさらに「ショック相」と「反ショック相」という2つの期間に分けられます。
まず、ストレスを受けるとすぐには十分に対応することができず、ショックを受けている状態になります。これが「ショック相」です。「ショック相」では自律神経系のバランスが崩れ、心拍、血圧、体温、血糖値の低下、筋肉のゆるみなどが見られます。「胃がキリキリ痛む」のも、ストレスを受けたことで自律神経が緊張し、胃の粘膜を守っている粘液が減り、胃酸が粘膜を傷つけることで起こります。
その後、血圧、体温、血糖値の上昇、筋肉の緊張などが見られ、ストレスに抵抗する「反ショック相」に入ります。
ストレスを感じた後、「ショック相」の期間に心身にどのような影響が出るのかには、もちろん受けているストレスの違いによっても変わりますが、大きな個人差があるようです。

打たれ強い人でいたい!でも、どんな人が「打たれ強い人」なの?
英国エディンバラ大学の研究グループは、遺伝型とストレスに対して、日ごろどのように反応をしているのかを調べられる「General Health Questionnaire 30 (GHQ)」、「Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS)」という2つのアンケートのスコアとの関連を調べました。
これらのアンケートによると、以下のような人は、ストレスを感じても比較的心身に影響が出にくい人、つまり「打たれ強い人」だそうです。
・昔楽しんでいたものを、今でも楽しめる
・常に、何か楽しみにしていることがある
・心配事について、長く考えすぎない
・問題を直視することができる
・自分自身が大切な役割を担っていると感じている
どうやら「打たれ強い人」は、問題や心配事が起こっても長く引きずらず、問題をしっかりと見極めたうえで気持ちを切り替えることができる人物のようですね。
逆に、次のような特徴に多く当てはまる人は、ストレスを感じたとき、心身に影響が出やすい、つまり「打たれ弱い人」とされています。
・はっきりした理由がないのに不安になることがある
・自分の身なりに無頓着
・心配事があると寝れなくなることがある
・イライラしたり、機嫌が悪くなることが多い
・心配事について考えている時間が長い
・決断するのが苦手
・自分に自信が無い
うーん、やっぱり自分は「打たれ弱いかも・・・」という人、遺伝子が影響しているのかも?
先ほどのアンケートの設問で、あなたは自分が「打たれ強い人」と「打たれ弱い人」、どちらに近いと思いましたか?
エディンバラ大学の研究グループによる研究の結果、TNFRSF21遺伝子の近くに位置するrs10948347というSNPが「T」であると、「C」に比べて、ストレスを感じたとき心身に影響が出やすい、つまり比較的打たれ弱くなってしまう傾向があると分かりました。
rs10948347というSNPにはTT,TC,CCの遺伝型がありますが、日本人平均と比べると
・TTの遺伝型を持つ人は「打たれ弱いタイプ」
・TCの遺伝型を持つ人は「やや打たれ弱いタイプ」
・CCの遺伝型を持つ人は「打たれ強いタイプ」
という遺伝的傾向を持っていると言えます。
研究の詳しい内容を見る
英国エディンバラ大学の研究グループは、55~79歳の3,310人の欧米人を対象に、遺伝型とアンケートのスコアとの関連解析を行いました。その中の一つが、心理学的な用語で言うと「精神的な苦痛の感じ方(psychological distress)」、ショックを受けたときにどのように感じるかでした。この記事では「打たれ強さ」としてご紹介しました。
「General Health Questionnaire 30 (GHQ)」のスコアと、「Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS)」のスコアにより、ショックなことがあったとき、心身に影響が出やすいのか、出にくいのかが測定されました。いずれのアンケートも、スコアが高い人ほど、ストレスを感じたときに比較的心身に影響が出やすいというものです。
研究の結果、これらのテストのスコアとrs10948347というSNPの遺伝型に相関があると分かりました。このSNPの最も近くにある遺伝子は「TNFRSF21遺伝子」と呼ばれています。「TNFRSF21遺伝子」の遺伝子産物となるタンパク質は末梢Tリンパ細胞の細胞膜上に発現し、免疫機能の調整などに関わっていると考えられています。また、この遺伝子は「心配性傾向(anxiety)」にも関係していると考えられています。
対象SNPの遺伝型に基づき、以下のタイプに区分されます。
- 打たれ弱い
- 22.0%TT
- やや打たれ弱い
- 49.8%TC
- 打たれ強い
- 28.2%CC
参考文献
Genome-wide association uncovers shared genetic effects among personality traits and mood states.
HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)
A scaled version of the General Health Questionnaire.
『現代社会とストレス』 ハンス セリエ 叢書・ウニベルシタス
『新版胃・十二指腸の病気(よくわかる最新医学)』 平塚秀雄
【対象SNP】rs10948347