• 貧血
  • 病気・医療
  • 症状・原因
病気・医療

【認定遺伝カウンセラーコラム】私たちの全身を巡る血液の病気とは?鉄欠乏性貧血から白血病まで

2018年10月17日 09時00分

Hematological disease article main
貧血の原因についてご存知でしょうか?(写真:Shutterstock.com)

全身を流れる血液、どこでつくられるの?

 私たちのからだの中を流れる血液の量は体重の約8%といわれています。体重60kgの成人では約4.8Lの血液が絶え間なく流れていることになります(※1)。
 採血管に採った血液をしばらく放置しておくと液体成分の血漿と細胞成分の血球の二層に分離します。血漿には水分、タンパク質、ビタミン、無機質、ホルモンなどが含まれ、血球には赤血球、白血球、血小板が含まれます。血球は造血幹細胞とよばれる3系統に共通の細胞が分化、成熟したもので、骨髄やリンパ節といった造血組織でつくられています。

血液の働き

 血液の働きには ① 運搬、② 生体防御、③ 体内環境の維持があります。

① 運搬
 酸素や二酸化炭素、栄養素、免疫物質、ホルモンなどの生命活動に必要な物質の他、不必要になった老廃物も対象となります。
② 生体防御
 細菌やウイルス感染から身を守ったり、出血した血液を止める止血という働きがあります。
③ 体内環境の維持
 浸透圧の調整、pHの調整、体温の調整などがあります。

 赤血球の中にあるヘモグロビンは肺で酸素と結合して組織に運んだ後、今度は組織で要らなくなった二酸化炭素と結合して肺へ運搬する働きがあります。白血球には好中球やリンパ球など、5種類が知られています。これらは主に外界から体内に侵入した細菌やウイルスなどを攻撃します。血小板は出血した際に破れた血管に粘着して集まり、傷口を塞いで出血を止める役割があります。このように血液はからだの中で幾つもの重要な働きをしており、からだのどこかに異常が生じると検査結果にも変化が現れてきます。このコラムでは血液を検査してわかる病気について解説していきます。

血液の病気にはどんな種類があるの?

 私たちの血液には赤血球・白血球・血小板という3種類の血球があることを見てきましたが、それぞれの血球に何らかの障害が起こった場合、健康診断の検査値にも異常が表れてきます。赤血球数やヘモグロビン濃度が低下した場合は貧血、白血球数が多くなった場合は感染症や炎症、白血病なども考えられます。このように健康診断などでおこなわれる検査項目の中に基準値から外れた項目があったら、何らかの疾患が隠れている場合があります。

鉄欠乏性貧血の症状には・・・

 赤血球中のヘモグロビンが減少した場合を貧血といいますが、WHOの基準ではヘモグロビン濃度が男性では13g/dL、女性では12g/dL、高齢者では11g/dL以下と定義しています。鉄欠乏性貧血はこのヘモグロビンを作るための鉄が不足した状態です。欠乏の原因は食物からの摂取不足、出血などによる喪失、妊娠や授乳などで必要な量が増加することなどがあります。
 体内の鉄分布を示した表をご覧ください。最も多いのはヘモグロビン鉄、次いでフェリチンとして肝臓などに蓄えられている貯蔵鉄となります。ヘモグロビンを作るための鉄が不足すると、まず貯蔵鉄が消費され、続いて血清鉄、組織鉄の順に消費されていきます。

表1. 体内の鉄分布

Hematological disease article 0

 体内で鉄は単独で存在できず、トランスフェリンというタンパク質と結合しています。不飽和鉄結合能(UIBC)は鉄と結合できるトランスフェリンを示しています。このUIBCと血清鉄の和を総鉄結合能(TIBC)といいます。鉄欠乏性貧血ではTIBC、UIBCがともに増大して、効率よく鉄を体内に取り入れようとします。
 鉄欠乏の状態が進むと身体に特徴的な変化が現れます。爪の形がスプーン状に反り返ったり、舌炎や嚥下障害を引き起こすことがあり、これらをPlumer-Binsonn症候群と呼びます。鉄欠乏性貧血の治療には鉄剤が投与されます。治療開始後、数週間でヘモグロビンは正常化しますが、貯蔵鉄が回復するまで3~4ヶ月間の服用が必要とされています。MYCODEでは体質の結果に「ヘモグロビンの量」、「赤血球容積」があり、貧血に関わる検査値の遺伝的な傾向を知ることができます(※2)。

