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パンやケーキが食べられないセリアック病、赤ちゃんの食事に気を使うべきなの?

公開日:2015年5月6日
更新日:2021年4月12日

 セリアック病は、小麦などに含まれるグルテンに対して、小腸が炎症を起こすため、パンやケーキが食べられなくなる病気です。発症の原因を探るため、グルテンを食べ始めた時期と発症のリスクとの関連が調べられました。


小麦やライ麦などの成分が食べられなくなる「セリアック病」をご存じですか(写真:Shutterstock.com)

セリアック病とは

 パン、パスタ、ピザ、クッキー、シリアル、から揚げ、ケーキ。小麦やライ麦などを含む食品に共通して入っている成分である「グルテン」。このグルテンに対して、小腸が炎症を起こしてしまう病気がセリアック病です。グルテンの入った食事をやめる治療を行わないと栄養が取れなくなってしまうため、上のような食品はすべて食べることができなくなります。

 セリアック病は遺伝的な要因や、ストレスなどが関連しているといわれていますが、リスク遺伝子をもっていれば必ず発症するわけではなく、はっきりしたことはわかっていません。

 発症する人の多くはヨーロッパやアメリカなどが中心で、ほとんど日本にはいないと考えられてきましたが、食生活の欧米化が進んでいる中、今後日本でも増えていくのではないかと心配されています。

生まれてすぐ食べると大丈夫?

 これまで、遺伝的にセリアック病のリスクがある赤ちゃんに対しては、母乳を長い間与え続けてはいけないという意見や、グルテンを食べる始めるのが遅れたりしてはいけないという意見がありました。

 しかし一方、セリアック病は遺伝でありグルテンを食べるタイミングは関係がないとする意見もあり、様々な議論が続いてきました。

 スウェーデンの研究グループは、フィンランド、ドイツ、スウェーデン、アメリカの遺伝的にセリアック病のリスクがある赤ちゃんを約6800人を対象に、グルテンを食べ始めた時期と、その後のセリアック病のかかりやすさについて調べました。

 3ヵ月ごとの受診のときに、赤ちゃんの食事の記録を調査するとともに、セリアック病の定期的な検査を行いました。

グルテンを食べた年齢とセリアック病のリスクは関係ない

 5年間の追跡調査でセリアック病に実際にかかったかどうかとの関連を調べました。

 平均して一番早くからグルテンを食べているスウェーデンの子供は、平均で一番遅く食べているアメリカの子供よりもリスクが1.7倍高かったそうです。

 しかし、すべての国をまとめて、グルテンを食べ始めた時期を17週まで、17週から26週、26週以降の3グループに分けて解析したところ、グルテンを食べた時期によってセリアック病になりやすいかどうかには関連が見られないという結果になりました(※)。

 研究グループは、スウェーデンでは、小さい頃からグルテンの含まれているシリアルや、乳製品、パンなどをたべる習慣があり、ほかの国よりも食べている量が多いのかもしれないと考えています。
 
 今回の結果からは、セリアック病にかかるかどうかとグルテンを食べ始めるタイミングには関係がみられなかったようです。遺伝的にリスクがある場合は気をつけたほうが良いものの、最初にグルテンを食べる時期についてはあまり神経質になり過ぎなくてもよいのかもしれません。


監修者

医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。

参考文献

Aronsson CA, Age at gluten introduction and risk of celiac disease., Pediatrics.

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