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病気・医療

【認定遺伝カウンセラーコラム】血圧が上昇するメカニズムと遺伝子との関連

公開日:2023年5月18日

血圧が上昇するメカニズムと遺伝子との関連とは?(写真:Shutterstock.com)

 血圧は健康管理をする上でとても重要な指標になります。今回のコラムでは血圧がどのように調節されているのかをご紹介し、高血圧ではなぜ、塩分摂取を控えるようにしなければならないのかを解説していきます。

1)正しく血圧を測定するには

 家庭用血圧計の普及により、誰でも簡単に血圧を測定することができるようになりました。ここで、血圧測定の際に注意しなければならない点についてご説明します。

 血圧は一日の中で生理的な変化をします。例えば、運動直後や気温の変化によっても影響が出てきます。また、病院では白衣を着た医療従事者の前で緊張状態になり、普段よりも高めに出てしまう「白衣高血圧症」を引き起こす場合もあります。
 正しい血圧を測定するためにはリラックスした状態で、数分間の安静時間を取ることも必要になってきます。深呼吸を何度かしてみることも良い方法です。

2)「血圧」を理解する

 心臓は血液を送り出すポンプの役割を持ち、収縮と拡張を繰り返して血液を全身に供給しています。この時、血液が血管に与える圧力が「血圧」です。血圧は、心臓の収縮によって血液が全身に送り出される時の圧力を収縮期血圧(最高血圧)といい、収縮した心臓が拡張して元の容積に戻る時の圧力を拡張期血圧(最低血圧)といいます。
 血圧に影響を与える物理的な要因を表1に示します。

表1 血圧に影響を与える物理的な要因
―――――――――――――――――――――――
心拍出量(心臓が1回の収縮で送り出す血液の量)
血管の太さ
血管壁の硬さ
―――――――――――――――――――――――

送り出す血液量が多く、血管が細く、血管壁が硬いほど血圧値は高くなります。

3)高血圧の基準値とその影響

 収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上の場合、または拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上の場合と、これらの両方を満たす場合を高血圧とよびます(※1)。

 血圧は高すぎると血管が障害を受けて破れてしまうことがあり、また逆に下がりすぎても、全身に血液が送れず、臓器や組織が十分に機能しない結果につながります。いつでも丁度良い範囲に調整していく必要があるのです。

4)血圧を左右する物質とは?

 血圧に影響を与える物理的要因の他、化学的要因にはどのようなものがあるのでしょうか。
 血圧の上昇に関わる物質には、レニン・アンジオテンシン、アドレナリン、ナトリウムなどがあります。その中でも高血圧の人に塩分摂取を控えるように促すのは、ナトリウムによる血圧の上昇を抑えるためです。

 もう少し詳しく見ていきましょう。ナトリウムは、塩化ナトリウム(食塩)という形で摂取し、体内では細胞外に多く存在します。一方、野菜や果物に多く含まれているカリウムは、細胞内に多く存在します。このナトリウムとカリウムのバランスを保つことが、生命活動に欠かせないものとなっています。
 ところが、塩分の過剰摂取により体内のナトリウム量が増加すると、体液量を増やして濃度を一定に保とうとする結果、血圧が上昇するのです。

5)高血圧と遺伝子との関連

 高血圧における新たな研究では、血圧の調節がこれまで解説してきた物理的要因、化学的要因の他にも存在することが分かってきました。

 16番染色体上に存在するウロモジュリン遺伝子のタイプ(一塩基多型:SNP)が高血圧の発症リスクに関係しているというものです。このウロモジュリンの体内での働きは、完全に解明されたわけではありませんが、ナトリウム濃度を一定に保つ仕組みに関係していると考えられています(※2)。

 MYCODEではこのウロモジュリン遺伝子のタイプから、高血圧の発症リスクを表示しています。もう一度、ご自身の検査結果をご覧になり、健康管理に役立ててみてはいかがでしょうか。

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執筆者

認定遺伝カウンセラー 藤田和博
プロフィール:昭和大学藤が丘病院での先天異常、血液腫瘍の遺伝子・染色体検査の経験を生かし、現在は大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科教授として臨床検査学教育と研究に従事。

参考文献