白血病とは

 白血球系の細胞に異常が生じ、腫瘍性に増殖をきたした疾患が白血病です。疾患の経過や、どのタイプの白血球に異常が生じたかによって、慢性または急性、骨髄性またはリンパ性などに分類されます。
 慢性骨髄性白血病の原因として、9番染色体上にあるABL1遺伝子と22番染色体上にあるBCR遺伝子が染色体転座によりBCR-ABL1融合遺伝子を形成し、細胞を腫瘍性増殖に導くことが明らかになりました。発病初期は疾患の進行が緩やかなため気付かないことも多く、健康診断などで白血球増加が指摘され、偶然発見されることもあります。診断はこの疾患の原因となる9;22染色体転座を検出することや、BCR-ABL1融合遺伝子を分子レベルで証明することです。
 白血病は治療が難しいとの認識が強い疾患ですが、2001年にはこれまでの研究成果から画期的な薬剤が登場しました。白血病の薬剤であるイマチニブはBCR-ABL1融合遺伝子からつくられる異常タンパク質にだけ作用するため、これまでの抗がん剤治療とは異なり、副作用を最小限に止め、より効果的な治療がおこなえるようになりました。現在は白血病に限らず、がん細胞に生じている遺伝子異常を見つけ出し、その遺伝子異常にだけ効果を発揮する薬剤を用いた治療がおこなわれています。これは分子標的治療とよばれるもので、将来は多くのがん治療において有効性が期待されています。

血小板が少ないと出血が止まりにくい?

 3つの血球の中で血小板は最も小さく、直径は赤血球の1/3ほどの2~3μmとされています。健常人では1μL(1リットルの100万分の1)あたり15万~35万もの血小板が存在しています。けがや切り傷などで出血すると傷口に血小板が沢山集り、血小板血栓をつくります。血小板血栓は脆く、壊れやすいため、フィブリノゲンがフィブリンというタンパク質に変化して、強固な止血栓を形成します。しかし、血液中に血小板やフィブリノゲンなどの凝固因子が少なくなると、出血しやすい状態がみられます。
 特発性血小板減少性紫斑病は若い女性に多く認められ、血小板に対する自己抗体が産生されて自らの血小板を破壊してしまう疾患です。血小板数は基準値を下回ってもすぐに問題となることはなく、5万/μLあれば十分とされていますが、必要な場合は副腎皮質ステロイドや免疫グロブリン製剤による治療が行われます。 

 MYCODEでは実際の検査値は反映されませんが、「血小板の数」、「血の止まりやすさ(血小板の凝集反応)」の遺伝的な体質の傾向を調べることができます(※3-4)。

 今回のMYCODEトピックスはいかがでしたか?全身を絶え間なく流れる血液について、その働きと正常な機能が失われたときに起こる病気について詳しく見てきました。血液にはこんな働きがあるということ、病気の原因がここまで分かっていて、こんなお薬が治療に使われているんだ・・・など、初めて知った方も多いのではないでしょうか。健康診断の検査結果と組み合わせ、疾患のかかりやすさや体質の遺伝的な傾向を知ることで、現在から将来に向けたご自身の健康管理に是非、MYCODEをお役立てください。

執筆者
認定遺伝カウンセラー 藤田和博
プロフィール:昭和大学藤が丘病院での先天異常、血液腫瘍の遺伝子・染色体検査の経験を生かし、現在は大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科教授として臨床検査学教育と研究に従事。
参考文献
※1. 奈良信雄, 最新臨床検査学講座 血液検査学「 第1章 血液の基礎」, 医歯薬出版株式会社
※2. 奈良信雄, 最新臨床検査学講座 血液検査学「第2章 血球」, 医歯薬出版株式会社
※3. Kamatani Y, Genome-wide association study of hematological and biochemical traits in a Japanese population., Nat Genet.
※4. Johnson AD, Genome-wide meta-analyses identifies seven loci associated with platelet aggregation in response to agonists., Nat Genet.
この記事を友達に教える