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妊娠中は食品の容器にも注意!?ビスフェノールAと子供の喘息リスクの関係

公開日:2015年5月15日
更新日:2021年1月22日

食品用のプラスチック容器から溶けだしたビスフェノールAは子供の健康にどのような影響を及ぼすのでしょうか(写真:Shutterstock.com)

 「食品用のプラスチック容器は危険」という話を聞いたことはありませんか?人に有害な物質がプラスチック容器から溶け出し、健康に悪影響を及ぼすのではないかないかということのようです。

 米国の研究グループは、一部の食品用の容器等に使われているビスフェノールAと子供の喘息との関連を調べました。

容器から溶け出す「ビスフェノールA」とは

 ビスフェノールAは、人の体内でホルモン作用をおこしたり、逆にホルモン作用を阻害する、いわゆる「内分泌攪乱化学物質」のような働きをすることが疑われている物質です。ビスフェノールAの主要な曝露源としては、プラスチックや缶などの容器が指摘されています。ビスフェノールAを含む容器を洗剤で洗浄したり、酸や高温の液体につけることによりビスフェノールAが溶け出すことが知られています。

ビスフェノールAが、肺の機能に関係する!?

 喘息の主な症状は、咳や喘鳴(ぜんめい、息をはいている時にゼーゼー・ヒューヒューすること)です。研究グループは、米国オハイオ州に住んでいる398組の母子を対象として、妊娠中(16週、26週)の母体の尿サンプルと子供の尿サンプルを毎年収集しました。そして、尿中のビスフェノールAの量と子供の肺の機能や喘鳴の有無を調べました。肺の機能は、息を最大に吸った状態から一気に吐ききってもらったとき、最初の1秒間で吐き出せた量(FEV1:1秒量)を指標としました。

妊娠期の中で、特に注意を要する時期があった

 その結果、妊娠中の母親の尿中ビスフェノールAの濃度の平均が10倍高まると、生まれた子供が4歳のときの肺の機能が14.2%低下することがわかりました(※)。一方、5歳時点では、ビスフェノールAと肺機能との関連は認められませんでした。

 また、喘鳴については、妊娠中の母親の尿中のビスフェノールA濃度の平均値との関連は認められませんでしたが、妊娠16週目の時点のビスフェノールA量との比較では、値が10倍高くなると、子供の喘鳴リスクが約4倍高まることがわかりました。

 日本では、食品衛生法の規格基準で容器からのビスフェノールAの溶出を2.5μg/ml(2.5ppm)以下と制限されており、ビスフェノールAの溶出を低減させるための製品改良が進んでいます。とはいえ、妊娠中にはビスフェノールAを体内に取り込みすぎないように気をつけたいですね。


監修者

医師 石原藤樹先生
プロフィール:1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。

参考文献

Spanier AJ, Bisphenol a exposure and the development of wheeze and lung function in children through age 5 years., JAMA Pediatr.