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【管理栄養士コラム】「肺がん」の予防効果がある野菜とは?(検査結果を復習)

公開日:2017年11月9日
更新日:2019年11月29日

肺がんの予防効果がある「アブラナ科野菜」とは?(写真:Shutterstock.com)

 「アブラナ科野菜」って聞いたことはありますか? 今回は、アブラナ科野菜の摂取状況と喫煙、肺がん発症リスクについてご紹介したいと思います。

 代表的なアブラナ科野菜は、キャベツ、はくさい、だいこん、かぶ、カリフラワー、ブロッコリー、こまつな等で、日本で生産されている野菜の約3割を占めています。皆さんも日々口にすることが多いのではないでしょうか。

アブラナ科野菜による肺がんの予防効果

 国立がん研究センターのグループが、アブラナ科野菜の摂取状況と肺がんリスクについて報告しました。日本人の集団を14.9年間追跡した結果、1.8%の人が肺がんと診断されました。この研究では、肺がんの発症に大きな影響を与える喫煙歴と138項目の食品摂取状況を主に分析しています。

 図1に、食品項目の内アブラナ科野菜8項目(キャベツ、だいこん、こまつな、ブロッコリー、はくさい、チンゲンサイ、からしな、ふだんそう)の摂取状況と肺がん発症リスクとの関係を示しました(※1)。

図1. アブラナ科野菜の摂取状況と喫煙

 この研究で明らかになった4つのポイント

①非喫煙では、アブラナ科野菜をあまり食べていない人に比べると、多く食べている人は発症リスクが51%低かった(男性)

②過去に喫煙していた人でも摂取量が多い人はリスクが41%低かった(男性)

③現在喫煙している人は、アブラナ科野菜を多く食べていても、予防効果は見られなかった。喫煙がアブラナ科野菜のがん抑制作用を上回っている可能性が大きい(男性)

④女性の非喫煙者は、摂取量と発症との関連は見られなかった。研究グループは受動喫煙の影響があったのかもしれないと考えている

アブラナ科野菜に含まれるイソチオシアネートが発がん物質の解毒を促進

 アブラナ科野菜には、グルコシノレートという成分が含まれており、調理や消化の過程でイソチオシアネートという物質に分解されます。この物質が発がん物質の解毒を促進することが分かってきました。まだそのメカニズムが解明されたわけではないですが、肺がんだけではなく、胃がんや肝がん、大腸がん、乳がんのリスク低下との関係が報告されています(※2)。

 図1からもわかるように、アブラナ科野菜に解毒を促進する効果があるとしても禁煙第一であることは間違いないです。

アブラナ科野菜はどのように調理すると良い?

 ある程度の大きさ(一口大)に切った野菜を冷蔵庫保存した場合、3時間まではほぼ損失無く維持されますが、千切りのように細かく刻むと大幅に減少してしまいます(※3)。

 ご自宅でサラダを召し上がる際には、千切りやみじん切りは直前に調理し、作り置きする場合は、スティックサラダなど「カットサイズ大きめ」を意識しましょう。また、コンビニ等でサラダを購入する際にも大振りに切った野菜を選択するのも工夫のひとつです。

 グルコシノレートは、温度50~60℃で損失が最大になります(※4)。ブロッコリーなどを茹でる場合は、沸騰した湯に入れた後、温度が下がらないように強火で一気に茹でるようにしましょう。また、茹で過ぎないことも重要です。ブロッコリーの場合は、沸騰の湯に入れた後3分程度を目安にすると良いでしょう。

 グルコシノレートを損失無く摂取できる調理法は、蒸す・電子レンジ調理です。温野菜にする場合は、さっと蒸して、ソースやドレッシングで野菜の素材を楽しむのはいかがでしょうか(※4)。

蒸し野菜:鍋に1cm程度の水を入れ沸騰。お皿に野菜を並べ、蓋をして3〜5分で出来上がり!

どれだけ食べると良いの?

 現在、アブラナ科野菜を「たくさん食べれば食べるほどがんの予防効果がある」という研究データは見当たりません。しかし、野菜全般の摂取量が不足するとがんのリスクが高まることは、はっきりとしています(※5)。まずは野菜摂取目安量350g/日を目指しつつ、その内の1/3(約100g)以上を目標にアブラナ科の野菜を選択することをお勧めします(※1)。

あなたの肺がんのかかりやすさは?

 肺がんの発症には遺伝要因と環境要因の両方が関与しています。MYCODEでは、3種類の肺がんの遺伝的な発症リスクを提供しております。ご自分の遺伝子検査結果を、この機会にぜひ復習してみましょう。


参考文献
※1. Mori N, Cruciferous Vegetable Intake Is Inversely Associated with Lung Cancer Risk among Current Nonsmoking Men in the Japan Public Health Center (JPHC) Study., J Nutr.
※2. 中村宜督, イソチオシアネートによるがん予防の可能性─細胞増殖の選択的制御とその分子機構─, 環境変異原研究
※3. 長田早苗, アブラナ科野菜の大量調理施設衛生管理マニュアルに沿った温度・湿度管理下における切裁および保管時のグルコシノレート量の経時変化, 日本調理科学会誌
※4. 長田早苗, アブラナ科野菜の加熱によるグルコシノレート含有量の変化, 日本調理科学会誌
※5. 国立がん研究センターがん情報サービス, 「がんの発生要因」